運用者の視点

日本の株式市場における高配当株の変遷

2025年6月27日作成

 高配当株へ投資を行なうETFや投資信託は、TOPIXなどの市場指数と比較して高い配当利回りを獲得するためにポートフォリオの見直しを定期的に行なっています。高配当運用に選ばれやすい銘柄、選ばれにくい銘柄も市場環境と共に変化しています。今回のコラムではそれらを踏まえながら日本の株式市場における高配当株への投資について理解を深めたいと思います。

 まずは、直近の日本の株式市場における予想配当利回りの分布について確認してみます。下記のグラフでは、TOPIX500構成銘柄を対象としてTOPIX-17シリーズの各業種における個別銘柄の予想配当利回りの75パーセンタイル値、中央値、25パーセンタイル値を示しています。

パーセンタイルは、データの分布における相対的な位置を示す指標です。例えば、75パーセンタイルとは、データ全体の75%がその値以下であることを意味します。

article_highdividend2_img01.png 足元では、エネルギー資源、金融(除く銀行)、自動車・輸送機など、景気と企業業績の連動性が相対的に高い業種(シクリカル業種)において配当利回りが高い銘柄が多い傾向がある一方で、小売、情報通信・サービスその他、食品など、景気と企業業績の連動性が相対的に低い業種(ディフェンシブ業種)において配当利回りが高い銘柄が少ない傾向があることが確認できます。

 過去についてはどうでしょうか。下記の表においては、同じくTOPIX500構成銘柄を対象として毎年6月末時点のTOPIX-17シリーズの各業種における個別銘柄の予想配当利回りの中央値の上位・下位3業種を時系列に示しています。

予想配当利回りの上位・下位業種

article_highdividend2_img02.png 足元のように自動車・輸送機、エネルギー資源、銀行、金融(除く銀行)などの業種が配当利回りの高い業種の中心になったのは2013年のアベノミクス以降であることがわかります。それ以前の期間においては、電力・ガスや医薬品などのディフェンシブ業種についても配当利回りが高い銘柄が多い業種として上位に存在していました。

 ここで野村高配当70指数のパフォーマンスを利用して、高配当運用のTOPIXに対するベータ値の推移(過去36ヶ月の月次リターンに基づいて計算)を確認してみます。下記のグラフが示す通り、高配当株で構築されたポートフォリオのベータ値は、市場局面と共に変化していることがわかります。2000年代前半においてはTOPIXとの連動性が低い傾向があった一方で、2013年頃から徐々にベータ値が上昇し、2019年から2021年頃にピークを迎え、足元では再び低下傾向にあります。ベータ値が株式市場との連動性であることを踏まえると、高配当株への投資が株式市場の上昇局面で優位(ベータ値>1)な傾向があるのか、下落局面で優位(ベータ値<1)な傾向があるのかについても市場局面によって変化していることがわかります。
ベータ値:ポートフォリオの収益率と株式市場全体の収益率の連動性を示す指標

article_highdividend2_img03.png 安定したインカムゲインを理由にディフェンシブな特性をもつという印象が強い高配当株への投資ですが、株式市場には様々な業種に属する高配当株が存在しており、銘柄がもつ特性も時間と共に変化しています。高配当株への投資による業種や特性値などのリスクをしっかりと把握しながら、それぞれの投資目的や市場見通しに合った形で高配当株への投資を活用していただきたいと考えています。

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信(証券コード:1577)
NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信(証券コード:2084)

(2025年6月27日作成)

野村アセットマネジメント

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