FP が伝授!新 NISA 使いこなし術
成長投資枠の活用方法(2)高配当ETF(上場投資信託)の活用【新NISA④】
2024年1月18日作成
2024年からNISA制度(少額投資非課税制度、以下「NISA」と記載)が大幅に生まれ変わり、一人あたり投資元本1,800万円まで、期限なく非課税で投資可能になりました。
本コラムでは、リニューアル・恒久化され、使い勝手も大幅に向上したNISAについて、ライフプランや世代に応じた活用方法をご紹介していきます。
第1回では新NISA制度の概要、第2回では50代~60代のミドル・シニア世代にとっての活用方法をご説明しました。続く第3回では現役引退後の年金生活を送る際に、あるとうれしい配当収入を目的とした投資として個別株投資について説明しましたが、第4回となる今回は、高配当銘柄に手軽に分散投資できる高配当ETF(上場投資信託)について解説します。
手軽に分散しながらインカムゲインを獲得しやすい高配当ETF
第3回では配当収入を得るための個別株投資の基本と注意点についてご説明しましたが、何千銘柄もある中から長期的に安心して投資していける個別銘柄を探すのは容易なことではありませんし、業績動向のチェックなども必要になります。
そこで検討していきたいのが、配当利回りが高い銘柄を対象とする株式インデックスに連動するタイプのETF(以下、本記事では高配当ETF)です。ETFなので1本で手軽に幅広い銘柄に分散投資することが可能です。
ETFは、投資信託の中でも株式のように取引所に上場されているもので、投資対象資産から発生した配当金や利子などは、信託報酬などの費用を差し引いた上で全額をETFの保有者に分配金として支払われることになっています。
高配当ETFへ投資するメリット・デメリット
配当利回りの高い銘柄に投資する高配当ETFを利用することのメリット・デメリットについて考えてみましょう。まずメリットです。
高配当ETF投資のメリット・デメリット
メリット①:手軽に分散投資できる
メリット②:高い分配金が期待でき、分配金を受け取っても口数は減らない
デメリット①:分散度合いが必ずしも高くない
デメリット②:トータルリターンが低くなる可能性も
メリット①:分散投資
1つ目のメリットは、手軽に分散投資ができることです。個別株投資の場合、30~50銘柄など分散して投資しようとすると、銘柄選びや、数十銘柄もの投資対象を1銘柄ずつ注文して取引するのは負担が大きくなります。しかし、ETFであれば数十銘柄から数百銘柄など、ETF1本だけで幅広く分散して投資することが可能です。
メリット②:高い分配金が期待でき、分配金を受け取っても口数は減らない
2つ目のメリットは、高い分配金が期待でき、分配金を受けっている限りは保有している口数が減らないことです。ETFは投資対象株式が生み出した配当収益から信託報酬などの費用を差し引いた全額が投資家に分配される仕組みになっているため、投資している株式の配当利回りが高いと分配金も多くなります。そして、上場していない投資信託で分配金を出さないものの場合、セカンドライフで使っていくためには、定期的に売却していく必要がありますが、ETFのように分配金を受け取れる形であれば、売却の手間がかかりません。また、分配金を受け取るだけであれば保有口数が減っていくこともありませんので、長期的な安心感につながります。
次に、デメリットについて確認していきましょう。
デメリット①:分散度合いが必ずしも高くない
1つ目のメリットと相反するように思われるかもしれませんが、ETFの中でも配当利回りに着目したタイプのETFの場合、投資対象の銘柄数が数十銘柄程度のものが多くなっています。個別株投資と比較すれば、それでも十分分散されることにはなりますが、世界株式を対象とした上場していない投資信託の場合には1本で数百から数千銘柄に分散できるものもあり、そういったものと比較すると分散度合いは低いと言えます。また、配当利回りに着目したETFでは、日本株式のみや、米国株式のみを対象としたものが多く、先進国全体や世界全体といった幅広い地域を対象としたものは多くありません。そういった意味では、投資対象が特定の国に集中してしまう可能性もあります。
デメリット②:トータルリターンが低くなる可能性も
一般的に、企業は生み出した利益の中から一部を配当に、残りを内部留保として成長のための投資にまわしていきます。魅力的なビジネス機会が多いと考えている企業であれば配当よりも成長投資に資金を振り向ける傾向があるわけです。しかし、配当利回りが高い銘柄というのは、比較的配当へ振り向ける割合の高い企業とも言え、長期的に見た時のトータルリターン(値上がり益であるキャピタルゲインと、配当などのインカムゲインの合計)が低い企業が優先的に組み入れられる可能性が高いとも言えます。つまり、トータルリターンが低めになってしまう可能性もあるのです。
