ファイナンシャルプランナーが伝授する資産形成・資産活用としての株式投資(第26回)

ETF資産運用実践③:徹底的にコストにこだわる運用方法【資産形成㉖】

資産運用におけるETFの実践的な活用方法をご紹介する第3回目は、貸株サービスを活用して利回りアップを追及する方法をご紹介させて頂きます。預貯金の金利が0.001%程度と非常に低い現在、資産運用のコストにこだわり利回りをアップさせることは重要です。

資産運用の利回りは、コストが変わるとこれほど変わる!

資産運用において、株式、債券、不動産(REIT)、投資信託などに投資をしていく場合、一般的にはコストが発生します。投資家の方が実際に手にすることができるリターンは、投資資産それ自体のリターンから、金融機関に支払う手数料や信託報酬、売却益や配当に対して発生する税金などのコストを差し引いたものになります。

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投資資産のリターンは、日々変動するため不確定なものとなります。一方、手数料や信託報酬は、どういった金融機関のどのような商品を選ぶか、また税金については、税制優遇口座を利用するかなど、基本的にはご自身で選択して決めることができます。

では、コストが違うと、実質的なリターンにどのくらい影響があるのか確認してみましょう。

100万円を30年間、利回り4%、コストが0%、0.2%、1.0%、2.0%の4パターンで運用した場合を考えてみます。

※以下では便宜上、確定利回りとして評価額を記載していますが、実際には有価証券への投資は一般的に確定利回りではありません。

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(出所)筆者作成

投資額100万円に対して、コストが0%の場合は324万円に、コストが2%の場合は181万円と大きな差が生まれることがお分かり頂けると思います。もし1桁大きく、1,000万円投資していたら、3,240万円と1,810万円となりますので、1,400万円以上の差になるわけです。

ETFなら運用コストが低く抑えられる!?

個人の投資家の方が、比較的手軽に分散投資を実践できる投資商品としては、ETF・非上場の投資信託(以下、投資信託)、ロボアドバイザー、ファンドラップといった商品がありますが、これらの商品に対して保有期間中に継続的にコストが発生します。

コストを比較してみると、一般的に以下の順で大きくなります。

ETF・投資信託 < ロボアドバイザー < ファンドラップ

さらに、最近では投資信託でもかなり低コストなものが販売されるようになりましたが、一般的にはETFの方が投資信託よりも継続して発生する信託報酬は低い傾向にあります。

ETFでも、投資信託でも、特定のインデックスに連動するように運用されるファンドであれば、投資対象のパフォーマンスは同じになるので、運用コストが最終的なパフォーマンスの差に影響を与えることになります。つまり、コストを抑えると、パフォーマンスが高くなるということですね。

さらに今回は、徹底的に利回りをアップしたいという方のために、ETFの場合に利用することができる貸株サービスをご紹介させて頂きたいと思います。

貸株サービスを活用してさらに利回りアップ!?

貸株サービスというのは、保有しているETFや株式などを証券会社に貸し出すことで、貸株金利を受け取ることができるサービスです。実際に受け取ることができる貸株金利は、貸し出す証券や、貸し出す相手となる証券会社によって異なるのですが、0.1%程度で設定されていることが一般的です。

つまり、ETFで資産運用する場合、その保有期間中にETFを証券会社に貸し出すことで貸株金利の収入として0.1%程度受け取ることができるわけです。貸株サービスは投資信託では利用できず、ETFや株式特有のサービスです。

運用利回り4%に対して、4パターンのコストで計算した上のグラフは、それぞれコストから貸株金利相当分の0.1%を差し引くと、次のようになります。

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投資額100万円に対して、30年後の金額で5.4~9.5万円ほどの差になっています。もし投資額が1,000万円だったら54~95万円ほどの差になるというわけです。

但し、貸株サービスを利用する場合には、それに伴って追加的なリスクが発生することに注意が必要です。貸株サービスというのは、みなさんが保有しているETF等を証券会社に貸し出すわけですが、貸し出した相手である証券会社が倒産した場合などには、貸し出したETF等が返却されなくなる可能性があります。

また、一般的に証券会社に預けている有価証券は保護預りという、証券会社自身の資産とお客様の資産は区別して管理(分別保管)されているわけですが、貸株サービスを利用すると、分別保管の対象とはならず、投資者保護基金による保護の対象外となります。貸株サービスを利用される際には、こういったリスクが伴うことを十分ご理解された上で、ご利用頂ければと思います。


今回は、資産運用におけるコストの重要性と、上場しているETFだからこそ利用できる貸株サービスによる利回りアップについてご説明させて頂きました。

一見小さな数字に見えるかもしれないコストですが、長期的に資産形成していく場合、大きな影響を与えることがありますので、ぜひこだわって頂ければと思います。

(2020年8月作成)

株式会社ウェルスペント
代表取締役

横田 健一

KENICHI YOKOTA

「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで、資産形成情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。同時に、ファイナンシャル・プランナーとして、家計相談やライフプラン・シミュレーションの提供を行っている。
著書:新しいNISA かんたん最強のお金づくり

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