負けないためのETF投資戦略

NASDAQ100を考える【ETF投資戦略㉗】

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世界的なインフレ拡大に伴い、米国金融当局を筆頭に各国は金融の引き締めに動いている。これにより、それまで好調だったNASDAQ100指数も、今年に入り軟調な傾向が続いている。今回は、このNASDAQ100指数の状況について、簡単な分析を行っておこう。

分析を進めるにあたり、まず、NASDAQ100とS&P500の業種構成比を確認してみよう。図1にそれを示した。


図1 NASDAQ100とS&P500の業種構成比(2022年5月末現在)
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出所)S&P500はS&P Dow Jones Indices、NASDAQ100はBloombergよりウエルス・スクエア作成。

これをみると、NASDAQ100は情報技術、一般消費財、コミュ・サービス(コミュニケーション・サービス)が上位3業種である。一方、S&P500は情報技術、ヘルスケア、金融が上位3業種である。こうした業種の違いが、パフォーマンスの違いをもたらすと考えられる。ちなみに代表銘柄では、情報技術ではアップル、マイクロソフト、一般消費財ではアマゾン、テスラ、コミュニケーション・サービスではアルファベット(Googleの持ち株会社)、メタが挙げられる。

次に、図2にNASDAQ100とS&P500の推移を示した。


図2 累積投資収益の推移(期間:2017年5月末~2022年6月16日、月次)
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注)2017年5月末を100として表示。直近は6月16日。「複製」は、NASDAQ100指数の構成ウエイトのうち、図1で見た上位3業種をS&P500の指数を用いて複製を行ったもの。実際の指数のリターンとのズレ(残差)が最小になるようなウエイトを求めた。業種指数はS&P500のGICS分類によるものを使用。2017年6月~2022年5月までの月次リターンで行った。通貨は米ドル。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。


期間途中まではNASDAQ100がS&P500をアウトパフォームしているが、今年に入り、アンダーパフォームしていることが確認できる。図に「複製」という凡例を示した。これはS&P500の業種指数のうち、NASDAQ100の構成ウエイト上位3業種(図1参照)でNASDAQ100の動きを複製してみたものである。

NASDAQ100とこの業種指数は母集団が異なるが、おおよそ連動している。複製によるウエイトは、情報技術が66%、一般消費財が26%、コミュニケーション・サービスが8%であった。実際のNASDAQ100の情報技術のウエイトは2022年5月末で図1でみるように50%強である。業種を絞った分だけ、やや傾斜がかかったものとなっているが、NASDAQ100のパフォーマンスはほぼこの3業種のパフォーマンスで説明できそうである。

次に、図3に、このNASDAQ100及びこれら3業種の対S&P500相対推移を示した。


図3 対S&P500相対推移(期間:2017年5月末~2022年6月16日、月次)
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注)2017年5月末を100としている。業種指数はS&P500のGICS分類によるものを使用。コミュ・サービスは、コミュニケーション・サービス。通貨は米ドル。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。


NASDAQ100に比べて、情報技術が更にアウトパフォームしている一方、残りの一般消費財やコミュニケーション・サービスはアンダーパフォームしている。今年に入ってからは対S&P500でこれら3業種はアンダーパフォームしているが、情報技術が相対的下落率は小さいため、高止まりしているように見えている。

では、バリュエーションはどうか?図4にPERの推移を示してみた。また、密接な関係がある金利(10年金利)も右軸に逆さ目盛りで示した。


図4 各指数のPERと10年金利の推移(期間:2017年5月末~2022年6月16日、月次)
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注)業種指数はS&P500のGICS分類によるものを使用。コミュ・サービスは、コミュニケーション・サービス。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。


NASDAQ100は歴史的にS&P500よりPERが高い。この期間では平均して1.23倍の高さである。それは成長性の高さを示しているとも言える。10年金利との関係でいえば、2019年からの金利低下局面で、この一般消費財が最も反応した。その分、金利が上昇する中で調整が大きくなったと言える。今後のNASDAQ100を占う上で注目しておきたい。

また、本コラムの第24回「原油高騰と業種株価」でも触れたが、世界的なインフレに、ロシアのウクライナ侵攻が加わり、エネルギー価格上昇に拍車がかかっている。業種の株価も、図5にみるように、リターン・リバーサル状況となっている。NASDAQ100もこの影響下にあると見てよいだろう。


図5 期間別業種別リターン
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注)縦軸の22年6月は16日までとした。

出所)Bloombergよりウエルス・スクエア作成。


それだけに、NASDAQ100の相対的なパフォーマンスの改善には、インフレの落ち着きが見え始める必要があろう。また、エネルギーセクターへの一極集中が、次のリターン・リバーサルを生むエネルギーを蓄積しているとは言え、それが起こるまでにはもう少し時間がかかりそうである。


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(2022年6月作成)

ウエルス・スクエア
チーフ・アセットアロケーター

竹崎 竜二

RYUJI TAKEZAKI

1999年から野村アセットマネジメントにて、グローバルな資産配分や銘柄選択の投資手法、新商品の開発等に従事。2016年ウエルス・スクエアを立ち上げる。現在、チーフ・アセットアロケーターとして、ファンドラップ運用等に従事。著書多数。

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