ファイナンシャルプランナーが伝授する資産形成・資産活用としての株式投資(第10回)
損益計算書や貸借対照表を活用した財務分析の基本:山崎製パンの場合【資産形成⑩】
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第8回、第9回では、企業の業績を確認するには損益計算書や貸借対照表に代表される財務諸表を確認するというお話をさせて頂きました。
今回はもう一歩進めて、財務諸表を使った企業の経営分析、いわゆる財務分析の基本となる以下の6つの指標についてご説明したいと思います。
- 売上高営業利益率
- 売上高経常利益率
- 流動比率
- 自己資本比率
- ROA
- ROE
損益計算書から計算できる指標
今回もこれまで同様、山崎製パンの平成30年12月期の財務諸表を使って確認していきます。
山崎製パンの平成30年12月期の損益計算書は以下のようになっていました。
損益計算書の項目から計算できる指標に、「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」があります。
売上高営業利益率
売上高に対する営業利益、つまり本業としての営業活動によってどのくらい利益が生み出されているかという効率性を計測する指標です。
売上高営業利益率(%)
営業利益(24,343) / 売上高(1,059,442) ✕ 100= 2.30%
売上高経常利益率
売上高に対する経常利益ですので、営業活動に加えて、営業外収益や営業外費用といった財務活動による損益を加えた利益の効率性を計測する指標と言えます。
売上高経常利益率(%)
経常利益(26,629) / 売上高(1,059,442) ✕ 100= 2.51%
貸借対照表から計算できる指標
山崎製パンの平成30年12月期の貸借対照表は以下のようになっていました。
貸借対照表の項目から計算できる指標には、「流動比率」と「自己資本比率」があります。
流動比率
流動負債に対する流動資産として計算されます。流動資産は1年以内に現金化できる資産、流動負債は1年以内に返済しなければならない負債で、短期的な負債に対する返済能力を示していると言えます。
流動比率(%)
流動資産(260,639) / 流動負債(224,689) ✕ 100= 116.0%
自己資本比率
総資本に対する自己資本の割合として計算されます。総資本は、貸借対照表の右側(負債と純資産の合計)のことで、総資本=総資産となります。この指標は、調達したお金全体のうち、どのくらいを株主から調達して経営を行っているかを示すものです。
自己資本比率(%)
自己資本(342,553) / 総資本(729,704) ✕ 100= 46.9%
総資本の半分近くが自己資本となっていますので、財務の安全性は高いと言えるかと思います。
損益計算書と貸借対照表の両方の項目を組み合わせて計算する指標
最後に、損益計算書と貸借対照表の両方の項目を組み合わせて計算する指標として、「ROA(Return On Asset)」と「ROE(Return On Equity)」をご紹介します。
ROA
総資産に対する事業利益の比率です。事業利益は、本業からの利益である営業利益と、資産として保有している預貯金や有価証券などからの収益を合計した利益です。
ROA(%)
事業利益(営業利益 24,343+営業外収益 3,778)/ 総資産(729,704) ✕ 100= 3.85%
ROE
株主資本に対する税引後当期純利益の比率です。株主から提供されている資本を利用して、最終的に株主に帰属する利益である税引後当期純利益をどれだけ稼ぐことができたか、ということを表しています。具体的には、
ROE(%)
税引後当期純利益(14,511) / 株主資本(342,553) ✕ 100= 4.24%
最後に
企業の財務分析の中でも基本的な指標6つについて具体的に計算してみましたが、この計算結果だけを見ても、企業の業績がよいのか悪いのか、よくわからないと思います。
これらの指標は、例えば過去3年、5年で計算して、改善しているのか、悪化しているのかを時系列で確認したり、第一パン、日糧製パン、コモといった業界他社の数字と横比較したりすることで、初めてその意味がわかります。
今回は、事例を用いてご紹介させて頂きましたが、気になる会社がありましたら、ぜひご自身で財務分析をしてみてください。
次回は、再び投資の話に戻りたいと思います。お楽しみに。
注)本記事は基本的な概念をご説明することを重視しているため、厳密な意味での正確性を一部犠牲にしていることにご留意頂ければと思います。また特定の有価証券の言及は説明目的のためであり、有価証券の購入または売却の推奨を意図したものではありません。
(2019年6月作成)