ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

コロナ・パンデミックは終わったのか?

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ワクチン接種が大きく普及

気づけば、わが国のワクチン接種率は主要先進国中でトップクラス

図表1は、10月25日時点で確認された新型コロナウイルスのワクチン接種状況です(1回以上接種者の全人口比)。1位のUAEは96%と、国民のほぼ全員が少なくとも1回の接種を終えており、80%を超えてきた国々も増えてきました。そして、ワクチン接種に出遅れたわが国も、気づけば主要先進国中ではトップクラスで、英米独などを大きく上回ってきました。こうしたワクチン普及の効果なのか、わが国でも新型コロナウイルスの新規感染者数が激減し、パンデミックが終わりつつあるようにも見えます。

一方、世界全体を見るために2020年時点の人口大国トップ10を見ると、➀中国76%、➁インド52%、③米国66%、④インドネシア41%、⑤パキスタン30%、⑥ブラジル74%、⑦ナイジェリア3%、⑧バングラディシュ24%、⑨ロシア36%、⑩メキシコ54%となっており、人口加重した平均値は56%となり、ようやく半分を超えた程度です。

ワクチン普及には更に問題があり、「ワクチン接種の意思がない(接種したくない)」という人々が一定割合いるようで、Our World in Dataによれば、米国やドイツでは25~30%の人々がワクチン接種を拒否しており、集団免疫獲得のために大きな壁になっているようです。


[図表1]  国・地域ごとの新型コロナウイルス・ワクチン接種率

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時点:2021年10月25日
1回以上のワクチン接種を終えた人の全人口比

(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

国・地域で大きく異なるコロナの感染状況

わが国をはじめとしてアジア地域の感染は終息方向、一方、東欧や旧ソ連地域では再拡大

図表2は、国や地域ごとの新型コロナウイルスの新規感染者数と死者数の推移です。わが国やアジアは、他地域との比較では過去のピークも少なかったことに加え、足元では新規感染者数と死者数が減少しており、コロナは終息に向かっているように見えます。

一方、ワクチン普及が先行していた英国は今夏初めにすべての行動規制を解除しましたが、その後に急速に感染が再拡大し、今に至るまでかなりの高水準で高止まりしています。但し、新規感染者数は今年初めのピークよりやや少なく、死者数はピークの数分の一に留まっていることから、規制の再強化を行なう予定はないようです。とはいえ、少ないという死者数も、人口対比で見たわが国のピークの2倍の水準ですので、本当に大丈夫なのか?と思ってしまいます。

更に気になるのが東欧(旧ソ連地域を含む)です。1日当たり新規感染者数は今年最高を更新中で、死者数も今春のピークに迫る勢いです。一足先に冬の季節を迎えている地域ですので、わが国も含めた今後の北半球地域の行方を占う意味での先行指標になるかもしれないので、要注目と考えています。なお、この地域のワクチン接種率は単純平均で50%強とそれほど高くありません。

全体として考えると、わが国やアジアの情勢がかなりの優等生であり、世界全体を見渡すと、まだまだコロナに悩まされている地域は多いようであり、コロナ・パンデミックが終わったとは言い難いと思われます。


[図表2]  新型コロナウイルスの新規感染者数と死者数の推移

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期間:2021年1月1日~2021年10月25日、日次
1日当たり新規感染者数と死者数、7日移動平均、人口100万人当たり
東欧:ブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、ウクライナの単純平均

(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

ハイテク生産拠点のコロナは沈静化

供給制約は解消の方向か?

図表3は、マレーシアとベトナム、および、アジア全体の新型コロナウイルス新規感染者数と死者数の推移です。この2か国を取り上げた理由は、言うまでもなく、現在不足している半導体や電子部品、自動車部品の生産拠点であるためです。

アジア全体で見ればコロナ感染者はかなり少ない地域なのですが、図で見るようにマレーシアの感染状況はアジア全体とは比較にならないほど厳しいものだったことが分かります。むしろ、図表2で見た感染が激しいとされる英国並みだったようであり、アジアではインドなどと並んで最悪の状況だったと考えています。ベトナムは2020年全期間と今年7月頃まではコロナを完全に封じ込めていたのですが、今夏に感染が拡大してしまいました。人口対比でみると、わが国と感染状況は同じで、死者数はずっと多かったことが分かります。

しかし、ロックダウンやワクチン接種の効果もあってか、この2国のパンデミックもどうやら沈静化に向かっている様です。ワクチン接種動向を見ると、7月初めはマレーシア19%台、ベトナム3%台でしたが、足元では、それぞれ77%台と52%台へ急速に接種が進んでいます。政府による行動規制も段階的に解除されており、10月からは製造工場などの社会にとって重要な部門は正常化しているようです。遅れていた半導体や部品等の生産が進むことで、供給制約に悩まされてきた自動車、電機、機械産業などには朗報となると期待しています。

コロナ・パンデミックの終息はまだ先ですが、一歩一歩、解消に向かっていることは確かなようです。


[図表3]  マレーシアとベトナム、および、アジア全体の新規感染者数と死者数の推移

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期間:2021年1月1日~2021年10月25日、日次
1日当たり新規感染者数と死者数、7日移動平均、人口100万人当たり

(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1622)
NEXT FUNDS 機械(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1624)
NEXT FUNDS 電機・精密(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1625)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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