米政府による戦略備蓄補充や中国経済が原油需要を下支え
POINT
- 原油高騰の主要因は構造的な供給制約問題
- あまりに高いガソリン価格には消費者はついてこれず
- 当面の原油相場は米政府の戦略備蓄補充や中国経済が下支え
※1ガロンは約3.8リッター、1ガロン=5米ドルは、1リッター=約179円(136円/米ドル換算)
上昇が続いていたWTI原油先物ですが、昨年6月頃の120米ドル台をピークに大きく調整しています。原油相場上昇の最大の原動力は供給制約と考えています。温暖化などの世界的な気候変動問題への意識の高まりから、ネットゼロ(脱炭素社会)が叫ばれ、近未来の原油需要が大幅減少することが予想され始め、原油産業が新たな設備投資を行なうことに躊躇し、老朽化設備の更新が滞ったことなどから供給制約に陥りました。この供給制約は、ネットゼロ路線が続く公算が高い以上、抜本的な解決は難しいと思われます。
一方、WTI原油先物の120米ドルは米ガソリン価格で1ガロンあたり5米ドル程度となり、高価格ゆえにガソリン需要が冷え込んだほか、世界的な景気減速や中国のゼロコロナ政策で原油需要が減少するとの警戒も加わり、需要減少への警戒から、その後は下値を切り下げてきました。
今後については、需要サイドは、米政府が昨年放出した戦略備蓄を補充するために一定額(70米ドル程度)で原油を購入することを宣言していることや、ゼロコロナ政策を解除したことによる中国経済の回復などが当面の下支えとなりそうです。一方、供給制約についても、米シェール業界による生産回復が期待されており、両者のバランスが取れれば原油相場は比較的安定した動きとなりそうです。
期間:2021年3月1日~2023年2月28日、日次
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト
阪井 徹史
Tetsuji Sakai
マーケット・アウトルック
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