世界ETF事情③

世界のETFのバラエティ【世界ETF事情③】

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前回はETFがアメリカを中心に急成長している理由・背景を解説し、「豊富な品揃え」がETF成長の一つの理由であると指摘しました。そこで、今回は世界のETFのバラエティについて紹介します。

投資対象別では株式が中心

ETFの投資対象は、発足当初の株式から債券、マネーマーケット、商品、通貨などに広がり、さらにそれぞれの資産を細分化したETFが組成されてきました。

統計の整備されているアメリカについて、2019年末現在(ETF残高4兆3,962億ドル)の投資対象別残高を見ますと図表1のとおりです。グリーン系で示した株式(国内株総合型、国内株業種・セクター別、グローバルまたは外国株式)ETFが大きく、全体の約8割を占めています。

(注)米国ではREITは株式の範疇に入っており、米国のREITに投資するETFは「国内株業種・セクター別」に、外国のREITに投資するETFは「グローバルまたは外国株式」に入っています。

なお2009年末と比べますと、国内株総合型が39.1%から49.3%へ、債券が13.8%から18.5%へシェアを拡大し、反対に商品(原油、金など)が9.6%から1.9%へ、グローバルまたは外国株式が26.9%から20.1%へシェアを縮小しています。

[図表1]アメリカのETF残高の内訳(投資対象別、2019年末)

etf_503_img01.png

多様な切り口

ETFは多様な切り口から組成されており、FA(フィナンシャルアドバイザー)や機関投資家の様々なニーズに応えています。

たとえば、株式ETFを組成する切り口については図表2のようなマトリックスが描けます。縦軸(地域別)の国や地域は細分化あるいはグループ化が可能ですし、横軸(分野別)の業種・セクターは数十にもなり、またテーマも後述のように次々と新しい切り口が出現していますので、膨大なバリエーションとなります。

[図表2]ETF組成の切り口(株式の例)

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図表2の横軸の「テーマ別」について、近年の新設ファンドの例を見ましょう。

投資基準として重要性を増しているESG関連が多いのはもちろんです(ETF専門の調査機関ETFGIによると、2019年11月末現在、世界でESG関連ETF が269本あり、その資産額は523億ドルに達しています)が、そのほかアメリカではサイバーセキュリティー関連、ソーシャルネットワーク関連、ビデオゲームおよびeスポーツ関連、ギグエコノミー関連、ペットのヘルスケア関連、さらには一部の州での大麻合法化を受けてマリファナ関連のETFまで出現しています。

※インターネットを通して単発の仕事を受注する働き方やそれによって成り立つ経済形態のこと。

なお、数年前から「ビットコイン価格に連動するETF」の登録申請がSEC(アメリカ証券取引委員会)に提出されていますが、SECは「(ETFに限らず)ファンドがデジタル資産(商品のように物理的存在もなく、また証券のように特定の発行者もいない資産)へ投資することが妥当かどうか、ビットコインが容易に盗まれること、規制外市場で取引され価格操縦の恐れがあること」などから慎重に対処しており、未だに認められていません。

アクティブ運用型も増加

以上は「資産(アセットクラス)の細分化」ですが、近年「投資戦略」に着目したETF組成が急増しています。

たとえば、アメリカで運用者の裁量により指数を上回る投資成果をめざすアクティブ運用ETFが2008年に発足したほか、ここ数年、世界的に投資ファクター(バリュー・ボラティリティ・サイズ・モメンタムなど)に沿って銘柄選択・投資配分を行うETFも増えています。

ETFGIによると、2019年11月現在で世界のアクティブ運用ETP(ETP=Exchange

Traded ProductsはETFのほかETNなどを含めた上場金融商品の総称)資産は1,512億ドル、世界の株式スマートベータ指数(投資ファクターを活用して合成した指数)連動ETPの資産は8,350億ドルに達しました。同時点の世界全体のETP(6兆1,190億ドル)に占める割合はそれぞれ2.5%、13.6%となっています。

なお、アクティブ運用ETFについては、今まで債券ファンドが中心でした。何故ならETF は毎日ポートフォリオを開示する必要があるため、特に株式ファンドについて自社の投資戦術を他の市場参加者に察知され、フロントランニング(先回り売買)されることなどを嫌う運用会社が多かったからです。しかし、アメリカでは従来型ファンドと同様にポートフォリオを4半期毎に開示すれば済む「nontransparent (不透明)ETF」を近々SECが認める方向と伝えられ、そうなればアクティブ運用株式ファンドについてもETF化が進むと見る向きがあります。




(参考)世界で算出されているインデックス(指数)の数は296万
世界の指数提供会社15社で組織する指数産業協会(Index Industry Association)の調査(2019年10月発表)によると、2019年現在、世界で算出されている株価・債券価格などのインデックスの数は296万に達しています。
同調査は2017年に初めて行われ、同年6月末現在の存在指数は329万でした。2018年の第2回調査では379万に増加し、2019年の第3回調査では前年比99万減って296万になったとのことです。

(2020年3月作成)


元日本証券経済研究所特任リサーチフェロー

杉田 浩治

KOHJI SUGITA

野村證券投資信託委託(現・野村アセットマネジメント)企画部長・NY駐在員事務所長などを経て、2006年から2018年まで(財)日本証券経済研究所に勤務。2014年7月~2018年3月投資信託協会主任研究員。著書多数。

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