AI相場は米国だけではない~新興国株指数が注目される理由~

AIと聞くと米国の巨大IT企業や半導体設計企業が注目されがちです。
ただ、AIはソフトウェアだけで動くわけではありません。サーバー、計算機器、半導体、メモリ、電子部品、通信機器、電力・冷却設備など、幅広い供給網が必要です。こうしたAIを支える企業を多く含む点で、新興国株指数にも注目が集まっています。

AI需要はデータセンター投資を通じて広がる

AIの活用が進むほど、クラウド企業やAI関連企業はより多くの計算能力を必要とします。そのため、これら企業は、データセンターへの投資を増やす傾向があります。 AI向けデータセンターには、以下のような幅広い分野が関わります。

【図1】AI向けデータセンターで必要になる主な分野

分野主な内容役割
サーバー・計算機器GPUサーバー、CPU、ストレージAIの計算やデータ保存を担う
メモリDRAM、高性能メモリ(HBM)など高速処理を支える
半導体・電子部品基板、電源管理部品、接続部品、受動部品サーバーや機器の動作を支える
通信機器ネットワーク機器、光通信部材データのやり取りを支える
電力・冷却予備電源、配電設備、水冷・空冷設備、放熱装置安定稼働と熱対策に必要
建設・運用施設工事、保守、警備、運用効率化ソフトデータセンターの整備・維持を支える

・野村アセットマネジメント作成

特にAI向け設備は、従来型のデータセンターに比べて消費電力や発熱が大きくなりやすい点が特徴です。そのため、半導体だけでなく、電力供給や冷却技術の重要性も一段と高まっています。
つまり、AI投資の拡大は、米国の巨大IT企業だけでなく、その裏側で設備や部品を供給する企業にも波及します。

【図2】AI需要が新興国企業に届く流れ

AI需要が新興国企業に届く流れ

・野村アセットマネジメント作成

新興国株指数がAIと結びつきやすい理由

新興国株指数がAIと関連しやすい理由は大きく2つあります。
1つ目は、情報技術セクターの比率が高いことです。
2026年3月末時点で、新興国株指数における情報技術セクター(半導体・半導体製造装置、テクノロジー・ハードウェアおよび機器、ソフトウェアおよびサービスの3業種)の構成比は31.8%と最大となっています。その中でも、半導体・半導体製造装置が18.7%を占めており、AI投資が拡大する局面では、こうした企業群が指数全体の追い風になりやすい構造があります。

【図3】新興国株指数の上位10業種

業種別配分
業種構成比
半導体・半導体製造装置18.7%
銀行16.2%
テクノロジー・ハードウェアおよび機器11.7%
素材7.1%
資本財5.5%
メディア・娯楽5.4%
一般消費財流通・小売4.8%
エネルギー4.3%
自動車・自動車部品3.1%
保険2.7%

・MSCIエマージング・マーケット・インデックス、2026年3月末時点
(出所)MSCIのデータを基に野村アセットマネジメント作成

2つ目は、台湾と韓国の比率が高いことです。
2026年3月末時点の国・地域別構成比を見ると、中国が25.5%で最大ですが、台湾が22.5%、韓国が15.5%と続き、台湾と韓国を合計すると約38%に達します。
台湾と韓国には、AI供給網の中核を担う半導体・メモリ関連企業が多く存在します。そのため、新興国株指数はAI普及に必要な製品や技術を供給する企業群を多く含む指数としても見ることができます。

【図4】新興国株指数の上位10国・地域

国・地域別配分
国・地域構成比
中国25.5%
台湾22.5%
韓国15.5%
インド12.6%
ブラジル5.1%
南アフリカ3.6%
サウジアラビア3.1%
メキシコ2.1%
アラブ首長国連邦1.3%
マレーシア1.2%

・国・地域は原則発行国・地域で区分しております。
・MSCIエマージング・マーケット・インデックス、2026年3月末時点
(出所)MSCIのデータを基に野村アセットマネジメント作成

