マーケットのトレンドに投資する ~ETF×信用取引の活用法~(第5回)
話題の指数に投資しよう~原油価格②【ETF×信用取引⑤】
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原油先物ETFのおさらい
本連載の第2回『話題の指数に投資しよう~原油価格』にて、原油価格に連動するETFと信用取引を活用した投資手法についてご紹介しました。
米中貿易摩擦の影響等により、原油価格は昨年末までに40%近く下落しましたが、下落時の原油先物ETF(1699)の株価と制度信用残高の推移を見ると、
① ETFの株価:下落
② 制度信用買残:増加(新規買い)
③ 制度信用売残:減少(利益確定)
となっており、昨年末時点では「原油価格の反発を予想した逆張り(信用買い)」が多い状況でした。
原油先物ETF(1699)の株価・制度信用残高推移(2018年1月~12月・週足)
(出所:筆者作成)
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
前回は2018年末までの推移に触れましたが、今年に入り原油相場に大きな動きがありましたので、改めて原油先物ETF(1699)の推移を見てみましょう。
2019年の原油先物ETFの動向
原油相場は年初から急回復し、年末安値288円⇒直近高値437円と50%超上昇しました。昨年末に「原油価格の反発を予想した逆張り(信用買い)」をしていた投資家は大きな利益を得たことになります。
原油先物ETF(1699)の株価推移(2018年7月~2019年4月12日、日足)
(出所:野村アセットマネジメントホームページ)
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
それでは、直近の信用残高はどのように推移しているでしょうか。
下のグラフは、直近の原油先物ETF(1699)の株価・制度信用残高の推移をまとめたものです。
原油先物ETF(1699)の株価・制度信用残高推移(2018年7月~2019年4月12日、週足)
(出所:筆者作成)
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
年初からの原油先物ETF(1699)の株価・信用残高の推移をみると、
① ETFの株価:上昇
② 制度信用買残:減少(利益確定)
③ 制度信用売残:増加(新規売り)
となっており、
「原油価格の上昇に伴う利益確定(信用買いの売り返済)」
「原油価格の下落を予想した逆張り(新規の信用売り)」
をしている投資家が多いことが分かります。
第2回において、原油相場の上昇・下落それぞれの信用取引活用法をまとめましたが、信用残高の推移を見ると、昨年末の急落・年初からの上昇のいずれの場合も「逆張りの投資」が人気であることが分かります。
制度信用売りの「逆日歩(ぎゃくひぶ)」に要注意
ここまで、
- 年初からの原油相場の上昇
- 「原油価格の下落を予想した逆張り(信用売り)」の増加
について確認いたしました。
ここで注目したい点が、「制度信用売りの増加に伴い、原油先物ETF(1699)に逆日歩(ぎゃくひぶ)が発生している」点です。
上のグラフでは、直近の制度信用残高(緑色の円囲み)が、原油先物ETFの株価上昇を受けて、制度信用買いが減少、制度信用売りが増加した結果、残高が売り長(制度信用買い<制度信用売り)となっていることが分かります。
直近の原油先物ETF(1699)の推移を数字で見てみましょう。
原油先物ETF(1699)の推移
(筆者作成)
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
制度信用残高と同様に、貸借取引も融資残高が減少、貸株残高が増加し、直近の差引残高(緑色)が貸株超過(融資残高<貸株残高)になっています。
貸株超過の場合、不足している株式を機関投資家等から調達するため、逆日歩(ぎゃくひぶ)(株式を借りている投資家が追加で支払う費用)が発生することがあります。
原油先物ETF(1699)においても、貸株超過に伴い逆日歩(赤枠内)が発生しており、制度信用売りをしている投資家は発生した逆日歩を支払う必要があります。例えば、4月12日の取引で原油先物ETF(1699)の制度信用売りの残高を保有している場合、1口あたり0.5円の逆日歩を支払うことになります。
ETFの信用売りは「指数の下落に投資」ができるため便利ですが、逆日歩が発生した場合は損益に思わぬ影響を与えることがあります。原油先物ETF(1699)の株価が今後更に上昇し、貸株超過が拡大した場合、逆日歩が継続的に発生する恐れがあるため、信用売りをする場合は逆日歩の発生状況にも注意が必要です。
まとめ
- 年初から原油相場は上昇
- 「原油相場の反発を予想した逆張り(信用買い)⇒ 原油相場の反落を予想した逆張り(信用売り)」にシフト
- 制度信用売残高を保有する場合、逆日歩が思わぬコストになるため要注意
次回は「外国株ETFの信用取引活用法」について解説いたします。
(2019年5月作成)