ファイナンシャルプランナーが伝授する資産形成・資産活用としての株式投資(第23回)
ETFを利用した実践的な資産運用:株式や投資信託との比較【資産形成㉓】
本連載では「ファイナンシャルプランナーが伝授する資産形成・資産活用としての株式投資」ということで、人生におけるお金の収支に始まり、株式投資とはそもそもどういったことなのか、など基本的なことを中心にご説明してきました。
今回は、株式、ETF(上場投資信託)、非上場の投資信託という3つの金融商品のそれぞれの特徴をご説明します。
なお、以下では、ETF(上場投資信託)を「ETF」、非上場の投資信託を「投資信託」と表記させて頂きます。
株式、ETF、投資信託の特徴をまとめると次の表のようになるかと思います。
項目ごとに具体的にご説明していきます。
対象資産
株式の投資対象は文字通り株式ですが、ETFや投資信託の場合には、株式以外にも、債券や不動産(REIT)、金や原油などの商品(コモディティ)など、様々なアセットクラスに投資することが可能です。
もちろん株式や債券、不動産(REIT)などは、証券会社で現物資産(もしくは証券化された資産)を取引することは可能ですが、金や商品(コモディティ)などの現物取引は別の取引機関での口座開設が必要な場合もあり、そもそも個人では取引が難しい場合もあります。その点、ETFや投資信託であれば、様々な種類の資産に手軽に投資でき、一つの口座で管理することができます。
上場・取引価格
株式やETFは、証券取引所に上場されていますので、毎営業日、9時から15時まで(途中1時間の昼休みを挟む)の好きなタイミングで、成行(なりゆき)もしくは指値(さしね)で価格指定をしながら注文することができます。
一方、投資信託の場合、毎営業日1回算出される基準価額で取引します。同じ日であれば、買う人の値段も、売る人の値段もすべて同じ一つの値段で取引されるのです。
販売会社(取り扱い金融機関)
上場している株式やETFは証券会社のみで取り扱われており、いずれの証券会社でも取扱商品は同じです。一方、投資信託は証券会社の他にも、銀行や運用会社など、より幅広い金融機関で取り扱われていますが、販売会社によって取扱商品が異なります。
購入時、保有時、売却/解約時のコスト
株式とETFの購入時および売却時のコストは、売買手数料(仲介手数料)という形で各証券会社が定める手数料が発生します。最近ではネット証券等を中心に、一部売買手数料無料化の動きも広がっていますので、販売会社に確認するとよいでしょう。
一方、投資信託の場合、購入時は購入時手数料(購入金額の3%以内が一般的で、ノーロードと呼ばれるゼロのものもあります)、売却/解約時は、信託財産留保額(解約金額の0.2%程度)が控除されることがあります。
保有時については、株式の場合、基本的にコストは発生しません(以前は口座管理料という費用がかかっていましたが、現在はかからないところがほとんどです)。
一方、ETFや投資信託の場合、信託報酬などの運用コストが発生します。一般的にETFの方が投資信託と比べて保有時のコストは低い傾向にあります。
積立投資
資産形成をしていく方には、毎月のお給料などから一定金額もしくは一定割合を積み立てることをオススメしています。
株式やETFの場合、株式累積投資制度(株式るいとう)を提供している証券会社であれば、同様に金額指定(例えば、毎月1万円など)で積立を行うことが可能です。ただし、株式るいとう特有の手数料が発生することになりますので、手数料水準については確認しておきましょう。
投資信託の場合、多くの販売会社で積立設定をすることが可能です。
分散投資
以前(第13回「分散投資でリスクを下げる」)、特定の個別銘柄だけに投資をするのではなく、様々な業種、資産、国・地域といった観点で、幅広く分散していくことが大切だというお話をさせて頂きました。
そのような観点で考えると、現物の株式だけでの分散投資には限界があります。1銘柄5万円で購入できたとしても、100銘柄に分散しようとすれば500万円の資金が必要になります。また、海外の銘柄に投資しようとすると、外国の証券を取引するための口座を開設する必要があります。
一方、ETFや投資信託は、少額(最小100円~数万円程度)から、数百銘柄、数千銘柄といった形で幅広く分散投資を行うことができます。また、海外の銘柄も国内の株式を購入するのと同じ証券口座でできますので、リスク管理や手軽さという観点ではETFや投資信託を中心に利用していくのがよいでしょう。
信用取引
株式やETFの場合は、証券会社からお金を借りて購入したり、逆に証券を借りて売却したり、といった信用取引が可能です。一般的に資産形成していく際に信用取引は必ずしも必要ないと思いますが、少ない資金で多額の取引を行う、また将来的に株価が下がるという相場観に基づいて売りから取引を始めるということが可能になります。
その他
株式の場合には、株主総会における議決権や配当金を受ける権利、また銘柄によっては株主優待を受け取ることができます。株主総会は実際に参加までしないとしても、株主宛に送られてくる事業報告、決算報告などを確認しながら、投資対象企業の経営状況を確認するのは貴重な経験でしょう。また、配当金や株主優待(株主に対して贈られるその企業の製品やサービス、割引券など)がもらえるというのも楽しみの一つかと思います。ただし、株主優待目当ての投資ばかりになってしまうと、特定の銘柄にリスクが集中してしまう可能性もありますので、第14回「コア・サテライト戦略でバランスの良い運用を」でご説明しましたが、コア・サテライト戦略で、個別株式への投資は適切な割合を維持していくことが重要だと考えています。
一方、ETFや投資信託は、決算毎に分配金が支払われます(分配金がゼロのものもあります)。ETFの場合、決算期間中に発生した利子や配当など、いわゆるインカムゲインから信託報酬などの費用を控除した全額が分配されます。投資信託の場合、インカムゲインだけではなくキャピタルゲイン(値上がり益)からも分配金が支払われることがありますので、分配金の内訳を確認することも必要でしょう。
以上、今回は、株式、ETF、投資信託の特徴についてご説明させて頂きました。株式投資を楽しみたい、という方もいれば、できるだけ手間をかけずに資産形成できればよい、という方もいらっしゃるかと思います。
それぞれの商品には今回ご説明したような特徴がありますので、ご自身のスタイルに合った商品を選んで、必要であれば組み合わせながら活用して頂ければと思います。
次回もお楽しみに。
(2020年5月作成)