運用者の視点
未来を予測する最良の方法は過去を理解すること
2025年7月22日作成
高ROE企業投資の注意点
前回の記事では、「ROEを高い水準で維持できる企業は利益も資本も大きく増やすことができる」という話をしました。過去のROEは、企業のホームページなどで公開している有価証券報告書を開けば誰でも財務数値を取得し計算できます。しかし、単に過去にROEが高かった企業に投資すればよいというわけではありません。なぜなら、「過去」のROEが高かったとしても、「将来」も高いまま継続するとは限らないからです。
ここでは、「過去の高ROE銘柄群」のうち、「将来も高ROEを"持続"した銘柄群」と「将来は高ROEから"脱落"してしまった銘柄群」に分けて、長期的なリターン成績がどう違ったのかを比較してみましょう。
(試算)3つの銘柄群の累積パフォーマンス
(TOPIX時価総額上位200銘柄との相対比較)
期間:1989年6月末~2019年6月末、年次
※5年間のリターンを年率化し、累積したパフォーマンスを使用しています。
(出所)FactSetデータに基づき野村アセットマネジメント作成
このグラフは大型株(TOPIXの時価総額上位200銘柄)との相対パフォーマンスですから、0%より上を推移していればその銘柄群は母集団となる大型株にリターンで勝っていることを意味します。「過去の高ROE銘柄群」はかろうじてプラス圏を推移していますが、ほとんど0%付近を行ったり来たりしており、株式市場と同程度のリターンしか出ていなかったと分かります。一方、「高ROE持続銘柄群」はしっかりパフォーマンスの成績を伸ばし、「高ROE脱落銘柄群」はどんどん成績が悪くなっています。
ここでお伝えしたいのは、「過去の高ROEだけで企業を選んでも市場平均には勝てない。将来低ROEに転落する企業への投資を避け、将来もROEが高い企業を選ぶことが大事」と言うことです。長年株式投資を経験されている方からすれば当たり前かもしれませんが、株式市場では将来の予想が投資判断の重要な要素になります。
過去のROEこそ将来予想の手がかり
では過去のROEは意味がないのでしょうか?次のグラフは、「過去の高ROE銘柄群」のうち、「高ROE持続銘柄群」と「高ROE脱落銘柄群」がそれぞれ何銘柄あったかを示しています。
「高ROE持続銘柄群」と「高ROE脱落銘柄群」の銘柄数推移
期間:1989年6月末~2019年6月末、年次
(出所)野村アセットマネジメント作成
年によって異なりますが、概ね「高ROE持続銘柄群」が60~70社、「高ROE脱落銘柄群」が30~40社で推移しています。つまり、過去にROEが高かった企業は将来も高いままである確率が高いのです。前回の記事で取り上げたユニクロを運営するファーストリテイリングのように、過去の高ROE企業にはブランド力や差別化された商品、コスト競争力、卓越したマネジメントといった競争優位性が備わっているケースが多く、その強みが続けば将来のROEも高く持続する可能性が高いと考えられます。従って、「なぜこの会社のROEは過去高かったのか?強さの源泉は何なのか?それは将来も続くのか?」を考え、将来の売上や利益、ROEを予想することが重要になるのです。言い換えれば、「未来を予測する最良の方法は過去を理解すること」と言うことです。
地道に企業の過去を調べる調査スタイルは、世の中で新しくヒットする商品やサービスを予想するような華やかさはありません。しかし、不確かなヒット商品を当てるより、今すでに強い企業が今後も強いままでいるかを見極める方が打率は上がります。
野村アセットマネジメントでは、過去の高ROE銘柄を対象に、将来も高ROEが維持できるかどうかを検討する「成長株銘柄委員会」と呼ばれる会議体があります。将来5年にわたって高ROEを維持できると判断した銘柄は、委員会の「承認銘柄」というステータスを付与しています。当委員会は2009年に発足しましたが、「承認銘柄」のパフォーマンスはTOPIXを大幅に上回る実績を残しています。
成長株銘柄委員会承認銘柄の累積パフォーマンス
期間:2009年3月末~2025年6月末、月次
※「委員会 承認銘柄」、「TOPIX」ともに配当を除いたベースで計算しています。「委員会 承認銘柄」は等金額投資で月次リバランスしたものとして算出しています。
(出所)野村アセットマネジメント作成
NEXT FUNDS日本成長株アクティブ上場投信(2083)は高ROEを維持できる「優良企業」を中心に投資しておりますが、その中核を成しているのがこの「承認銘柄」です。
次回のコラムでは、ROEが将来も高く維持すると判断した優良企業の事例をご紹介する予定です。
記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(関連銘柄)NF・日本成長株アクティブETF(証券コード:2083)
(2025年7月22日作成)