マーケットのトレンドに投資する ~ETF×信用取引の活用法~(第8回)
不安定な株式相場でのETF投資【ETF×信用取引⑧】
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不安定な株式相場が続く2019年
2019年もあっという間に8ヵ月が経過しました。今年の株式相場は昨年末の急落からの戻りを試す1年となっていますが、見通しが明るいとは言い難い相場が続いています。
下のグラフは、日本・アメリカの株価指数について昨年10月の急落以降の推移をまとめたものです。
指数推移
期間:2018年10月1日~2019年8月30日、日次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
昨年10月から米中貿易摩擦が激化し、日本株・米国株ともに株式相場は急落しました。昨年末を安値のピークとし、年初から株価は順調に回復しましたが、米中の争いは未だに収まる気配が無く、消費税増税、日韓の関係悪化など、国内の景気動向・国外の地政学リスクは依然として厳しい状態です。
このような状況下で、投資家の皆様はどのような手法でETFに投資しているのでしょうか。ETFの信用残高から動向を見てみましょう。
ETFの信用残高から見える投資の傾向
日本株・米国株に連動するETFについて、株価・信用残高の推移を見てみましょう。
日経レバレッジ指数ETF(1570)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
日経ダブルインバース指数ETF(1357)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
NYダウ30種ETF(1546)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
NASDAQ-100ETF(1545)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
日本株・米国株に連動するETFのうち、例として売買が活発な銘柄を4銘柄取り上げました。
株価と信用残高を比較すると、株価(赤色)と制度信用買残高(橙色)は概ね反比例の関係(図の灰色の影の箇所)となっており、傾向として「信用買いを利用した逆張り投資」が顕著であることが分かります。
【信用買いを利用した逆張り投資】
- 株価が下落すると、近日中に株価が反発するだろうと予想し、今後の上昇を期待してETFを購入(新規の信用買い)
- 株価が上昇すると、近日中に株価が調整するだろうと予想し、今後の下落を見据えてETFを売却(既存の買建玉の売り返済)
一方で、制度信用売残高(青色)は概ね横ばいとなっています。
今年の株価推移を見ると、一本調子で上昇せずに調整を挟んだレンジ相場となっているので、逆張り投資を機動的に行うことで収益をあげやすい環境だったのではないかと思います。
「順張り投資」されている指数とは
上の例で見たように、信用残高推移は逆張り投資の様子が数字に表れることが多いです。信用取引は個人投資家が取引シェアの大半を占めますが、個人投資家は逆張り投資をする傾向が特に強いため、信用残高にもその傾向が表れていると考えられます。
一方、最近の信用残高の推移の中で「順張り投資(株価上昇時の買い)」が目立つ指数が2つあります。まずは冒頭のグラフに東証REIT指数(紫色)とロンドン金価格(金色)の下のグラフをご覧ください。
指数推移
期間:2018年10月1日~2019年8月30日、日次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
株式相場は横ばいが続いているなか、REITや金の価格は堅調に推移していることが分かります。
この2つの指数に連動するETFの信用残高の推移を見てみましょう。
東証REIT指数ETF(1343)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
金価格連動ETF(1328)の株価・制度信用残高推移
期間:2018年10月5日~2019年8月30日、週次
(出所)筆者作成
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、特定銘柄の売買などの推奨、価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。また、ファンドの運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
東証REIT指数ETF、金価格連動ETFの株価と信用残高を比較すると、株価(赤色)と制度信用売残高(青色)が比例の関係にあり、「信用売りを利用した逆張り投資」が起こっている一方で、株価(赤色)と制度信用買残高(橙色)も概ね比例の関係となっており、日本株・米国株ETFとは違い「信用買いを利
用した順張り投資」が顕著なことが分かります。(図の灰色の影の箇所)
特に今年6月以降の金価格連動ETFの推移(緑色の四角の箇所)を見ると、金価格の急上昇に伴いETFの株価も急伸しましたが、制度信用買残高も併せて増加しています。世界景気の停滞が続く中、安全資産である金の先高観は根強く、金価格は今後も上昇すると考える投資家が多いことが信用残高の推移から読み取ることができます。
まとめ
- 株式相場が不安定な環境のなか、日本株・米国株ETFはレンジ相場を予想した『逆張り投資』をする投資家が多い
- 一方、REIT・金ETFは更なる株価の上昇を予想して『順張り投資』をする投資家が多い
上昇期待が強い指数のETFについては、今後も順張り投資の傾向が見られるでしょう。
ETF投資を検討する際に、信用残高推移を参考にしていただければ幸いです。
(2019年9月作成)