負けないためのETF投資戦略

不調が続く新興国株式【ETF投資戦略㊸】

2023年10月27日作成

新興国株については、本コラム第26回「新興国株の変化」(2022年5月)に取り上げた。今回は第26回からの変化について簡単に分析してみたい。

まず、図1に新興国株価と先進国株価(今回は日本を除く、以下では先進国株)の相対推移を示した。

図1 新興国株と先進国株の相対推移(期間:1987年12月末~2023年10月)

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注)先進国株(除く日本)はMSCI KOKUSAI指数、新興国株はMSCI EM指数。1987年末を100として、新興国株/先進国株×100で表示。直近は10月13日。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。

今回は、第26回と少し定義を変えて、先進国株から日本株を除いたMSCI KOKUSAI指数を利用した。外国株の中での先進国と新興国の相対関係をみるのが狙いである。傾向は変わらず、2010年9月を境に、新興国株は先進国株のパフォーマンスに劣後している。

次に、新興国株の中で時価総額上位5か国の構成比の変化を示した。

図2 新興国株時価総額上位5か国の時価総額構成比の変化

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出所)MSCI EM指数のファクトシートよりウエルス・スクエア作成。

第26回で分析した2022年4月時点と比較して、中国株の構成比はわずかに低下した。インド株の構成比増加基調には変わりないが、2020年10月から2022年4月にかけての変化に比べると、さほど大きな変化はない。そこで図3に先進国株に対する新興国株上位5か国の相対パフォーマンスを示した。

図3 新興国時価総額上位5か国の先進国株に対する相対パフォーマンス
(期間:1998年12月末~2023年10月)

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注)1998年12月末を100。各MSCI指数をMSCI KOKUSAI指数で除して100をかけて算出。直近は10月13日。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。

2000年代の新興国株ブームによる牽引はブラジル、インド、そして韓国だった。その後の相対的なアンダーパフォームは、ブラジルやインドが大きかった。そして足元ではインドが少しアウトパフォームしているものの、中国、韓国、台湾は冴えない状態が続いている。

次に通貨との関係をみておこう。新興国株はドル高の時には、相対的にパフォーマンスが劣後する。図4に新興国株とドル指数の関係を示した。

図4 新興国株とドル指数の関係(期間:1987年12月末~2023年10月)

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注)新興国株、先進国株の定義は図1と同じ。1987年12月末を100とした。ドル指数はICE(Intercontinental Exchange)米国ドル指数。直近は10月13日。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。


右軸のドル指数は逆さ目盛りで表示した。値が大きくなるほどドルが強くなることを示している。足元でも米金利の上昇が続いているためドル安にはなりづらく、結果的に新興国株も先進国株のパフォーマンスに劣後している。2000年代の新興国株ブームも資源高という要因もあったが、ドル安であった。従って、新興国株が先進国株をアウトパフォームするには米国の金融緩和が見えてくることが必要だろう。

ところで、先進国株は米国株が70%以上占めるのに対して、新興国株はトップの中国でさえ30%前後であり、上位5か国で約8割と比較的フラットな構成比になっているのが特徴である。このため一定の仮定をおけば、新興国の方が分散効果(リスクの低減)は生じやすい。米国に集中している先進国株のリスクを中長期で分散するのが新興国株の役割となろう。

ETFでの株式ポートフォリオ構築では、全世界株の活用や日本株・先進国株・新興国株の組み合わせ等、様々な方法がある。特に日本株・先進国株・新興国株と区分して投資する場合には、今回分析したような特性を活かした配分変更が考えられよう。また、来年1月より新NISA制度も始まる。積み立て方法を工夫することでより効果が生じると考えられよう。

<指数の著作権等について>
ICE米国ドル指数は、ICE Data Indices, LLCまたはその関連会社(「ICEデータ」)の登録商標です。

(2023年10月27日作成)

ウエルス・スクエア
チーフ・アセットアロケーター

竹崎 竜二

RYUJI TAKEZAKI

1999年から野村アセットマネジメントにて、グローバルな資産配分や銘柄選択の投資手法、新商品の開発等に従事。2016年ウエルス・スクエアを立ち上げる。現在、チーフ・アセットアロケーターとして、ファンドラップ運用等に従事。著書多数。

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