深掘りETF⑥
原油先物ETF(1699)と原油価格の乖離はなぜ起こる?【深掘りETF⑥】
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個人投資家の方から「原油先物ETF(1699)が現物の原油価格と連動していない」との指摘を受けることがあります。そこで今回は、現物の原油価格と原油先物ETF(1699)の連動性についてご説明いたします。
乖離(かいり)の主な要因
原油先物ETF(1699)は、日本円換算したNOMURA原油ロングインデックス(対象指数)に連動する投資成果を目指して運用しています。
NOMURA原油ロングインデックスは、原油価格の値動きに連動することを目的として、世界の原油先物取引の中から、取引量が多く流動性が十分あるものを採用し、一定の計算ルールにしたがって指数化されたインデックスです。そのため、原油先物ETF(1699)は原油価格の値動きに連動することが見込まれます。しかしながら実際は、以下に代表される要因により連動性に制約があることも事実です。
連動性の制約要因
- 原油価格と原油先物価格の乖離
- 原油先物価格とNOMURA原油ロングインデックスの乖離
- NOMURA原油ロングインデックスと原油先物ETF(1699)の基準価額の乖離、原油先物ETF(1699)の基準価額と取引所価格の乖離
3つの乖離について
各々の乖離について確認しておきましょう。
1. 原油価格と原油先物価格の乖離
原油先物取引は、原油を受け渡すまでの原油の保管費用、金利負担等のコストに加えて、将来の需給見通し等が織り込まれて価格が形成されます。そのため、原油価格との差異が生じます。
2. 原油先物価格とNOMURA原油ロングインデックスの乖離
投資家の方の誤解が生じやすいのがこの点です。
NOMURA原油ロングインデックスは、世界の原油先物取引の中から、取引量が多く流動性が十分あるものを採用し、一定の計算ルールにしたがって指数化しています。
採用しているのは、NOMURA原油ロングインデックスが原油先物に投資した際の運用成果を再現することを目的に、原油先物取引の価格の推移が不連続となることを避けるための計算ルールです。
原油先物取引は、同じ原油が対象であっても取引期限ごとに異なる銘柄として取引されています。期近物(取引期限までの期間が最も短い銘柄)の取引の価格は、取引期限を迎えるたびに、その次に取引期限を迎える別の先物取引の価格に取って代わられます。これを限月交代と言います。限月交代前後では、各期近物を単純接続した値は不連続となります。
2つのケースで見てみましょう。
<ケース①>
一般的に、原油の保管費用や金利負担といったコストは、取引期限までの期間が長いほど高くなるため、先物取引の価格も、取引期限までの期間が長いものほど高くなります。原油先物価格の推移は、直近限月物の先物価格を単純につなげたもののため、限月交代が生じるたびに、不連続に上振れします。
一方、対象指数であるNOMURA原油ロングインデックスは、限月交代のたびに、満期を迎える安い期近物を売って、高い期先物を買っています。つまり、投資期間中に資金の出入りが無ければ、新たに購入できる先物の枚数は減少し、先物の保有枚数は減少してしまうため、NOMURA原油ロングインデックスは原油先物価格に対して下方に乖離します。
<ケース②>
通常はケース①が一般的ですが、将来の需給見通し等の影響により、先物取引の価格が、取引期限までの期間が長いものほど価格が低い状況になる場合があります。その場合、限月交代が生じるたびに、原油先物価格は不連続に下振れして推移します。
その場合、対象指数であるNOMURA原油ロングインデックスは、限月交代のたびに満期を迎える高い期近物を売って、安い期先物を買うことになります。したがって、投資期間中に資金の出入りが無ければ、新たに購入できる先物の枚数は増加し、先物の保有枚数は増加するため、NOMURA原油ロングインデックスは原油先物価格に対して上方に乖離します。
なお、NOMURA原油ロングインデックスと原油先物価格の乖離については、指数を算出している金融工学研究センターのサイトにレポートが掲出されておりますので、合わせてご参照ください。
3. NOMURA原油ロングインデックスと原油先物ETF(1699)の基準価額の乖離、原油先物ETF(1699)の基準価額と取引所価格の乖離
ETFの価格の乖離には、「対象指数と基準価額の乖離」、「基準価額と取引所価格の乖離」があります。詳細は、ETFのリスクとは?【深掘りETF③】価格乖離(かいり)リスク でご確認ください。
原油先物ETF(1699)等のコモディティETFは、個人投資家の方がコモディティ投資をする上で使い勝手のよい商品である一方、複雑な点もありますので、その特性をよくご理解いただいた上でご投資ください。
(2019年6月作成)