マーケットのトレンドに投資する ~ETF×信用取引の活用法~(第10回)
2019年のETF騰落率ランキング【ETF×信用取引⑩】
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世界的に株価が上昇した2019年
今回のテーマは『2019年のETF騰落率ランキング』です。
2019年末の日経平均株価は1990年以来29年ぶりの年末高値を付け、振り返れば、2018年の急落を帳消しにする回復を見せた一年となりました。
2019年9月に寄稿した第8回「不安定な株式相場でのETF投資」では「見通しが明るいとは言い難い」「国内外の懸念事項は依然として厳しい状態」等のネガティブなフレーズを多用しておりましたが、10月以降の株式相場の上昇は当時からは予想し難い展開でした。
こうした世界的な相場上昇を受け、東証上場のETFも軒並み好調なパフォーマンスとなりました。下の表は、NEXT FUNDSシリーズを騰落率順に並べたものです。
●2019年 NEXT FUNDSシリーズの騰落率ランキング
順位 | コード | 愛称 | 2018年末 終値 | 2019年末 終値 | 騰落率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1324 | 113 | 163 | 44.2% | |
2 | 1570 | 15,820 | 22,470 | 42.0% | |
3 | 1309 | 25,690 | 35,450 | 38.0% | |
4 | 1545 | 7,060 | 9,690 | 37.3% | |
5 | 1470 | 16,750 | 22,850 | 36.4% | |
6 | 1625 | 15,810 | 21,360 | 35.1% | |
7 | 1613 | 1,948 | 2,573 | 32.1% | |
8 | 1699 | 310 | 409 | 31.9% | |
9 | 1626 | 18,900 | 24,180 | 27.9% | |
10 | 2514 | 915 | 1,160 | 26.8% | |
11 | 2513 | 905 | 1,141 | 26.1% | |
12 | 1480 | 13,500 | 16,740 | 24.0% | |
13 | 1624 | 28,100 | 34,500 | 22.8% | |
14 | 1621 | 20,330 | 24,680 | 21.4% | |
15 | 1343 | 1,895 | 2,298 | 21.3% | |
16 | 1546 | 25,200 | 30,350 | 20.4% | |
17 | 1321 | 20,580 | 24,410 | 18.6% | |
18 | 2518 | 842 | 990 | 17.6% | |
19 | 1311 | 680 | 796 | 17.1% | |
20 | 1598 | 15,800 | 18,460 | 16.8% | |
21 | 2515 | 915 | 1,069 | 16.8% | |
22 | 1633 | 26,510 | 30,850 | 16.4% | |
23 | 1591 | 13,300 | 15,440 | 16.1% | |
24 | 1328 | 3,655 | 4,230 | 15.7% | |
25 | 2520 | 915 | 1,056 | 15.4% | |
26 | 1306 | 1,547 | 1,783 | 15.3% | |
27 | 1319 | 295 | 339 | 14.9% | |
28 | 1629 | 30,900 | 35,000 | 13.3% | |
29 | 1312 | 18,350 | 20,700 | 12.8% | |
30 | 1632 | 11,440 | 12,810 | 12.0% | |
31 | 1620 | 22,460 | 25,120 | 11.8% | |
32 | 1628 | 16,680 | 18,530 | 11.1% | |
33 | 1682 | 144 | 158 | 9.7% | |
34 | 1559 | 3,090 | 3,390 | 9.7% | |
35 | 1619 | 20,430 | 22,310 | 9.2% | |
36 | 1323 | 339 | 370 | 9.1% | |
37 | 1678 | 151 | 163 | 7.9% | |
38 | 1622 | 19,280 | 20,590 | 6.8% | |
39 | 1489 | 32,700 | 34,900 | 6.7% | |
40 | 1577 | 21,760 | 23,120 | 6.3% | |
41 | 2519 | 996 | 1,055 | 5.9% | |
42 | 1325 | 195 | 206 | 5.6% | |
43 | 2512 | 979 | 1,017 | 3.9% | |
44 | 2511 | 947 | 978 | 3.3% | |
45 | 1630 | 20,370 | 21,030 | 3.2% | |
46 | 1560 | 3,930 | 4,040 | 2.8% | |
47 | 1615 | 153 | 157 | 2.6% | |
48 | 2510 | 1,000 | 1,014 | 1.4% | |
49 | 1631 | 8,860 | 8,950 | 1.0% | |
50 | 1617 | 29,160 | 28,670 | -1.7% | |
51 | 1618 | 11,840 | 11,570 | -2.3% | |
52 | 1623 | 15,270 | 14,570 | -4.6% | |
53 | 1627 | 7,850 | 7,010 | -10.7% | |
