ETF投資のツボ
2025年投資主体でみた国内ETF市場の現状
2025年12月22日作成
東証が毎年公表しているETFの受益者情報調査の2025年版(2025年7月時点)が公表された。2025年7月までの国内ETF残高は前年比で5兆4,772億円(6.2%)増の93兆7,807億円となり、調査開始以来16回連続で増加となった。今回はこの調査結果を元に、国内のETF市場の状況を概観する。
金融機関と個人が増加
投資主体別の残高を見ると、ほとんどのセクターで前年比増となった。中でも「信託銀行」が顕著で、前年比で4兆2,394億円(5.7%)増の78兆2,806億円となっている。信託銀行の残高増は日銀保有分が大部分を占めると考えられる。日銀は新規買い入れを停止し売却を始めているが、日本株価の上昇が保有評価額を押し上げ残高増に影響したものと推察される。主要セクターでは、その他金融機関が18.2%、個人が14.3%増加し、海外投資家はほぼ横ばいであった。
図表1:投資主体別の保有純資産総額(昨年比)
出所)東京証券取引所データより野村アセットマネジメント作成
信託銀行部分を除いた残高は、2020年から5年間で倍増して約15兆円に達した。全体の半分強を都銀・地銀等、生損保、その他の金融機関が保有している。
図表2:信託銀行を除いた投資主体別の保有純資産総額の推移

出所)東京証券取引所データより野村アセットマネジメント作成
受益者数は初めて200万人を突破し、前年から36万5,045人(21.1%)増の209万5,177人となった。このうち「個人・その他」が35万4,400人増加している。特に2023年以降、個人の増加が顕著であり、新NISAの開始が寄与しているものと考えられる。
図表3:「個人・その他」の受益者数の推移

出所)東京証券取引所データより野村アセットマネジメント作成
金融機関はREITと債券、個人は幅広く活用
資産カテゴリーごとの投資主体別純資産構成比を見ると、「日本株(市場別)」が「信託銀行」に集中しているのは、前述の通り日銀保有分の影響と考えられる。金融機関は、国内REITや債券関連ETFの保有が相対的に目立つ。一方、「個人・その他」は外国株やレバレッジ型・インバース型(債券以外)、コモディティの比率が高いが、全体としては幅広い資産を保有しており、個人投資家が目的に応じてETFを選択して活用している様子がうかがえる。昨年と比較すると、レバレッジ型が減少した一方、コモディティの伸びが顕著であった。これは、金価格の上昇を背景に、個人投資家が金ETFの保有を増やしたためと推測される。
図表4:資産カテゴリーごとの投資主体別純資産構成比
*資産カテゴリーごとの上位2主体をハイライト。
※「レバレッジ型・インバース型(債券)」カテゴリーは今回新設。今回から集計対象に加わった外国債券関連の指標に連動するレバレッジ型・インバース型ETFと、前回まで「レバレッジ型・インバース型(内国)」に含めていた国内債券関連指標のレバレッジ型・インバース型ETFが対象。
出所)東京証券取引所データより野村アセットマネジメント作成
図表5:「個人・その他」の資産カテゴリー別純資産構成比

出所)東京証券取引所データより野村アセットマネジメント作成
日銀は保有ETFの売却を発表したが、ETF市場は銘柄数、残高ともに規模拡大を続けている。調査結果からも機関投資家を中心に、個人投資家にもETFが投資手段として定着しつつあると見られる。東証はETF制度の改正に前向きであり、今後も多様なニーズに応じた商品開発によって更なる市場の発展が期待される。
以上
(2025年12月22日作成)

