ETF投資のツボ
国内ETFの資金フローから見た2024年上半期の投資家動向
2024年7月16日作成
2024年も半分が過ぎました。年初からの新NISAの開始は大きな話題となりました。多くのETFは新NISAの成長投資枠の対象となっています。この半年間の投資家動向を探るために、本稿ではETFの資金フローを通じて、この半年間の投資家動向を見てみたいと思います。
ETFは市場で売買されただけではETFが投資家から投資家の手に渡るだけで、ETFの口数が増加、減少するわけではありません。ETFの需要が高まった場合には、指定参加者がETFの運用会社に原資産証券のバスケット又は現金を拠出することによって、新規にETFの受益権が発行されます。これがETFへの資金フローとして観測されるもので、逆の場合はアウトフロー(資金流出)となります。
2024年上半期のETFの資金フロー
図1:国内籍ETFへの資金フロー(2024年1月~6月)(単位:億円)
※総合型はTOPIX,日経平均、JPX日経インデックス400
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
図1は2024年上半期のカテゴリー別のETFの資金フローを示したものです。
この半年間に最も資金が入ったカテゴリーは債券でした。国内債券、外国債券、米国の超長期債券などが主だったものです。債券ETFは、機関投資家の利用も活発となってきています。その次がテーマ・ストラテジーとなっており、主に高配当や半導体関連のETFへの資金フローが目立ちました。これについては後述します。また、J-REIT、外国株、コモディティ、業種別などがこれに続いています。
国内籍ETFで最も残高の多いカテゴリーである総合型は若干のアウトフローとなっています。このカテゴリーも機関投資家などの利用が多く、特に3月から5月にかけてはインフロー、アウトフロー共に非常に激しくなりました。この半年で見てみると全体としては売り買いが交錯した状態だったと考えられます。
テーマ型への流入は主に高配当と半導体
図2:テーマ型ETFへの資金フロー上位(2024年1月~6月)
No. | テーマ型ETFの連動対象指数 | 資金フロー |
1 | 日経平均高配当株50指数 | 641 |
2 | 野村株主還元70 | 388 |
3 | FactSet US Tech Top 20 Index | 386 |
4 | FactSet Japan Semiconductor Index | 288 |
5 | 野村日本株高配当70 | 171 |
6 | フィラデルフィア半導体株指数 | 156 |
7 | MSCIジャパン高配当利回り指数 | 121 |
8 | JPXプライム150 | 111 |
9 | 日経半導体株指数 | 77 |
10 | 東証配当フォーカス100指数 | 63 |
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
では、図1のテーマ・ストラテジーのカテゴリー中のETFを具体的に見ていきましょう。図2は、2024年上半期のテーマ型ETFの資金フロー上位を見たものです。
これを見ると、高配当と半導体という文字が目立ちます。高配当は、インカムへのニーズとバリュー相場における高配当株の堅調なパフォーマンスから、半期を通じて継続的に資金が流入しました。また、キャピタルゲインという観点からは、半導体関連株の非常に良好なパフォーマンスと今後の成長期待が多くの投資家の目を引いたようです。
このようなテーマに特化した投資を考えている投資家にとっては、個別銘柄のリスクを分散しつつ、そのテーマに沿って、市場でいつでも取引できるETFは、非常に有用な投資ツールになっていると考えられます。
2023年との比較
図3:国内籍ETFへの資金フロー(2023年、2024年1月~6月)(単位:億円)
※総合型はTOPIX,日経平均、JPX日経インデックス400
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
最後に、2023年1年間と2024年上半期のフローの比較をしてみましょう。図3は各カテゴリーの比較のグラフです。
前述の通り、2023年に大きな流入があった総合型は、2024年の前半は半期で合計するとほとんどフローがないように見えますが、月ごとにはかなりの出入りがありました。日本株への期待からくる流入と上昇時の益出しによる売却、その他年度末を挟んだ様々な思惑が交錯していたと思われます。
一方で、債券、テーマ・ストラテジー、J-REIT、コモディティ、業種別、外国株などはまだ半年ではあるものの、前年1年分とほぼ同等かそれ以上の流入となっていることがわかります。
このようにETFの資金フローをカテゴリー別や前年比で見ることで、投資家動向を探ることができます。ただし、ETFは個人投資家、機関投資家、海外投資家など様々な投資家が活用できるツールのため、投資家毎に分析したい場合は、各種データを組み合わせながら解釈していく必要があります。
(2024年7月16日作成)