ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

VIX指数からみて、米国株・日本株の買い場は近いのか?

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VIX指数は久しぶりに35を突破

VIX指数の高騰は買い場のサインか

相場判断の指標として、前回はテクニカル指標"RSI"を紹介しましたが、今回は"VIX指数"を紹介します。

米国株式市場において、「投資家心理がどれくらい冷え込んでいるか」を表す指標に"VIX指数"というものがあります(図表1参照)。この指数は通常は10~20程度の間を推移していますが、投資家心理が冷え込む事件が勃発すると、数値が飛び跳ねます。小さなショックであれば30程度までで収まりますが、稀に30を超えて大きく上昇することがあり、今回は3月7日に35を突破してきました。

直近、VIX指数が飛び跳ねたのは2年前の「コロナ・ショック(2020年3月)」時で、何と、60を超えていました。過去のVIX指数のピーク値を振り返ると、2011年の「欧州債務危機」、2010年の「ギリシャ・ショック」、2008-9年の「リーマン・ショック」、2002年の「アルゼンチン経済危機」、2001年の「9.11世界同時多発テロ」、1990年代後半の「ロシア金融危機、アジア通貨危機」、そして、1990年の「湾岸戦争」などの際に大きく飛び跳ねています。

VIX指数の興味深い点は、上述の飛び跳ねたタイミングは、振り返ってみれば、どれも「絶好の買い場」だった?ことです。ウクライナの惨状を思うと心苦しさはありますが、VIX指数がピークを打つタイミングを見極めながら、「買い場」であるかもしれない?という目線を持つことが必要であると考えています。


[図表1]  VIX指数とS&P500株価指数の推移

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期間:1990年1月5日~2022年3月8日、週次
※VIX指数(CBOE Volatility Index、恐怖指数):米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500株価指数を対象とするオプション取引のボラティリティ(変動率)を元に算出、公表している指数。将来の相場に対する投資家心理を反映する指数とされており、一般的にVIXの数値が高いほど投資家の先行き不透明感も強いとされる。通常は、10から20の間で推移することが多いが、相場の先行きに大きな不安が生じた時には、この数値が大きく上昇するという傾向がある。

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

米国株式はフェアバリューへ

米S&P500株価指数は直近高値から▲12.5%下落して「調整局面」に

「買い場」到来かもしれない米国株式は、S&P500株価指数でみると直近高値から▲12.5%下落しており(3月8日現在)、「調整局面」入りしたと見られています。図表2はS&P500株価指数とその割安判断指標であるPER(株価収益率、株価÷利益)の推移ですが、昨年まではPERがかなりの割高感を示していましたが、今年に入り、過去平均に収れんしてきています。

S&P500のPERは、足元で18.6倍となっており、図表2の期間平均値(18.3倍)とほぼ同水準となりました。コロナショック直後の30倍は利益が落ち込んだ影響なので一種の異常値ですが、昨年は業績は回復しており、昨秋の25倍程度は株価高騰が原因であるため、かなりの割高感がありました。しかし、足元ではかなり落ち着いた水準に低下しており、概ねフェアバリューになったと考えています。

昨今のエネルギー価格高騰で経済活動がややスローダウンしたり、企業業績が多少悪化するリスクがありますが、利益が落ち込んだ時のPERは高めに出る傾向があるので(コロナショック直後のように)、基本は現状の利益予想で見たPERで割安性を判断することにしています。


[図表2]  S&P500株価指数とPERの推移

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期間:2008年1月4日~2022年3月8日、週次
PER平均値:グラフ期間の平均値

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

日本株式はかなりの調整局面にある

TOPIX(東証株価指数)は直近高値から▲16%下落して大幅な「調整局面」に

日本株式市場(TOPIX)は米国株式市場以上に割安感が高まっています。TOPIXは直近高値から▲16%下落しており(3月8日現在)、S&P500以上に「調整局面」にどっぷりつかっていると見られています。図表3はTOPIXとPERの推移ですが、コロナショック直後の業績が悪化した際の異常値でも25倍超え程度ですし、業績が回復した昨年は15倍程度と割高感はありませんでした。そして、今年に入り、過去平均も下回って、かなりの割安感が出てきました。

TOPIXのPERは、足元で12.3倍となっており、図表3の中のアベノミクス相場の期間平均値(15.9倍)から見ても大幅に割安な水準となっています。昨年秋でも14~15倍程度ともともと過去平均並みのフェアバリューでしたが、今般のウクライナ騒動でさらに割安になりました。

米国株式同様に、昨今のエネルギー価格高騰で経済活動がややスローダウンしたり、企業業績が多少悪化するリスクがありますが、利益が落ち込んだ時のPERは高めに出る傾向があるので、よほど業績が壊滅的な状況にでも陥らない限りは、現状の利益予想で見たPERで十分に割安性を判断することができると考えています。十分に割安ですので、リバウンドはきっかけ待ちであると考えています。


[図表3]  TOPIXの株価とPERの推移

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期間:2008年1月4日~2022年3月8日、週次
PER平均値:アベノミクス相場以降(2013年1月~)の期間の平均値

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成


<関連銘柄>
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(証券コード:1306)
NEXT FUNDS S&P500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2633)


<当資料で使用した指数の著作権等について>
●「S&P500株価指数」は、S&P Dow Jones Indices LLCまたはその関連会社(「SPDJI」)の商品です。当該指数に関する一切の知的財産権その他一切の権利はS&P Dow Jones Indices LLCまたはその関連会社(「SPDJI」)に帰属しております。
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(2022年3月作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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