レバレッジ指数ETF、ダブルインバース指数ETFとは何か

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株価指数のインデックス運用の中には、対象指標との連動性の比率(レバレッジ。以下L)が1でないものがあるのをご存じでしょうか。例えば、日経平均インバース指数(L=-1)、日経平均ダブルインバース指数(L=-2),日経平均レバレッジ指数(L=2)等がそれにあたります。今回はそうした指数に関するETF(上場投信)について、解説します。

かつて、インデックスファンドは、市場連動型(L=1)のみでした。しかし、Lが1でないタイプの指数が整備され、それらをトラックするファンドが新たにETFとして上場されるようになり、これにより一般投資家も、市場リスクのレバレッジ(L)倍となるポジションを持てるようになりました。

もちろん、日経平均先物を使って、機動的な市場リスクのポジションをとることも可能ですが、先物取引には限月があるのでロール(期先物への乗換)をしなければならず、また日々の値洗いに伴う証拠金の差し入れがあるなど、その運用は必ずしも容易ではありません。

しかし、ETFという形態をとれば、単にETFを購入するだけで、レバレッジの効いた指数のロングやショートを実現できます。

下図にあるように、ダブルインバースとレバレッジは、向きが逆で振幅が日経平均の約2倍のリターンになります。インバースやダブルインバースのETFを保有すれば、実質、先物をショートするポジションなので、日経平均が上昇(下降)したとき、ETFの基準価額は下降(上昇)します。

レバレッジ比率が1である指数Iの日次リターンは、通常、R_I(t)=I(t)/I(t-1)-1で計算し(t:当日、t-1:前日)、レバレッジ比率Lとした指数Jのリターンは、R_J(t)=L×R_I(t)で定義します。式変形すると、J(t) = J(t-1)×(1+L×R_I(t)) になります。

下図は日次リターンを表しています。イメージ的には100万円を日経平均レバレッジ指数ETFに投資するのと200万円を日経平均に投資することは、等価なリターンになると思われるかもしれません。ところが、投資初日については確かにそうですが、指数は日々リバランスした累積リターンとなるために、翌日以降のパフォーマンスは同じにはなりません。さらに、市場にトレンドが出ると、当初想定していたリターンより、過剰なパフォーマンス(上にも下にも)となることがあります。

当日と翌日の日経平均リターンの振幅がx/2であるケースを考えます。レバレッジ指数の累積リターンを場合分けすると、a) 連騰:(1+x)2=1+2x+x2 スパイク:(1+x) (1-x) = 1-x2、 c) 続落:(1-x)2=1-2x+x2となります。
a)とc)の2xの項は先物の線形性から複製できますが、リバランス調整しないと、x2の項が乖離となります。a)とc) はプラス、b)はマイナスの乖離になります。

このように、レバレッジ型・インバース型ETFの運用では、ポートフォリオマネジャーが日経平均先物を適宜リバランスして、各指数をトラックするようにするわけですが、累積効果による凸性のために完全連動(100%連動)はできません。特に市場のショックやボラティリティが高まると、乖離が高まる傾向があります。

更には、先物取引のタイミングも、パフォーマンスに影響します。先物取引やオプションの取引時間は、現物株の取引時間より若干長く、日経平均株価は午後3時に終値となりリターンが確定しますが、日経平均先物は午後3時15分に終値が確定します。レバレッジ型ETFでは先物に投資しますので、この15分間の時間差もパフォーマンスに影響を与えます。

実際、下図を見ると、指数と対応するETFのパフォーマンスに乖離が生じています。これもまた、レバレッジの効いたインデックス運用の難しさの一端を表しています。

このように、レバレッジ型のETF運用には固有の問題点があります。しかし、新たな運用手法を利用できるようになった一般投資家にとっては、レバレッジ型のETFには、それを上回る利点があるとも言えるでしょう。

脱構築(ペンネーム)

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2019年2月作成

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