54 | 1471 | 5,290 | 4,490 | -15.1% | |
55 | 1571 | 1,756 | 1,407 | -19.9% | |
56 | 1472 | 2,358 | 1,537 | -34.8% | |
57 | 1357 | 1,398 | 881 | -37.0% |
(出所)筆者作成
※野村アセットマネジメントのETF59銘柄のうち、今年上場の2銘柄を除く57銘柄 ※2018年末終値と2019年末終値から騰落率を算出。値が付いていない銘柄は直近約定日の株価を利用 ※直近の騰落率は「ランキング」https://nextfunds.jp/ranking/よりご確認頂けます。
騰落率を見ると、上昇49銘柄、下落8銘柄(インバース型ETF が4銘柄含まれるため、実質4銘柄)となり、大半のETFが好調なパフォーマンスとなりました。
2019年は相場の先行きが見通しづらい一年でしたが、投資家の皆様はETFの取引において信用取引をどのように活用していたのでしょうか。
信用取引残高から見るETFの取引手法
①「逆張り投資」が多かったETF:レバレッジ・インバース型ETF
本連載でも度々触れていますが、個人投資家の皆様は「逆張り投資」をする傾向が強く、株価下落時は買いを入れ、株価上昇時は売りから入る傾向が強いです。信用取引を利用した逆張り投資は下記の通り整理することができます。
【信用取引を利用した逆張り投資】
- 株価が下落すると、近日中に株価が反発するだろうと予想し、今後の上昇を期待してETFを購入(新規の信用買い)
- 株価が上昇すると、近日中に株価が調整するだろうと予想し、今後の下落を見据えてETFを売却(新規の信用売り)
この「逆張り投資」の傾向が特に強い銘柄として、日経レバレッジ指数ETF(1570)・日経ダブルインバース指数ETF(1357)が挙げられます。下のグラフは、2019年の1年間の株価・制度信用残高推移を表したものです。
● 日経レバレッジ指数ETF(1570)の株価・制度信用残高推移(期間:2019年1月11日~2019年12月27日、週次)
(出所)筆者作成
● 日経ダブルインバース指数ETF(1357)の株価・制度信用残高推移(期間:2019年1月11日~2019年12月27日、週次)
(出所)筆者作成
日経ダブルインバース指数ETF(1357)のグラフを見ると、株価(赤色)の推移と制度信用買残高(橙色)は概ね反比例の関係となっており、日経平均株価が上昇した10月から年末にかけては、「株価下落を予想した逆張り投資」(つまりレバレッジを効かせた売り)が顕著です。
「株価下落を予想した逆張り投資」では、
- 日経レバレッジ指数ETF(1570)の信用売り
- 日経ダブルインバース指数ETF(1357)の信用買い
の二つが考えられますが、前回(「レバレッジ・インバースETFの信用取引活用法②」)ご説明した通り、日経レバレッジ指数ETF(1570)は逆日歩が発生し続けていたため、投資家の皆様は日経ダブルインバース指数ETF(1357)の信用買いを多く利用したと考えられます。
② 「順張り投資」が多かったETF:金ETF
上述の通り、信用残高推移は逆張り投資の傾向が顕著に表れるケースが多いですが、順張り投資が目立つ銘柄もあります。下のグラフは、金価格に連動するETFの株価・制度信用残高推移を表したものです。
● 金価格連動ETF(1328)の株価・制度信用残高推移(期間:2019年1月11日~2019年12月27日、週次)
(出所)筆者作成
金価格連動ETFの株価(赤色)を見ると、6月以降に相場は大きく上昇しましたが、信用残高は制度信用買残高(橙色)が急激に増加しており、「順張りの買い」が多く入っていることが分かります。その後、相場は調整期間を挟みつつ年末に更に高値を更新しましたが、制度信用買残高(橙色)はさほど減少せず、投資家の皆様は「更なる金価格の上昇」を見込んでいることが窺えます。
③「順張り・逆張り投資」が多かったETF:REIT ETF
ここまで、逆張り投資のETF、順張り投資のETFを見てきました。信用残高を見ていると、投資家の皆様の相場観はどちらかに偏る=信用残高の増減は一方向に偏るケースが多いですが、中には順張り・逆張りの両方が目立つ銘柄もございます。
下のグラフは、東証REIT指数ETF(1343)の推移を表したものです。
● 東証REIT指数ETF(1343)の株価・制度信用残高推移(期間:2019年1月11日~2019年12月27日、週次)
(出所)筆者作成
株価(赤色)を見ると、東証REIT指数は10月頃まで堅調に推移していることが分かります。2018年以降、東証REIT指数はマイナス金利や堅調な不動産需要を背景に一本調子で上昇してきましたが、株式相場の上昇と逆行して年末にかけて下落基調となっています。
このような株価推移の時、信用残高は「逆張りの買い」が増加するケースが一般的ですが、今回は制度信用買残高(橙色)、制度信用売残高(青色)がそれぞれ増加しており、「逆張りの買い」「順張りの売り」の相場観が対立していることが分かります。
日本のREIT相場は2年近く堅調に推移していたため、調整局面がしばらく続くと考え、「順張りの売り」をする投資家も多いことが窺えます。
まとめ
- 世界的な上昇相場を背景に2019年は軒並み好調なパフォーマンスを記録
- 株価と信用残高の推移を見ると、個人投資家の皆様は相場観に則って信用取引を活用しており、順張り投資・逆張り投資を上手に使い分けている
年初の株式相場は2019年末の上昇を継続する形でスタートしましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、2020年1月末時点ではやや下落基調となっています。
騒動が長期化した場合は株式相場への影響も避けられませんが、信用取引を上手に組み合わせることで下落相場にも対応いただくことが可能です。皆様のETF投資の一助になれば幸いです。
(2020年2月作成)