ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

金利上昇や増配が後押しする銀行株の魅力は?

2025年12月3日作成

対TOPIX相対株価は10年国債利回りの上昇に連動して上昇してきた

日本の長期金利が上昇しています。11月20日には、10年国債利回りが一時1.8%台まで上昇、約17年半ぶりの高さとなりました。一般的に金利上昇は株式の相対的な割安感を損なう傾向があることから、株式市場にとってはネガティブに捉えられがちです。但し、銀行株にとっては違う視点もあるようです。

図表1は、TOPIX-17銀行指数の対TOPIX(東証株価指数)の相対株価と、日本の10年国債利回りの推移です。2022年頃から金利上昇を追いかけるように相対株価も上昇し始めており、長期金利の上昇は銀行株にポジティブに働いている様子が分かります。

銀行の主な収益源が利ザヤ(貸出金利-調達金利)であり、貸出金利が長期金利に連動しやすい一方、調達は預金中心のために調達金利は政策金利に連動しやすく、足元のように政策金利の引き上げペースを上回って長期金利が上昇する局面では、利ザヤが拡大しやすく、銀行収益を押し上げるということを期待しているようです。

[図表1] TOPIX-17銀行指数の対TOPIX相対株価と日本10年国債利回りの推移

TOPIX-17銀行指数の対TOPIX相対株価と日本10年国債利回りの推移

期間:2016年1月8日~2025年11月21日、週次
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

3メガバンクは株主還元に積極姿勢を見せている

長期金利上昇→利ザヤ拡大→業績改善という流れを受けてか、足元で3メガバンク(みずほホールディングス(みずほHD)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG))は株主還元に積極姿勢を見せています。

図表2は3メガバンクの2024年度と25年度の配当計画(および実績)の推移です。2024年度については、3メガバンク共に期初計画→中間決算時修正計画→期末実績と配当予想(および実績)を上方修正してきました。25年度についても、MUFGとSMFGについては、期初計画→中間決算時修正計画で上方修正しています。もちろん、24年度→25年度にかけては3メガバンク共に増配基調です。

自己株式取得についても、3メガバンク合計で今年度1兆円超(前年度比+60%)を計画するなど、株主還元に積極姿勢を見せています。株主還元の強化は株価にプラス寄与するのが一般的であり、今後のパフォーマンスに期待できると考えます。

[図表2] 3メガバンクの2024年度、25年度の配当予想(および実績)の推移

3メガバンクの2024年度、25年度の配当予想(および実績)の推移

期間:2024年度(期初計画、中間決算時修正計画、期末実績)、25年度(期初計画、中間決算時修正計画)
(出所)みずほHD、MUFG、SMFGの決算資料を基に野村アセットマネジメント作成

銀行指数の業績は拡大基調

株価を押し上げる最大の要素である企業業績も順調に拡大しています。

図表3は、TOPIX-17銀行指数と同・12ヵ月先予想EPS(一株当たり利益)の推移です。業績(予想EPS)拡大に連動して株価も上昇しています。1年後の12ヵ月先予想EPSも足元よりも増益予想となっており、今後の株価上昇に期待が持てます。予想EPSのグラフの形状的には1年後に向けて増益ペースが減速するように見える点はやや気がかりですが、3メガバンクは今中間決算時に通期業績予想を上方修正しており、今後も日本の景気が順調に拡大し、日銀の利上げが再開され、金利上昇が続けば、予想EPSは上方修正されることも期待できるでしょう。

長期金利の上昇、株主還元の積極化、増益基調と、好条件がそろっている銀行株のパフォーマンスは今後も期待できると考えます。

[図表3] TOPIX-17銀行指数と同12ヵ月先予想EPSの推移

TOPIX-17銀行指数と同12ヵ月先予想EPSの推移

期間:2016年1月8日~2025年11月21日、週次
〇は1年後の12ヵ月先予想EPS(11月21日時点のBloomberg予想)
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 東証銀行業株価指数連動型上場投信(証券コード:1615)
NEXT FUNDS 銀行(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1631)

(2025年12月3日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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