ETF投資のツボ

コロナショック以降の米国株3指数

2023年3月10日作成

米国株に投資する際にまず頭に浮かぶ代表的な指数といえばS&P500、NASDAQ-100、NYダウの3種類ではないでしょうか。日々のニュースでもよく取り上げられるこれらの指数はそれぞれ違った特徴を持っています。ちょうどコロナショックから約3年が経ちましたが、その間のこれら3指数の値動きはそれぞれの特徴が非常によく表れたものとなりました。

本稿では、コロナショック以降の米国株式市場を振り返りながら、この3つの指数の特徴について見ていきたいと思います。

どれもが違った特徴をもつ3指数

S&P500、NASDAQ-100、NYダウの3指数はそれぞれが異なった特徴を持っています。詳しくはhttps://nextfunds.jp/semi/article69.htmlをご覧いただければと思いますが、簡単にまとめると、S&P500は米国の代表500銘柄の時価総額加重指数、NASDAQ-100は米国のナスダックに上場する金融セクター以外の100銘柄の時価総額加重指数で、情報技術やコミュニケーションセクターのウェイトがかなり高くなっている指数です。一方でNYダウは米国の優良企業30銘柄の指数ですが、株価加重指数です。結果、ヘルスケア、金融、資本財などのウェイトが高い指数となっています。

ほぼ同等のパフォーマンスとなった3年間

<図1:過去3年間のパフォーマンス(2020年2月末~2023年2月末)>

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2020年2月末を100として指数化、米ドルベース、各指数はトータルリターン
出所:Bloombergのデータをもとに野村アセットマネジメント作成

図1はこれら3指数のコロナショックの直前である2020年2月末から3年間のパフォーマンスを見たものです。この間は、コロナショックによる大幅な市場の下落、その後の金融緩和による上昇相場、その後のインフレーションと金融引き締めによる下落相場とまさに市場サイクルが一周したようなイメージかもしれません。

この3年間の前半はNASDAQ-100が大きな上昇を見せ、ほかの2つの指数を大きくアウトパフォームしましたが、その後にその上昇幅を打ち消すような下落となり、結果として3指数のパフォーマンスはほぼ同じぐらいとなっているのは興味深い事実です。

NYダウはパフォーマンスが悪かったのか?

<図2:過去1年間のパフォーマンス(2022年2月末~2023年2月末)>

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2022年2月末を100として指数化、米ドルベース、各指数はトータルリターン

出所:Bloombergのデータをもとに野村アセットマネジメント作成

図1を見るとNASDAQ-100の前半のパフォーマンスが非常に目立ちますが、この期間の最後の1年間だけを切り出したのが図2です。

いかがでしょう。大分印象が変わるのではないでしょうか。金利上昇によって情報技術やコミュニケーションに代表されるグロース株のパフォーマンスがさえない中で、NASDAQ-100はこの期間はかなり下落しました。その一方で、NYダウは金融やヘルスケアなど金利上昇やインフレーションに強いと考えられる業種のウェイトが高く、下落幅はかなり抑えられていました。

運用効率で見るとS&P500

過去3年間ではほとんど同等のパフォーマンスとなった3指数ですが、リスクの観点を入れるとまた違った見方をすることができます。

<図3:リスクとリターン>

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期間:2020年2月末~2023年2月末
米ドルベース、各指数はトータルリターン、日次リターンを用いて算出し年率換算

出所:Bloombergのデータをもとに野村アセットマネジメント作成

図3はそれぞれの指数のリターンとリスク、また運用効率を図るためにリターンをリスクで割った数値を示したものです。

これを見ると、NASDAQ-100はリターンもリスクも高く、NYダウはその反対ということがわかります。そして、そのちょうど中間なのがS&P500となっています。

ここで運用効率を見てみると、面白いことにS&P500が最も高い数値となっています。前半はNASDAQ-100が、後半はNYダウがアウトパフォームするような展開ではありましたが、結局は時価総額加重指数であったS&P500の運用効率が最も高くなっています。これはまるで教科書に書かれていることがそのまま表れているような結果です。(注:一定の仮定の下では、理論的には時価総額加重が最も効率がいい運用手法となるということが一般的に知られています。参考:野村證券 証券用語解説集(https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/capm.html))

指数の特徴を理解することが大切

インデックス運用、すなわち指数に連動することを目指した運用は、低コストで効率的な運用ができる手法として日本でもかなり一般的になってきたと思います。しかし、指数連動ならどれも一緒というわけではありません。米国の代表的な3つの指数をみても、その構成銘柄やウェイト付けが異なり、結果としてそれぞれ違った特徴を有しています。

ボラティリティの高さを覚悟して情報技術やコミュニケーションなどのグロース株中心に投資して大きなリターンを狙いたいのか、ヘルスケアや金融などのウェイトが高めの指数でボラティリティを抑えて運用したいのか、大型株の時価総額加重指数で運用効率を重視したいのかなど、目的に応じた指数の選択が何よりも重要です。

(2023年3月10日作成)

野村アセットマネジメント
ETF事業戦略部部長

渡邊 雅史

Masafumi Watanabe

野村アセットマネジメントのETF事業を担当するETF事業戦略部を統括。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』、『ロボアドバイザーの資産運用革命』(ともに共著、きんざい)、訳書に『ETFハンドブック』(きんざい)がある。

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