深掘りETF⑭
ETFのコストを深掘り!設定・解約費用はなぜ必要?➁【深掘りETF⑭】
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「ETFのコストを深掘り!設定・解約費用はなぜ必要?①」で、一般の投資家の皆様がETFを売買する際には、設定・解約費用を負担することはないとお伝えしました。この理由を理解するためには、ETFとETF以外の投資信託の違いを知る必要があります。
- ETFには、流通市場と発行市場があり、流通市場では設定・解約は行われない
- 設定・解約費用が発生するのは、金銭型ETFのみ
- ETFでは一般の投資家の皆様が、設定・解約費用を負担することはない
ETFと投資信託の違い
ETFとETF以外の投資信託の違いはいくつかありますが、設定・解約費用の負担の違いを理解するには、ETFの2つの市場の概念が重要です。「ETFはどう作られるの?ETFの仕組み」でも説明していますが、ETFには一般の投資家の皆様が取引所で売買する流通市場と機関投資家等の大口投資家だけが扱える発行市場と呼ばれる2つの市場があります。
<発行市場と流通市場>
(出所)野村アセットマネジメント作成
それぞれの市場の詳細な説明については、上記の記事をご覧いただければと思いますが、ポイントは一般の投資家の皆様がETFを売買する市場は流通市場であり、この流通市場ではETFの設定・解約は行われていないということです。
ETFの設定・解約が行われているのは発行市場になります。つまり流通市場では発行市場で誰かがすでに設定したETFを取引所内で、売買しているため、一般の投資家の皆様が設定・解約費用を負担することはないのです。したがって設定・解約費用を設けているETFは、基準価額やファンドリターンが棄損することを防ぎつつ、設定・解約費用を設けていない類似のETF(例えばS&P500指数に連動するETF)と同程度の価格(売買スプレッド)で取引することが可能です。
設定・解約費用が発生するのは金銭拠出型ETF
これまで設定・解約費用の話をしてきましたが、ETFで設定・解約費用が発生するのは基本的には金銭拠出型ETFの場合です。ETFには、主に現物拠出型ETFと金銭拠出型ETFがあります。
現物拠出型ETF
- ETFを設定する際に、運用会社が事前に指定した指数に連動する現物株式等を集めたポートフォリオ(株式等バスケット)を指定参加者が拠出し、それと引き換えにETFが発行される。
- 株式等を市場から調達してくるのは、証券会社等の指定参加者。
- 現物拠出型はETFならではの仕組みで、投資対象が日本株式とJ-REITは、現物拠出型が採用されるケースが多い。
- 現物のバスケットそのものがETFに拠出され、取引コストはETFに拠出される前段階の現物のバスケット調達時に発生することから、設定・解約費用は一般的に徴求されない。
金銭拠出型ETF
- 証券会社等指定参加者が金銭を拠出し、それをもとに運用会社が市場から株式等を調達し、ETFが発行される。
- 商品としては、外国株式等に投資するものやレバレッジ・インバース型のETFなど
- ETF以外の一般の投資信託は、金銭拠出型と同等の仕組み
- 金銭での拠出を受けてETF自身が株式等を買付あるいは売却することから、ファンド内で取引コストが発生するため、設定・解約費用を徴求するケースがある。
<現物拠出型ETFと金銭拠出型ETF>
(出所)野村アセットマネジメント作成
設定・解約費用の確認方法
設定・解約費用についてはファンドが開示する目論見書等で確認することが可能です。以下は弊社のNEXT FUNDS S&P500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信の例です。この例ではファンドの費用のうち、その他の費用の部分が設定費用、信託財産留保額が解約費用に該当し、それぞれ基準価額に対し0.05%以内の水準となっています。
また、「投資家が直接的に負担する費用」という記載がありますが、これは発行市場における話であり、一般の投資家の皆様がETFを売買する流通市場においては負担することはありません(ETF以外の一般の投資信託においては、一般の投資家の皆様が負担することになります)。
非常にわかりづらい記載になっているのですが、上記で説明した通り、ETF固有の性質である2つの市場を有することがその要因になります。
例えば、長期保有を前提にETFへ投資する場合は、設定・解約費用の有無について目論見書等で確認するとよいでしょう。
<設定・解約費用の交付目論見書における掲載例>
(出所)NEXT FUNDS S&P500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2633)の交付目論見書P9
※2023/3時点
(2023年4月作成)