マーケットのトレンドに投資する ~ETF×信用取引の活用法~(第9回)

レバレッジ・インバースETFの信用取引活用法②【ETF×信用取引⑨】

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人気の投資手法「日経レバレッジ指数ETFの信用売り」

今年もあっという間に年の瀬が近付いてまいりました。株式相場は昨年末の急落から戻りを試す一年となり、夏まではボックス圏で推移していましたが、8月以降は大型株・バリュー株を中心に一気に好転し、日経平均株価は年初来高値を更新しています。

日経平均株価の推移【2018年11月~2019年11月、週足】
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(出所:Yahoo!ファイナンス)

直近の日経平均株価は高値圏で推移していますが、信用残高を見ると、投資家の皆様は「逆張り=日経平均株価の下落」に投資をしている傾向が分かります。最も売買代金が多いETFである日経レバレッジ指数ETF(1570)については、逆張り投資=制度信用売残高が急激に増加しています。(レバレッジ型ETFの仕組みについては、ETFゼミ「売買ランキングの常連!レバレッジ(ブル)型ETF・インバース(ベア)型ETF」をご覧ください。)

下のグラフは、日経レバレッジ指数ETF(1570)の制度信用売残高と株価の推移です。

日経レバレッジ指数ETF(1570)の制度信用残高推移【2019年1月~10月、週次】
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(出所:筆者作成)

株価が上昇した8月以降(灰色の影の箇所)を見ると、制度信用買残高(橙色)が急激に減少する一方、制度信用売残高(青色)は増加し、直近では300万口以上(金額ベースで600億円以上)の制度信用売残高が積み上がっています。

日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売りは「日経平均株価の逆張り投資」が簡単にできるため、投資家の皆様に大変人気がある投資手法です。しかし、投資家の皆様が一斉に制度信用売りを行った場合、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という思わぬコストが発生するケースがあります。

制度信用売りのコスト「逆日歩(ぎゃくひぶ)」とは?

ここでは、制度信用売りのコストの一つである「逆日歩(ぎゃくひぶ)」について見ていきましょう。

逆日歩を理解するためには、制度信用取引の裏側で行われている「貸借取引」について理解する必要があります。下の
図は、制度信用売りをした場合の一連の流れをまとめたものです。

制度信用売りの取引フロー
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矢印の流れを順番に見ていきましょう。

① 注文
投資家の皆様は、信用売りの注文を証券会社に行います。「日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売り」はココに該当します。

② 貸株申込
証券会社は投資家の注文を集計し、信用売りの決済に必要な株式を調達するため、日証金に貸株の借入申込を行います。

③ 株式調達
日証金は証券会社からの貸株申込を集計し、株式の調達が必要な銘柄については、機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)から品貸(しながし)入札で株式を調達します。

投資家の皆様の信用売りは、証券会社・日証金を経由して機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)の株式を借りることで成立しています。この一連の流れのうち、貸借取引・品貸入札が逆日歩を決定する要因になります。

下の図は、先ほどの図のうち貸借取引・品貸入札にフォーカスしたものです。

貸借取引・品貸入札の取引フロー
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矢印の流れを順番に見ていきましょう。

① 貸株申込
証券会社は投資家の信用売りが多い場合、日証金に ①貸株申込 を行います。

② 株式調達(入札)
日証金は各証券会社からの申込を集計し、不足している株式について機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)に ②株式調達(入札)を行います。

③ 株式 の借り入れ、④ 株式 の貸し出し
③ 株式 を機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)から借り入れ、証券会社に対して ④株式 を貸し出します。この時、株式を貸し出した機関投資家に対し、株式のレンタル料である 逆日歩 を支払う必要があります。

⑤ 逆日歩 の支払い(証券会社 ➡ 日証金)
証券会社は(その裏側には信用売りをしている投資家がいるわけですが)、借り入れる株式に応じて日証金に ⑤逆日歩 を支払います。

⑥ 逆日歩 の支払い(日証金 ➡ 機関投資家)
日証金は、受け取った ⑥逆日歩 を全て機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)に支払います。

つまり逆日歩とは、株式を借りる証券会社から、株式を貸す機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)に支払われる「株式のレンタル料」ということができます。

日証金は機関投資家(証券会社・銀行・生損保等)からの入札によって株式の調達を行いますが、投資家の皆様の制度信用売りが増加した場合、証券会社の貸株申込も多くなり、日証金が機関投資家から調達する株数も多くなります。調達する株数が多くなるほど、機関投資家からの株式調達が難しくなるため、結果的にレンタル料である逆日歩が高くなるケースがあります。

下のグラフは、株価が上昇しはじめた8月下旬以降の日経レバレッジ指数ETF(1570)の貸株超過株数と逆日歩の推移をまとめたものです。

日経レバレッジ指数ETF(1570)の貸株超過株数・逆日歩推移【2019年8月下旬~10月末、日次】
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(出所:筆者作成)

貸株超過株数とは、「信用売りの結果、株式を調達しなければならない株数」を指します。8月下旬からの相場上昇に伴い、日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売りが増加した結果、9月以降は頻繁に逆日歩が発生しています。仮に9月・10月の2ヵ月間信用売り残高を保有し続けた場合、発生した逆日歩は合計430円となり、株価(約20,000円)と比較して2%近い負担になります。

「日経レバレッジ指数ETFの信用売り」に代わる投資手法とは

ここまで、逆日歩が発生する仕組みについて説明いたしました。株価が高値圏に推移している際の投資手法として、「日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売り」は手軽にできますが、制度信用売りは逆日歩という思わぬコストが発生する恐れがあります。

一方、逆張り投資をする際の選択肢の一つとして、日経平均株価の騰落率と逆に推移する日経ダブルインバース指数ETF(1357)への投資が挙げられます。

それぞれの場合のメリット・デメリットを押さえておきましょう。

日経ダブルインバース指数ETF(1357)の信用買い
●メリット
日経レバレッジ指数ETF(1570)と同じ最大6.6倍のレバレッジ効果(ETF2倍×信用取引3.3倍)
・信用売りを利用しないことで逆日歩の発生リスクを回避
・逆日歩が発生した場合、受け取ることができる(制度信用買いの場合)
●デメリット
・相場下落時のパフォーマンスは「1570の信用売り>1357の信用買い」になるケースが多い(ETFゼミ「レバレッジ・インバースETFの信用取引活用法」をご参照ください)

日経ダブルインバース指数ETF(1357)の現物買い
●メリット
・信用取引に係るコスト(金利・貸株料・逆日歩等)が発生しない
●デメリット
・レバレッジ効果は2倍に限定される

日経ダブルインバース指数ETF(1357)の制度信用残高の状況を見ると、8月以降(灰色の影の箇所)に制度信用買残高(橙色)が急増し、直近では5500万口以上(金額ベースで500億円以上)の制度信用買残高が積み上がっています。このことからも、「ダブルインバース指数ETFの信用買い」は広く利用されている投資手法ということができるでしょう。

日経ダブルインバース指数ETF(1357)の制度信用残高推移【2019年1月~10月、週次】
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(出所:筆者作成)

まとめ

・株式相場が高値圏で推移する時、「日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売り」は逆張りの投資手法として広く利用されている。
・制度信用売残高が増加した場合、逆日歩が発生し、思わぬコストが発生するおそれがある。
・逆張りの投資手法として、日経ダブルインバース指数ETF(1357)への投資も考えられる。

株式相場の見通しは予想が難しいですが、投資するETFを上手に選別することで思わぬコスト負担を回避することが可能です。皆様の銘柄選択の一助になれば幸いです。

(2019年11月作成)

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