ETF投資のツボ

ロシア株式の取引停止とETF

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*2022年6月29日より、当ETF(銘柄コード:1324)の名称を「NEXT FUNDS ロシア株式指数連動型上場投信」に変更いたしました。(詳細

ロシアのウクライナ侵攻によるマーケット全体のリスクオフによって、様々な資産の値動きが激しくなっています。そういった中で、モスクワ取引所では2月28日以降、株式の取引が行われていません。(3月9日現在)

一方で、ロシア株の取引停止後も東京、ニューヨーク、ロンドンなどの市場では、ロシア株に投資しているETFは取引されていました。ただし、保有しているロシア株の売買はできないため、多くのETFは設定解約を停止している状態でした。

設定解約ができないETFが市場で取引されている状態というのはどのように考えればよいのでしょうか?

原資産市場が閉じていてもETFは売買される

ETFは投資対象の原資産市場が閉じていても売買されます。これは、今回のように原資産の市場が売買停止になっている場合だけでなく、原資産市場が閉じている夜間に地球の反対側の市場で取引されているETFを考えても同じことです。

その時の価格はどのように決まるのかというと、究極的には市場参加者の総意で決まるというのが答えになります。例えばマーケットメイカーといわれる値付け業者などは原資産の市場が閉じていたとしても、原資産と相関の高い資産の値動きなどを参考にしながらETFの価格を推定して取引をしています。

日本時間でも海外資産に投資するETFが取引されていることからもこのメカニズムが背後にあることがわかります。

設定解約が止まると起こること=ETFのクローズドエンドファンド化

原資産市場が閉じていてもETFは取引できるのですが、設定解約が止まってしまうと裁定取引を行っている主体(主にマーケットメイカー等の裁定取引業者)にとっては困った事態です。彼らは原資産とETFとの価格の乖離が発生したときに裁定取引(高い方を売って、安い方を買う)を行って収益化を図っています。しかし、ETFの設定解約ができないと、例えば裁定取引業者が、推定された保有資産の価格より安い市場価格で取引されていたETFを購入したとしても、基準価額で解約ができなければ、購入したETFのポジションを解消することができません。このような状態では裁定取引業者が市場に参加してこないため、市場価格と基準価額の乖離が大きくなる可能性が高くなります。

こうした状態は、オープンエンドファンド(途中設定解約が可能なファンド)であるはずのETFの「クローズドエンドファンド(途中設定解約ができないファンド)化」ともいえる現象です。

ETFの価格発見機能

今回のように原資産市場での売買停止とそれによるETFの設定解約の停止が起こった場合でも、ETFは市場で売買されていることがあります。その価格は裁定取引業者による参入がない中で、投資家たちの思惑によって売買されることによって形成されます。しかし、それでも投資家の総意で形成された価格があり、それによって売買がなされるということ(=クローズドエンドファンドとして売買されること)は大きな意味があります。

ひとつは、何よりも売買できるということです。非上場の投資信託が設定解約を停止した場合、投資家は解約することも追加で買い付けることもできません。しかし、ETFは市場で売買することができます。前述した通り、その価格の妥当性については留意する必要がありますが、それでも売買できることは投資家にとっては大きなメリットとなります。これは、非上場の投資信託とETFとの大きな違いであり、ETFの方が非上場の投資信託よりも流動性が高いといわれる理由です。

もうひとつは、ETFが逆に原資産市場の価格推移を推定するバロメーターとなることです。グラフは日本、米国、英国に上場しているロシア株のETFとロシアの株式指数であるRTS指数の日中の値動きを示したものです。すべてのETFがRTS指数に連動するものではありませんし、日本、米国、欧州で時間帯や投資家層、売買高も異なるため、完全に一致して連続した価格付けがなされているわけではありませんが、グラフからは原資産市場のRTS指数の算出が止まった以降も、それぞれの市場のETFの価格がある程度連動している様子がわかります。

<ロシア株ETFの値動き(単位:ドル)> article906_img01_2.png

出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

期間:2022年2月23日午後4時~2022年3月4日午前6時
注1)RTS指数はドル建て。RSX : VanEck Russia ETF(米国上場・ドル建て)、HRUD : HSBC MSCI Russia Capped UCITS ETF USD(欧州上場・ドル建て)、1324(ドル換算) : NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信の市場価格をドル換算したもの
注2)各市場の純資産総額が最も多いロシア株ETFを抽出して分析(2022年3月3日時点)
注3)RSXおよびHRUDはRTS指数に連動するものではありません
注4)取引がなかったためにグラフが切れている場合があります

このように、原資産市場が止まっている間も、ETFが投資家たちの取引によってその資産の価格を示すことを、ETFの価格発見機能といいます。ロシアの株式市場が止まっていたとしても、その価格の動向を世界の投資家がどう見ているのかは、別の市場で売買されているETFの価格を見ることである程度つかむことができるのです。

こういった事例は過去にも何度か起こっています。2015年のギリシャショック時には米国に上場していたギリシャETFが価格発見機能を発揮したといわれていますし、リーマンショックやコロナショックの際の債券ETFも、現物の債券市場の流動性が低下した際に、流動性と価格発見機能を市場に提供したとされています。

ETF自体の取引停止

原資産の市場が止まっていても売買することができるとはいえ、設定解約が止まり、クローズドエンドファンド化しているETFの売買には慎重になる必要があります。

前述の通りマーケットメイカーなどの裁定取引業者が関わることが難しい環境下では、投資家の思惑によってかなり価格が変動しやすくなります。

また、ETFの設定解約の停止が続くと、取引所での売買が停止する場合もあります。この場合は、ETFを市場で購入することはもちろん、売却することもできなくなります。(実際に3月4日以降、欧米の取引所ではロシア関連のETFの売買停止が相次いでいます。東京証券取引所も3月17日よりNEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信の売買を停止する旨の発表を行っています。(3月9日時点))ETFの市場での取引自体がなされないわけですから、当然ETFの価格発見機能もなくなってしまいます。

原資産市場の売買状況が不安定になった場合のETFについては、ETF自体の設定解約の停止だけでなく、ETFの売買が停止することもありますので、ETFが上場している取引所の対応にも留意する必要があるでしょう。

NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信につきましては、東京証券取引所及び野村アセットマネジメントからも注意喚起がなされていますので、こちらもご覧ください。

◇「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」の東京証券取引所における売買の停止および値動きについて(野村アセットマネジメント(2022年3月9日)

https://nextfunds.jp/data/2022/td_220309a.pdf

◇「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」(コード 1324) の売買停止等に関するお知らせについて(2022年3月9日)

https://www.jpx.co.jp/news/0060/20220309-01.html

◇「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」の値動きについて(野村アセットマネジメント(2022年3月8日))

https://nextfunds.jp/data/2022/td_220308a.pdf

◇「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」の基準価額と市場価格の重要な乖離について(野村アセットマネジメント(2022年3月7日))

https://nextfunds.jp/data/2022/tc_220307a.pdf

◇「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」に関する注意喚起(東京証券取引所(2022年3月7日))

https://www.jpx.co.jp/news/0060/20220307-01.html



(2022年3月9日作成)

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