ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

乱高下するナスダックを検証する。

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ナスダックのバリュエーションに割高感は少ない

2月半ばからナスダック市場は乱高下が続いているが、バリュエーション的には割高感は少ない

今年に入り、米追加経済対策の成立期待やワクチン接種が進むことで、米国景気の回復期待が高まっています。商品市況等の上昇も始まっており、製造業の原材料インフレ警戒も高まっています。そうしたセンチメントを受けて、米国長期金利がじりじりと上昇しており、10年債利回りは、一時、1.6%程度に上昇しました。ナスダック総合指数の主要構成銘柄である成長株は、これまでの低金利に乗って大きく上昇してきましたが、金利上昇への警戒から、足元では利益確定売りなども多く出始めて乱高下しています。

一方、バリュエーションに目を転じると、ナスダック総合指数のPER(株価収益率)は、インターネットバブルの崩壊から立ち直った2004年以降の平均で30倍強で推移してきました。足元での2021年予想EPSは405ポイント程度で、直近株価水準の13,000ポイント程度に対するPERは約32倍であり、過去平均と比べても大きな割高感は見られません。また、2022年予想も大幅増益が予想されており、予想通りに業績が改善すればバリュエーションでも割安感が出てくることが想定されます。

インフレ動向も消費者物価指数等の川下データにはインフレの兆候は未だ見られず、現時点で大きなインフレ進行を警戒するのは時期尚早かもしれません。冷静に見ていきたいところです。


[図表1] ナスダック総合指数とEPSの推移

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期間:2000年1月~2021年2月、月次(EPSは2022年12月まで、年次)
注1:EPSの2021年、2022年分はBloomberg予想

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

コロナ感染対策や米景気動向で物色は変遷

過去1年程度の中では、コロナ感染対策に関するニュースで物色対象が2度切り替わっている

ナスダック全般としての大きな割高感が無い中ですが、物色の中身は過去1年間でも切り替わってきました。グラフに示したように、➀昨年9月2日を境にGAFAM指数(GAFA+Microsoft)が頭打ちとなり、全体指数に遅れるようになりました。そして、②本年2月16日を境に昨年後半から勢いづいていた半導体株がピークアウト、全体指数も同様に調整局面を迎えています。

一方、金融株や運輸株は回復が継続しており、昨夏にはハイテク系指数に大きく水をあけられていましたが、ここへきて一気に差を詰めてきました。➀9月2日の転換点を生んだのは新型コロナウイルスの新たな治療法が承認されたり、ワクチン開発が進んでいるニュースでした。そして、②2月16日の転換点はコロナワクチン接種の加速や米追加経済対策成立期待です。

ワクチン接種や景気対策で経済が正常に戻る「Re-Open」期待が高まることで、これまで大きく上昇してきた巣籠り消費の恩恵を受けてきた銘柄群から、経済正常化の恩恵を受ける銘柄へ、物色の流れは確実に移行しているようです。ハイテク株の調整が進んだとしても、こうした「Re-Open」関連株が買われることで、相場全体の調整もそれほど深いものにならないと考えています。


[図表2] ナスダックや各業種指数などの推移

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期間:2020年1月1日~2021年3月10日、日次
半導体株:フィラデルフィア半導体株指数、GAFAM:Solactive GAFAM指数、運輸株:ナスダック運輸株指数、銀行株:ナスダック銀行株指数

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

米国でのコロナ感染は第3波が終息傾向

米国でも日本と同じような新規感染者数の波形となっており、第3波が終息に向かっている

新型コロナウイルスの感染動向では、変異株拡大への警戒も高まっていますが、全体の新規感染者数は日本でも米国でも終息方向にあるようです。米国では年初には1日当たり25万人もの新規感染者が出ていましたが、足元では6万人程度まで減少しており、ニューヨーク市などでもレストランの一部営業再開など、経済活動制限が段階的に緩和されてきているようです。

昨年暮れから米国で始まったワクチン接種も順調に進行しており、3月上旬時点で1回目の接種が終わった人が全人口の2割弱に達しています。これまでは1か月に10%程度ずつ接種が進んでいるようですが、バイデン大統領は今夏にも全員への接種を済ませるべくワクチン接種を加速させると意気込んでいます。なお、ワクチン接種が世界で最も進んでいるイスラエルでは6割程度の人が接種を受けているほか、イギリスでも3割を大きく超えており、こうした国々での今後の感染動向が注目されています。

ワクチン接種が進み、日本で警戒されているような「感染第4波」が起こらなければ、経済再開「Re-Open」への期待がますます高まるでしょう。CDC(米疾病対策センター)は、2回のワクチン接種を終えた者同士であれば、マスク無しでの会話が可能と発表しています。ワクチン効果が確認されれば、物色としては、金融や資本財、素材などの景気敏感株への注目が高まるでしょう。そうした中でのナスダックはどうかと言えば、大きく調整しないものの、NYダウなどには劣後する可能性が高いのではないかと考えています。


[図表3] 米国での新型コロナウイルス新規感染者数と死者数の推移(7日間移動平均)

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期間:2020年1月1日~2021年3月10日、日次

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
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