ETF投資のツボ
国内ETFの資金フローから見た投資家動向
2024年2月16日作成
早いもので、2024年もあっという間に一か月がたちました。新NISAも始まり、さて今年こそ投資を始めてみよう、今年から投資を本気でやってみようという方も多いかと思います。その際、投資家は今どこに資金を振り向けているのだろう?と思った方もいるかもしれません。
個人投資家、機関投資家、そして海外投資家など、様々な投資家が利用しているETFは、使い勝手のいい投資ツールであると同時に、実はその資金フローを観察することで投資家の動向を見ることができるツールでもあります。
本稿では、2023年と2024年1月のETFの資金フローを見ることで、昨今の投資家動向を考察してみようと思います。
ETFの資金フローとは?
市場で売買されるETFの資金フローとはどういうことなのでしょうか?
ETFは市場で売買されただけではETFが投資家から投資家の手に渡るだけであり、ETF(の口数)が増加、減少するわけではありません。
しかし、ETFの需要が高まった場合には、指定参加者がETFの運用会社に原資産証券のバスケット又は現金を拠出することによって新規にETFの受益権の発行がなされます。これは非上場の投資信託の追加設定と同じと考えていいでしょう。これがETFへの資金フローとして観測されるものです。
また、上記と逆の場合はアウトフロー(資金流出)となります。これらを集計することによってETFへの資金動向を見ることができます。
2023年の資金フロー
図1:国内籍ETFへの資金フロー(2023年)(単位:億円)
※総合型はTOPIX,日経平均、JPX日経インデックス400
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
図1は2023年の種類別のETFの資金フローを示したものです。2023年は日本株に注目が集まった年でもあり、日本株の総合型へのフローが最も目立ちます。ただし、このうちの約2,100億円は日本銀行の買い付けによるものであることに注意が必要です。そうしてみると、債券ETFへの資金流入が大きかったこともわかります。主に米国債を中心として機関投資家などによる利用が増えてきたことがその要因の一つと考えられています。
また、テーマ・ストラテジー、そのなかでも日本株の高配当株ETFへの資金フローがとても目立ちました。高配当株はJ-REITと並んでインカム投資家およびバリュー投資家の物色の対象となったと思われます。
日本株に関しては総じて資金が入ってきていました。9月に初めて登場したアクティブETFにも堅調な資金フローが見られましたし、業種別は主に金利上昇を材料とした銀行株ETFへの資金フローが目立ちました。
逆に、レバレッジ・インバースや外国株はアウトフローとなっており、特に日本株のレバレッジ型のアウトフローが大きく、これは日本株の上昇局面における利益確定の売りなどの影響によるものと思われます。
2024年1月の資金フロー
図2:国内籍ETFへの資金フロー(2024年1月)(単位:億円)
※総合型はTOPIX,日経平均、JPX日経インデックス400
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
さて、2024年に入ってからのフローはどうでしょうか。
図2は2024年1月のETFへの資金フローです。日本株が非常に強かった局面でもあり、総合型への資金フローがプラスとなっています。レバレッジ・インバースのインフローについては、その中身はインバース系のインフローが目立っていて、上昇局面での逆張りの投資家の動きが見られます。テーマ系はかなり様々なテーマに分かれており、ROEやPBR、半導体、高配当など様々でした。
新NISAもあり、それぞれの視点でテーマを選んで投資する個人投資家が多かったのかもしれません*。また、外国株にもフローが見られましたが、最も多かったのはインド株のETFで、これも新NISAに絡んだ個人投資家の買い付けによるものと考えられます。逆にアウトフローとなったのがアクティブ(主に米国短期債のもの)、業種別(主に銀行)、J-REITとなりました。
*レバレッジ・インバース型等一部のETFは新NISA対象外となります。詳細はこちらでご確認ください。
ETFの資金フローと投資家動向
2023年から2024年1月にかけては日本株が非常に強いマーケットだったため、2024年に入っても日本株へのフローも目立ちますが、それ以外にも、債券やテーマ型への資金フローも継続しています。一方で、外国株や主に銀行株を中心とした業種別、J-REITなどはフローの方向性が変化しました。また、テーマ・ストラテジー型もよく見てみると、高配当一色だった2023年からより様々なものを選択しているようにも見えます。
ETFのフローは投資家の行動を映す鏡ともいえます。上記のように、ETFの資金フローを、投資家がどのような資産に資金を振り向けてきたかを探るヒントとして用いることができます。一方で、ETFは個人投資家、機関投資家、海外投資家などの多様な投資家が利用しているので、その資金フローがどの主体によるものなのかを考慮する必要もあります。
(2024年2月16日作成)