指数全体を動かす上位銘柄の存在感

新興国株指数は、幅広い国に分散しているように見えて、実際には一部の大型企業の影響を受けやすい指数です。
半導体関連の主要銘柄であるTSMC、サムスン電子、SKハイニックスの3社だけで、MSCI新興国株指数の約21%を占めています。したがって、AI関連需要の拡大がこれらの企業の業績や株価を押し上げると、その影響は指数全体にも波及しやすくなります。
新興国株指数を理解するうえでは、国や地域の分散だけでなく、上位銘柄の集中度にも注目する必要があります。

【図5】新興国株指数の上位10銘柄

銘柄業種国・地域構成比
台湾セミコンダクター·マニュファクチャリング·
カンパニー(TSMC)
半導体・半導体製造装置台湾13.3%
サムスン電子テクノロジー・ハードウェアおよび機器韓国5.1%
テンセント·ホールディングスメディア・娯楽中国3.9%
SKハイニックス半導体・半導体製造装置韓国2.8%
アリババ·グループ一般消費財流通・小売中国2.6%
中国建設銀行銀行中国1.0%
HDFC銀行銀行インド0.9%
リライアンス·インダストリーズエネルギーインド0.8%
デルタ電子テクノロジー・ハードウェアおよび機器台湾0.8%
鴻海精密工業テクノロジー・ハードウェアおよび機器台湾0.7%

・国・地域は原則発行国・地域で区分しております。
・MSCIエマージング・マーケット・インデックス、2026年3月末時点
(出所)MSCIのデータを基に野村アセットマネジメント作成

上位銘柄① 台湾セミコンダクター·マニュファクチャリング·カンパニー(TSMC):AI向け半導体製造の中心企業
TSMCは、半導体業界で専業ファウンドリというビジネスモデルを切り開いた企業であり、顧客が設計した半導体を受託製造する役割を担っています。自社ブランドの最終製品を販売するのではなく、世界中の半導体メーカーやファブレス企業の設計を製造面から支える存在であり、AI向け先端半導体の量産でも重要な位置を占めています。AIの普及局面では、設計力だけでなく、先端プロセスで安定して量産できるかどうかが大きな意味を持つため、TSMCはAI供給網の中核企業として注目されやすいと考えます。

上位銘柄② サムスン電子:AI時代のメモリ需要が追い風に
サムスン電子は、半導体分野でメモリやファウンドリ等を展開する総合力のある企業です。AI関連で特に注目されやすいのはメモリ領域で、同社はHBM(高性能メモリ)を通じて、AIや高性能計算を支える役割を担っています。加えて、メモリだけでなく、ロジックや先端パッケージングまで含めた幅広い技術基盤を持つため、AIインフラ投資の広がりを複数の領域で取り込みやすい企業として考えられます。

SKハイニックス:HBM需要拡大の恩恵を受けやすい企業
SKハイニックスは、DRAMやNANDフラッシュを主力とするメモリ企業です。特にAIサーバーやデータセンターで重要性が高い分野に強みを持ち、AIメモリとデータセンター向け製品を中核領域として打ち出しています。AIの学習や推論が広がるほど、高速・大容量・省電力のメモリ需要は高まりやすいため、SKハイニックスはAI関連投資の恩恵を受けやすい企業の一つといえるでしょう。

まとめ

AI相場というと、米国の巨大IT企業や半導体設計企業に注目が集まりがちです。しかし、AIを支える供給網に目を向けると、新興国株指数を構成する企業群にも重要な役割があることが分かります。
新興国株指数は、情報技術セクターの比率が高く、台湾・韓国の半導体・メモリ企業を多く含んでいます。TSMC、サムスン電子、SKハイニックスといった上位銘柄の存在感も大きく、AI関連需要の拡大が指数全体に影響しやすい構造です。
新興国株指数は、地域分散の手段であると同時に、AIインフラ拡大の恩恵を受ける可能性のある投資対象としても注目されます。
ただし、半導体市況や特定国・地域への集中リスクには注意が必要です。AI供給網への投資機会としての魅力と、集中に伴うリスクの両面を確認しながら見ることが大切と考えます。

※個別銘柄の記載は、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。
上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 新興国株式・MSCIエマージング・マーケット・インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2520)

(2026年6月26日作成)

野村アセットマネジメント

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