世界ETF事情①

世界のETFは10年で5.7倍、650兆円に成長【世界ETF事情①】

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はじめに

世界初のETFは1990 年にトロント証券取引所に上場された「TIPS35(Toronto 35 Index Participation Units 35)」 と言われます。したがって2020年はETF発足30周年にあたります。

この記念すべき年に連載させていただく本コラムにおいては、世界のETFの量的概観から始めて、ETFはなぜ成長しているか、世界のETFのバラエティ、顧客層と買付チャネル、コストと流動性、規制および問題点などを取り上げ、最後にETFの将来について考えます。

第1回は世界のETFの量的な概観です。

世界のETF純資産残高は650兆円

世界のETF純資産残高(以下「残高」)は、専門調査機関ETFGIの調べによると19年11月末現在で5.955兆ドル(11月末の1ドル109.56円で換算して約650兆円)に達しました。ファンド数は6,975本、1ファンド当たり規模は8.54億ドル(935億円)と計算されます。

過去10年間の世界のETF残高とファンド数の推移を振り返ると図表1の通りです。10年間(09年末→19年11月末)で残高は1.041兆ドルから5.955兆ドルへ5.7倍に、ファンド数は1,969本から6,975本へ3.5倍に増加しました。
(注)本稿においてETFとは文字通りExchange Traded Fundを指し、ETNなど他の上場商品を含んでいません。

[図表1]世界のETF純資産残高とファンド数の推移
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(出所)ETFGIデータから筆者作成

なお、残高の成長度合いを一般の(非上場)公募証券ファンド(以下「一般ファンド」)と比較しますと、09年末から19年9月末(国際投資信託協会発表による世界の一般ファンド残高が判明している直近時点)までに、一般ファンドは22.6兆ドルから41.1兆ドルへ1.8倍に増加し、同期間にETFは1.0兆ドルから5.6兆ドルへ5.6倍に増加しました。ETFは一般ファンドの約3倍のスピードで拡大してきたことになります。

地域別ではアメリカが70%を占める

ETF残高を地域別に見ますと、図表2のようにアメリカが世界全体の70%を占めており、ETFは特にアメリカにおいて発達が著しいことが分かります。その理由については次回に述べます。

[図表2]ETF残高の地域別内訳(2019年11月末)
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(出所)ETFGIデータから筆者作成

日本の状況

19年11月末現在、日本のETF残高は42.68兆円、ファンド数は195本で、1ファンド当たり規模は2,189億円と計算されます。

10年前と比べると、09年末から19年11月末までに残高は2.29兆円から42.68兆円へ18.6倍、ファンド数は72本から195本へ2.7倍に増加しました。

残高の増加倍率は世界全体の5.7倍を大きく上回っていますが、これは10年から始まった日銀のETF取得(19年11月末の保有残高は簿価で27.9兆円)の影響が大きいことによります。仮に19年11月末の日銀保有ETFの時価を32兆円と見て(11月27日に日銀が発表した「令和元年度上半期財務諸表等について」に掲載の19年9月末現在の保有ETF簿価27.6兆円、時価31.6兆円から類推)、これをETF残高42兆円から控除しますと10兆円程度となります。したがって、日銀保有分を除いた10年間のETF残高の増加(2.29兆円→10兆円)倍率は4倍程度と計算されます。

なお、前述の世界の状況と同様に、ETF残高の成長度を一般ファンドと比較しますと、09年末から19年11月末までに日本の一般ファンド残高は59.16兆円から78.87兆円へ1.3倍の増加に止まり、一方、ETFは前述のように日銀保有分を除いても4 倍程度に増加しました。世界と同様に日本でもETFは一般ファンドの約3倍のスピードで拡大してきたと言えそうです。

(2020年1月作成) 


元日本証券経済研究所特任リサーチフェロー

杉田 浩治

KOHJI SUGITA

野村證券投資信託委託(現・野村アセットマネジメント)企画部長・NY駐在員事務所長などを経て、2006年から2018年まで(財)日本証券経済研究所に勤務。2014年7月~2018年3月投資信託協会主任研究員。著書多数。

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