ETFは「20世紀最大の発明の1つ」?
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ETF(上場投資信託)は、金融商品の中で「20世紀最大の発明の1つ」と言われることがあります。2020年末には世界のETF純資産総額はすでに8兆ドルをを目前にしており、増加ペースは最近になって加速していますので、その形容もうなずけます。
世界のETF純資産総額とファンド数の推移
期間:2003年~2021年
(出所)ETFGIのデータより野村アセットマネジメント作成
しかし、ETFが他の金融商品に比べてこれ程高く評価される理由が、ETFのどの特性によるものなのかについては自明ではありません。またそもそも、いったい誰がこの人気商品を発明したのかも、実はよく分かっていないようです。
ETFの特性としては、①少額から投資可能、②多数の銘柄に分散投資することが可能、③指数への連動を目指して運用されるため透明性が高い、④費用が安い、⑤取引所の立会時間中に売買可能、といったことが挙げられます。このうち、①②については投資信託全体に対する特性であり、③④がインデックスファンドに付け加わる特性です。そして、⑤がETFに加わる特性ですが、これだけではインデックスファンドと比較したときに「20世紀最大の発明の1つ」と呼ぶには物足りないところもあります(インデックスファンドをそう呼んでしまえば話は早いのですが)。
少し歴史を振り返ってみましょう。
指数にパフォーマンスが連動するような運用を目指すインデックスファンドは、1970年代半ばに生まれたとされています。そして、1970年代後半に、証券をポートフォリオ(バスケット)として取引所で売買するという仕組みが生まれたと考えられています。これは株価指数先物が上場され、それと裁定される形で現物株式のバスケットがブロック取引という形で活発に取引されるようになったためのようです。
こうしたことから、インデックスファンドと株価指数先物がETFの源流にあると言えそうです。ただ、株価指数先物は、サイズが大きいことなどもあって個人投資家には不向きでした。それを改善する形でIPS(Index Participation Shares)という、指数のパフォーマンスを再現する商品が考案されました。そうして1989年に複数の取引所でS&P500 IPSの取引が始まりました。これは個人投資家の人気を集めたのですが、最終的に先物とみなされ、上場廃止に追い込まれてしまいました。
一般に世界初のETFと認知されているのが1990年にカナダのトロント証券取引所(TSE)で上場された「TIPS35(Toronto 35 Index Participation Units 35)」です。これはTSE-35(のちにTSE-100に変更)という株価指数のパフォーマンスに連動するよう実際に株式を保有するファンドで、その低い経費率が特徴の優れたETFだったようです。
こうした歴史を見てみると、ETFが「20世紀最大の発明の1つ」と呼ばれる背景には、おそらく「取引所で取り引きされるか否か」というETFとインデックスファンドの本質的な違いの中に内包される「税効率性」や「多様性」などがあるのではないかと考えています。前者はETFの設定の仕組みが投資家に課税等を生じさせないようになっているということ、後者はレバレッジ型やインバース型など柔軟なエクスポージャーの取り方が可能になることが例として挙げられます。これらすべての特性を網羅した総合評価としてETFは「20世紀最大の発明の1つ」と呼ばれているのかもしれません。
以上、少しETFについて調べてみたのですが、誰が発明したのかはどうしてもわかりませんでした。
(参考文献)Gary Gastineau, Exchange-Traded Funds: An Introduction, The Journal of Portfolio Management 27(3):88-96 • March 2001
朴念仁(ペンネーム)
(2022年1月更新)