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ETFの上場廃止(繰上償還)とは?【深堀りETF⑱】

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株や債券等複数の銘柄に分散投資されている投資信託でありながら、個別株同様に上場されリアルタイムで取引できる・・・そんな優れた商品性を持つETFですが、何らかの事情により、上場廃止(繰上償還)となることがあります。今回は、ETFが上場廃止(繰上償還)になった場合の流れや投資家がどのように対応すればよいのかについてご説明します。

ETFの上場廃止(繰上償還)とは?

ETFは、株式のように金融商品取引所(以下、「取引所」)に上場しているため、株式と同様に上場廃止となることがあります。ETFの上場廃止は、ETFの償還が決定し、その後取引所において上場廃止される場合とETFがすべての取引所で上場廃止となり償還される場合があります。

ETFの償還とは、運用会社がETFの運用をやめ、信託財産を換金し、ETFを保有していた投資家にお金を返還するまでの一連の流れのことを指します。日本国内に上場しているETFの信託期間(運用期間)は基本的に無期限となっているため、「繰上償還」または「早期償還」ともいいます。

ETFが償還される理由は主に次の3つが挙げられます。

  1. 受益権の口数が、あらかじめ定めた口数を下回った場合
    ETFの受益権口数(発行済み口数)が規定の基準を下回ると、償還となることがあらかじめ定められている場合があります。受益権口数が減るということは、純資産総額の減少につながるため、対象指数に連動した運用を行うことが困難になることが主な理由です。この基準とされる口数はファンドにより異なり、2万口というETFもあれば300万口というETFもあります。目論見書にて確認できます。
  2. 対象指数が廃止された場合
    ETFが連動対象としている指数が廃止された場合は、償還となります。
  3. 上場廃止基準に抵触した場合
    ETFが上場廃止基準に抵触し、すべての取引所で上場廃止となると償還になります。東京証券取引所において、ETFが上場廃止となる基準には以下のような場合があります。
    • 継続して6か月以上、指定参加者が2社未満となっているとき
    • ETFの一口あたりの純資産額と特定の指標の相関係数が0.9未満となった場合において、1年以内に0.9以上とならないとき
    • ETFの監査報告書または中間監査報告書において問題があり、かつ、その影響が重大であると取引所が認めた場合

※ETFの上場廃止基準は上記に限りません。詳細は日本取引所グループのホームページにて開示されています。

上記の他にも、運用会社が受益者(投資家)のために有利であると認めるとき等、受託者である信託銀行と合意のうえ、償還となる場合があります。

ETFの償還の流れ

ETFが償還される場合には、一般的に以下の流れで償還の手続きが進められます※。
※対象指数が廃止された場合や上場したすべての取引所において上場廃止になった場合は、以下の通りとはなりません。

ETFの償還の流れ

※一般的なスケジュールであり、すべてを網羅しているわけではありません。
(出所)野村アセットマネジメント作成

    1. 書面決議手続きのお知らせ
      ETFの書面決議とは、ある基準日における受益者名簿上の受益者を「議決権を行使することができる受益者」(以下、「対象受益者」)と定め、ある事項に対して書面上で決議を行うことです。あるETFを償還するかに関して書面決議を取ることが、適時開示情報閲覧サービスサイト(TDnet)や該当ETFのホームページで公表されます。ここでETFが償還を予定しているということが初めて世間に発信されます。
    2. 書面決議手続き
      対象受益者は書面決議に関する書類を受領し、償還に賛成・反対かの議決権行使を行います。受益権の総口数の3分の2以上の賛成で可決されると償還が決定されます。一方で、否決されると償還はされず、ETFの運用はそのまま継続されます。
    3. 繰上償還確定のお知らせ
      書面決議の結果繰上償還が決定されると、その旨がTDnetやETFのホームページで公表されます。また、償還確定のタイミングでETFは取引所において、「整理銘柄」に指定されます。整理銘柄指定期間は約1か月あり、この期間が終了するとETFは上場廃止になります。
    4. 買取請求期間
      書面決議で反対をした受益者は、ある期間において運用会社にETFを買い取ることを請求することができます。買取の価格は、市場価格(原則として受託会社による手続きが完了した日の翌営業日の東京証券取引所における寄り付き価格)となります。買取請求は書面決議で反対を表明した受益者に限られますが、反対した人が必ず買取請求をしなければならないわけではありません。
    5. 取引所における最終売買日
      ETFを市場で売買できる最終日です。この日を過ぎて保有する場合は、償還金として支払われます。
    6. 上場廃止日・信託終了日
      上場廃止日の翌営業日頃がETFの信託終了日となります。
    7. 償還金支払い日
      信託終了日時点の受益者に対して、償還金が支払われます。償還金額は、信託終了日に算出される償還価額に基づき、1口当たりの償還価額は、ETFの信託終了時の純資産総額を受益権総口数で除した額となります。償還価額はETFのホームページ等で開示されます。

保有するETFが償還したらどうなる?

保有するETFの償還に対し、投資家が行うことができる対応は3つあります。ETFが償還された際、買取請求や市場で取引をしなかった場合でも償還金という形でお金は返還されます。

  1. 最終売買日までに市場で売却する
    償還が決定されても、取引所の売買最終日まで取引が可能です。
  2. 市場で売却せずに償還を待つ
    市場で売却せずに売買最終日まで保有を続けた場合、償還金を現金で受け取ることになります。
  3. 書面決議で反対をしたうえで、運用会社に買い取り請求を行う
    買取請求は書面決議で反対を表明した受益者のみ行うことが出来ます。

「償還が決定したら損が出るのか」という点が気になる方も多いと思いますが、償還決定後に市場で売却したり、償還金を受け取ったりしても、そこで得られた金額が購入価格よりも上回っていれば利益が得られ、下回っていれば損が出ることになります。

ETFの償還の目安や基準は?

投資していたETFが償還されると、想定していた長期投資ができないといった事態や、新たな投資先を探す必要性が出てきます。こういったリスクを避けるためには、一定の純資産残高や出来高がある商品を選ぶことが大切です。純資産残高や出来高については、ETFを発行している運用会社や証券会社のサイトで確認できます。

また、上記で説明した通り、ETFは「ある基準の受益権口数を下回ったら償還します」もしくは「~償還となる場合があります」という基準が目論見書に示されている場合があります。気になる銘柄があれば目論見書にて基準を確認し、月次レポートに目を通して口数が基準近辺となっていないかチェックするとよいでしょう。

(2023年7月13日作成)

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