ファイナンシャルプランナーが伝授する資産形成・資産活用としての株式投資(第12回)

投資と投機の違いとは?プラスサムゲームか、ゼロサムゲームか?【資産形成⑫】

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前回は、投資と投機の違いについてご説明させて頂きました。今回も引き続き、投資と投機について、ゲーム理論でいうところのプラスサムゲームか、ゼロサムゲームか、という視点から考えていきたいと思います。

投資と投機の違い

前回の復習になりますが、筆者は、投資と投機について次のように考えています。

投資とは
何らかの付加価値を生み出す資産を購入し、長期的に保有し続けていくこと

投機とは
資産価格の動く方向を予測し、上がるか下がるかに賭けて売買を行うこと


ここで一つのポイントは、投資は「何らかの付加価値が生み出される」というところです。ゼロからプラスを作り出すわけです。

第5回のパン作りの話を思い出して頂きたいのですが、ゼロ(厳密には種)から小麦を作り、小麦から小麦粉へ、小麦粉からパンへ、という順序を経て、世の中に付加価値が生み出されていました。

つまり投資は、ゼロから何らかの付加価値が生み出されて、それを関係者で分かち合う形になっています(プラスサムゲーム)。

一方、投機は、一人のプレーヤーがプラスのリターンを得た場合、もう一方のプレーヤーはマイナスのリターンになりますので、関係者が享受するリターンを合計するとゼロになります(ゼロサムゲーム)。

プラスサムゲームとゼロサムゲーム

ここでプラスサムゲームとゼロサムゲームという言葉が出てきましたが、これらはゲーム理論という分野で出てくる専門用語ですので、改めてご説明させて頂きます。

プラスサムゲームというのは、ゲームに参加するプレーヤーの利得合計(Sum:サム)がプラスになるものです。プレーヤーが二人いて、利得合計が10だとしましょう。一方のプレーヤーの利得が6の場合、もう一方のプレーヤーの利得は4となりますので、多少の差はあるものの基本的にはWin-Winの関係になります。ただし、一方の利得が12の場合、もう一方は-2になりますから、この場合はWin-Loseの関係となり、このように一方がマイナスになる場合もあることには注意が必要です。

第5回のパン作りの例を思い出して頂きたいのですが、パン工場では、生み出した付加価値を従業員には賃金という形で、企業には儲け(利益)という形で、分配していました。毎年のGDPは必ずプラスですよね?まさにこれはプラスサムゲームになっていると言えますね。

一方、ゼロサムゲームというのは、ゲームに参加するプレーヤーの利得合計がゼロになるものです。この場合、利得合計はゼロですから、例えば一方のプレーヤーの利得が6の場合、もう一方のプレーヤーの利得は-6となり、必ずWin-Loseの関係になるわけです。

身近な事例としてお買い物を考えて頂ければわかりやすいかと思います。例えば家電量販店で15万円で販売されている冷蔵庫を買うことを考えてみましょう。買い手であるみなさんは5000円でも、1万円でも値引いてもらえれば、その分おトク感があるわけですが、一方で、その値引きをしてしまうと売り手である家電量販店は本来想定していた利益を確保できなくなってしまうわけです。買い手と売り手の間はゼロサムゲームの関係になっていることがわかるかと思います。

もう一つ事例を考えてみたいと思います。AさんとBさんの2人だけで、金(ゴールド)の売買をすることを考えます。ある時、Aさんが保有していた金(ゴールド)をBさんに100万円で売却したとします。その1年後、AさんがBさんからその同じ金(ゴールド)を120万円で買い戻したとしましょう。すると、Aさんは一度100万円で売却したものを120万円買い戻したわけですから20万円の損失になりますし、Bさんは100万円で購入したものを120万円で売却できたわけですから20万円の利益を得ることになります。二人の損益を合計するとちょうどゼロになりますから、まさにゼロサムゲームというわけです。

投資とは
プラスサムゲーム

投機とは
ゼロサムゲーム

株式の取引はプラスサムゲームか?ゼロサムゲームか?

ここであらためて株式の取引について考えてみます。

株式を発行している株式会社は世の中に商品やサービスという形で付加価値を生み出し、それを社員には賃金という形で、株主には利益・配当という形で分配しています。それを毎年毎年、会社が存続する限り継続していくわけです。容易に想像して頂けるかと思いますが、商品やサービスを生み出すには時間がかかります。ですから、通常は時間が長ければ長いほど、生み出される付加価値の大きさは大きくなるわけです。つまり、株式を購入して、長期的に保有を継続していけばいくほど、生み出される付加価値は大きくなり、リターンも大きくなる可能性が高まっていくわけです。これはまさに投資と言えるでしょう。

一方、株式のデイトレードを考えてみましょう。ある日の午前10時に、ある株式を購入して、その10分後に売却する。1200円で購入した株式が1210円で売却できれば、確かに売買によって利益を得ることはできるかもしれません。しかし、その10分間で、その株式を発行している会社が世の中に生み出した付加価値はほとんどゼロと見なせますから、たまたま株価が10円上がっただけで、運が悪ければ10円下がっていたかもしれないわけです。このような価格の変動に賭けて売買すること自体は、投資というより、投機と呼ぶべきではないでしょうか。

みなさんは投資と投機、どちらを選択しますか。

ライフプランを考えながら資産形成していくなら、運に賭けるような投機ではなく、時間を味方につける投資を選択していくべきでしょう。

ただし、いくら投資として株式を購入するのがよいと言っても、その会社が倒産してしまったら目も当てられません。そういったリスクを下げるにはどのような方法があるのか。次回はそのようなお話をさせて頂きたいと思います。次回もお楽しみに。

(2019年8月作成)

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