深掘りETF㉖

東証による呼値の単位の変更と当社ETFの売買単位の引き下げについて【深掘りETF㉖】

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ETFは銘柄ごとに売買単位を設定しています。投資家の皆様からは、わかりやすさの観点などから売買単位を1口にしてほしいといったお声を頂戴することもありましたが、呼値と執行コストの観点から1口にすることが難しいケースが存在していました。しかし、売買単位が1口のETFを対象に東証が2025年5月7日に呼値の単位の変更を行ったことによりこの問題が解消されたため、野村アセットマネジメント(以下、当社)では計16本のETFについて売買単位の引き下げを決定しました。以下で詳しく解説します。

<ポイント>

  • 東京証券取引所は売買単位が1口のETFの呼値の単位の変更を行った。
  • これにより、売買単位1口のETFの執行コストが従前に比べて低くなり、取引の利便性向上に繋がることとなった。
  • これを受け、当社は計16本のETFを対象に売買単位の引き下げを決定し、より少額からのETF投資を可能とした。

呼値とは、株式やETFを取引所で注文する際に表示される価格のことです。株式やETFを売買する際には、例えば5,000円、5,001円、5,002円といったように取引できる価格が決まっています。取引を行うときの、この価格の刻み幅を呼値の単位といいます。呼値の単位は株価や1口あたり価格(終値等*)によって異なります。2025年5月7日に東証は新たにETFの呼値の単位の適正化を行いました。新たに適用された呼値のテーブルは以下の通りです。

*原則として最終約定値段(ただし、特別気配引け等の場合は当該気配値段)を用い、いずれもない場合は、当日の基準値段(前日の終値や最終気配値段から定められる、制限値幅の基準となる値段)が採用されます。

<呼値テーブル>

株価(1口あたり価格)の水準呼値の単位
以下TOPIX500構成銘柄売買単位が1口のETF等その他の銘柄
0円1,000円0.1円1円1円
1,000円3,000円0.5円1円1円
3,000円5,000円1円1円1円
5,000円10,000円1円1円10円
10,000円30,000円5円5円10円
30,000円50,000円10円10円50円
50,000円100,000円10円10円100円
100,000円300,000円50円50円100円
300,000円500,000円100円100円500円
500,000円1,000,000円100円100円1,000円
1,000,000円3,000,000円500円500円1,000円
3,000,000円5,000,000円1,000円1,000円5,000円
5,000,000円10,000,000円1,000円1,000円10,000円
10,000,000円30,000,000円5,000円5,000円10,000円
30,000,000円50,000,000円10,000円10,000円50,000円
50,000,000円-10,000円10,000円100,000円


(出所)東京証券取引所資料をもとに野村アセットマネジメント作成
リンク:https://www.jpx.co.jp/news/1030/20250305-01.html

今回の変更内容をまとめたのが以下の表です。表にある通り、売買単位1口のETF等に関して、株価(1口あたり価格)の水準が10,000円以下の場合、呼値の単位が1円に統一されました。

<売買単位1口のETF等の呼値の変更内容>

株価(1口あたり価格)の水準呼値の単位
以下変更前変更後
0円1,000円1円1円
1,000円3,000円1円
3,000円5,000円5円
5,000円10,000円10円*
10,000円30,000円5円5円


*終値が5,000円以下となった銘柄がその後7,000円を超えた場合はその2営業日後から1円となる(このルールは2025年5月7日以降廃止)。

この変更は売買単位が1口のETFに関して、投資家の皆様の利便性を向上させるものになりますが、なぜこの変更が重要なのでしょうか。

それは、呼値の単位は単なる価格の刻みではなく、呼値以外の価格では取引できないためです。例えば5,000.5円で買いたいと思っても、呼値の単位が1円であれば実際には5,001円で買うことになり0.5円の追加的なコストが発生します。言い方を変えると、呼値の単位があることで、売値(アスク)と買値(ビッド)の差であるビッド・アスク・スプレッドの縮小を妨げ、執行コストの上昇につながっているともいえます。

呼値の単位の観点からの執行コストは、以下で表すことができます。

執行コスト=呼値の単位/1口あたり価格

この水準が大きければ執行コストは高く、低ければ執行コストは低いという見方をすることができます。

執行コストと1口あたり価格の関係性について、今回の呼値の単位の変更前と変更後で売買単位別にグラフ化してみると以下のようになります。1口あたり価格が3,000円~7,000円のところに着目すると違いは歴然です。変更前については、売買単位1口の場合、執行コストが上にジャンプしてしまう価格帯が存在していました。一方、変更後はそのような現象は発生しません。

<売買単位別の執行コストと1口あたり価格の関係(変更前)>

売買単位別の執行コストと1口あたり価格の関係(変更前)

*売買単位1口かつ元々はTOPIX500呼値テーブルの銘柄の推移
**売買単位1口かつ元々はその他呼値テーブルの銘柄の推移

<売買単位別の執行コストと1口あたり価格の関係(変更後)>

売買単位別の執行コストと1口あたり価格の関係(変更後)

(出所)東京証券取引所資料をもとに野村アセットマネジメント作成

この呼値テーブルの変更により、執行コストを気にすることなく、ETFの売買単位を1口に下げることが可能となりました。そこで当社は計16本のETFを対象に年内に売買単位の引き下げを行うことを決定し、2025年9月末時点では、6本のETFの売買単位引き下げが実施されています。これにより最低投資金額も引き下がるため、より少額から該当ETFに投資することが可能となりました。

<売買単位引き下げ対象ETF一覧>

銘柄コード銘柄名売買単位(口)変更実施日
変更前変更後
2859NEXT FUNDS ユーロ・ストックス50指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信1012025年8月27日
2860NEXT FUNDS ドイツ株式・DAX(為替ヘッジあり)連動型上場投信101
1311NEXT FUNDS TOPIX Core 30 連動型上場投信1012025年9月24日
1325NEXT FUNDS ブラジル株式指数・ボベスパ連動型上場投信10010
1328NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信101
1615NEXT FUNDS 東証銀行業株価指数連動型上場投信10010
2845NEXT FUNDS NASDAQ-100Ⓡ(為替ヘッジあり)連動型上場投信1012025年10月29日
2846NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価(為替ヘッジあり)連動型上場投信101
2513NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信1012025年11月25日
2514NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信101
2515NEXT FUNDS 外国REIT・S&P先進国REIT指数(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信101
2520NEXT FUNDS 新興国株式・MSCIエマージング・マーケット・インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信101
2634NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信101
2635NEXT FUNDS S&P 500 スコアリング&スクリーニング指数連動型上場投信101
2647NEXT FUNDS ブルームバーグ米国国債(7-10年)インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信101
2648NEXT FUNDS ブルームバーグ米国国債(7-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信101


(出所)野村アセットマネジメント作成
リンク:https://nextfunds.jp/data/2025/td_250701a.pdf

当社では投資家の皆様の利便性向上のため、売買単位の引き下げなど、既存ETFのメンテナンスも引き続き実施していきます。

(2025年10月9日作成)

野村アセットマネジメント

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