ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

株価は出遅れ、業績成長期待が高い素材・化学関連株

2025年6月18日作成

日本株式市場は、過去1年程度、概ね横ばいで推移

日本株式市場の代表指数であるTOPIX(東証株価指数)は、昨年7月に2,929ポイントの史上最高値を付けた後、足元に至るまでの約1年間、乱高下を繰り返しながら概ね横ばいで推移してきましたが、その背景には業績予想の推移があります。

図表1は、TOPIXと12ヵ月先予想EPS(1株当たり利益)の推移です。TOPIXが高値を付けた昨夏頃までは、同12ヵ月先予想EPSも順調に成長してきました。しかし、その後は、予想EPSの成長が止まり、今年4月に向けて微妙に最高益を更新したものの、以前のような勢いは感じられない展開となりました。こうした業績推移を反映し、TOPIXの上昇もストップし、概ね横ばいで推移したものと考えています。なお、昨夏に高値を付けた後に2度の急落がありましたが、予想EPSが大きく落ち込まなかったことで、すぐに反発しています。

では、この株価指数と予想EPSが伸び悩んだ1年間、TOPIX-17セクターで見るとどうなっていたのでしょうか?詳しく見てみましょう。

[図表1] TOPIXと同12ヵ月先予想EPSの推移

TOPIXと同12ヵ月先予想EPSの推移

期間:2023年1月4日~2025年6月6日、日次

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

過去1年程度、TOPIX-17セクターの動きはバラバラ

前述した昨夏(2024年7月11日)のTOPIXの高値から足元の2025年6月6日にかけて、TOPIX-17セクターの株価指数騰落率と予想EPSの変化はどうだったでしょうか。

図表2は、横軸に12ヵ月先予想EPSの変化率を、縦軸に株価指数騰落率をとった分布図です。ご覧のように、各セクターの動きはかなりバラバラだったことがわかります。予想EPSでは、電力・ガス、金融(除く銀行)、運輸・物流が10%以上の伸びを見せた一方、自動車・輸送機、エネルギー資源、鉄鋼・非鉄が20%以上の減価となり、これらが合わさってTOPIXの予想EPSは6.2%の減価となりました。一方の株価指数騰落率は、自動車・輸送機など、予想EPSの変化に概ね連動したセクターが多い一方、電力・ガスなど、予想EPSの変化とは異なった動きをしたセクターもありました。

その中でも、予想EPSの動きに比べて株価指数騰落率が悪かった4セクター(電力・ガス、金融(除く銀行)、医薬品、素材・化学)を分析してみたところ、素材・化学が最も魅力的に見えましたので、最後に同セクターを見てみましょう。

[図表2] TOPIX-17セクターの12ヵ月先予想EPSの変化率と株価指数騰落率

TOPIX-17セクターの12ヵ月先予想EPSの変化率と株価指数騰落率

期間:2024年7月11日→2025年6月6日の2時点比較

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

予想EPSの先々の伸びが高い素材・化学セクターに注目!

TOPIX-17素材・化学セクターの株価指数は、概ね予想EPSに沿って動いてきました。

図表3は、TOPIX-17素材・化学セクターの株価指数と12ヵ月先予想EPSの推移で、データがある過去17年半程度を見てわかるように、株価指数は予想EPSにやや先行して動いてきた様子がわかります。ならば、この先のEPSがどうなるかが重要なわけですが、素材・化学の予想EPSは10%前後の成長が続く予想になっています。前述した電力・ガス、金融(除く銀行)、医薬品も含めた4セクターの中では、最も高い成長見通しとなっています。あくまでもBloomberg予想通りとなればという条件付きですが、素材・化学セクターは予想EPSの推移に比べて出遅れている可能性を感じ、最もポテンシャルがあるのではないかと思い、今回取り上げてみました。

指数構成の上位銘柄は、信越化学、富士フイルム、日東電工といった成長分野のハイテク銘柄であり、長期的な成長も期待できると考えています。

[図表3] TOPIX-17素材・化学セクターの株価指数と12ヵ月先予想EPSの推移

TOPIX-17素材・化学セクターの株価指数と12ヵ月先予想EPSの推移

期間:2008年1月末~2025年5月末、月次
・○印は、1年後、2年後の12ヵ月先予想EPS(2025年6月9日時点のBloomberg予想)

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1620)

(2025年6月18日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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