
世界的景気減速リスクが高まるも、米政府による戦略備蓄補充が下支え
POINT
- 原油高騰の主要因は構造的な供給制約問題
- あまりに高いガソリン価格には消費者はついてこれず
- 当面の原油相場は米政府の戦略備蓄補充が下支え
※1ガロンは約3.8リッター、1ガロン=5米ドルは、1リッター=約172円(131円/米ドル換算)
上昇が続いていたWTI原油先物ですが、昨年6月頃の120米ドル台をピークに大きく調整しています。原油相場上昇の最大の原動力は供給制約と考えており、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)などでネットゼロ(脱炭素社会)が叫ばれ、近未来の原油需要が大幅減少することが予想される中、原油産業が新たな設備投資を行なうことに躊躇し、老朽化設備の更新が滞ることなどを要因として供給制約に陥ったことなので、抜本的な解決は難しいと思われます。
一方、WTI原油先物の120米ドルは米ガソリン価格で1ガロンあたり5米ドル程度となり、高価格ゆえにガソリン需要が冷え込んだほか、世界的な景気減速や中国のゼロコロナ政策で原油需要が減少するとの警戒も加わり、その後は下値を切り下げています。
今後については、需要サイドは世界的な景気減速などの影響を受けると思われますが、一方で米政府が昨年放出した戦略備蓄を補充するために一定額(70米ドル程度)で原油を購入することを宣言しており、当面の下支えとなりそうです。一方、供給制約についても、米シェール業界による生産回復が期待されており、両者のバランスが取れれば比較的安定した動きとなりそうです。
期間:2021年1月1日~2022年12月30日、日次
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト
阪井 徹史
Tetsuji Sakai
マーケット・アウトルック
よく読まれている記事
-
ETFとは?ETF(上場投資信託)のしくみやメリット・デメリット、投資信託との違いを解説ETFとは、日経平均株価やTOPIX、S&P500等の指数に連動するように運用さ…
-
ETFの分配金のしくみと利回り【ETFの買い方・売り方②】ETFは決算期間中の利子や配当等の収益から費用を控除した全額を分配金として支払い…
-
高配当株ETFの分配金の希薄化を防ぐ工夫【深堀りETF⑳】人気の高まる高配当株ETFですが、ETFの分配金は想定額とずれることがあります。…
-
アクティブETFの活用法9月に国内で初めて上場したアクティブETFについて、その種類や利用法を紹介します…
-
外債投資、為替ヘッジはどうするべきか足元の米ドル円レートは140円台で、約40年ぶりの円安米ドル高水準。貿易収支/日…
-
変化するエネルギー資源セクターは長期投資に値するのか世界がネットゼロ(脱炭素社会)に向かう中、原油相場動向やエネルギー関連株の長期投…
-
配当利回りが魅力の高配当株ETF(解説動画あり)高配当株ETFは、高配当銘柄で構成された指数に連動するETFで、一般的な日本株E…