インカムゲインを目的とした高配当ETF選びの3つのポイント
今回は、シニア世代が現役引退後にインカムゲインを得ることを目的とした高配当ETFの選び方について考えてみたいと思います。
高配当ETF選びのポイント
ポイント①:ETFの分配金利回り
ポイント②:ベンチマークとするインデックス
ポイント③:国内上場か、海外上場か
ポイント①:ETFの分配金利回り
インカムゲインを目的としていますので、まずはETFを保有して1年間に受け取れる分配金を購入代金で割った分配金利回りが高いことです。分配金の金額は一定ではなく変動しますし、購入するタイミングによって購入代金も異なりますので、あくまで1つの目安にはなりますが、今後どのくらいの分配金が期待できるのかチェックしておくことが大切です。インカムゲイン確保を目的とする場合、分配金利回りが重要です。
ポイント②:ベンチマークとするインデックス
2つ目のポイントは、ETFの投資対象がどのような基準で選ばれているかです。最近はアクティブ運用のETFも出始めていますが、多くのETFはパッシブ運用のインデックスに連動するタイプです。投資を検討しているETFが具体的にどのようなインデックスをベンチマークとして運用されているのか、確認しましょう。
例えば、高配当の日本株式を対象としたインデックスとして、「日経平均高配当株50指数」や「野村日本株高配当70」というものがあります。
「日経平均高配当株50指数」は日経平均構成銘柄のうち配当利回りの高い50銘柄から構成される配当利回りウエート方式の株価指数です。配当利回りに流動性(売買代金)を加味して構成銘柄の指数算出上のウエートを決定するという、従来までの価格平均や時価総額加重平均とは異なる算出方法を採用しており、いわゆるスマートベータ型のインデックスとみることができます。 |
また、「野村日本株高配当70」の投資対象は次のように選ばれていることが確認できます。
国内上場株式の中から、予想配当利回りが高い70銘柄を選んで構成銘柄とした等金額型の指数です。配当継続性と投資可能性に配慮しながら、予め決められたルールに基づいて銘柄選択が行われます。 |
「日経平均高配当株50指数」は、日経平均構成銘柄、つまり225銘柄を母集団として選んでいることになりますが、「野村日本株高配当70」は国内上場株式を母集団として選んでいることになります。また、それぞれ考慮されている視点が異なることもご理解いただけるのではないでしょうか。
ETFに投資する際には、その投資対象がどのような基準で選ばれていて、実際にどのような銘柄に投資されているのか、できるだけ理解しておくことが大切です。日本株式のみを対象とした高配当ETFを保有する場合には、海外株式を対象とする高配当ETFへも投資するなど、特定の国に集中しないよう分散しておくことがリスク管理の観点からは重要になります。
ポイント③:国内上場か、海外上場か
ETFには日本国内の東京証券取引所に上場しているものもあれば、米国などの海外の取引所に上場しているものもあります。取引のしやすさや分配金が円建てで受け取れるといった観点から国内上場のETFが便利です。しかし、国内上場のETFの本数は、海外上場のものと比べると少ないため、グローバルに分散投資したい場合は海外上場ETFまで広げて検討してもよいでしょう。NISAの成長投資枠では基本的に海外ETFも対象となっています。
(成長投資枠の対象となる国内ETFは投信協会HP(https://www.toushin.or.jp/static/NISA_growth_productsList/)で確認できます。海外ETFは販売会社が独自に発表しており、取扱銘柄数は販売会社によって異なります。)
今回は、インカムゲイン獲得を目的としたNISA成長投資枠の活用方法として、高配当ETFをご紹介しました。高配当ETFへの投資は、前回ご紹介した個別株投資と比べると、分散投資ができるためリスクを抑えながらも、手軽に投資が可能です。成長投資枠の活用方法として検討してみていただければと思います。
次回の記事では、インカムゲインを生み出す代表的な資産である不動産に投資できるREIT(リート、不動産投資信託)やREITを対象としたETFへの投資による成長投資枠の活用方法についてご説明していきます。次回もお楽しみに。
(2024年1月18日作成)