ETF投資のツボ

アクティブETFの活用法

2023年9月19日作成

2023年6月30日に東京証券取引所は特定の指標に連動しないアクティブ運用型ETFの上場制度を導入、そして第一号のアクティブETFが2023年9月7日に上場しました。アクティブETFは今までの指標連動という要件を必要としないことを除けば、高い透明性やリアルタイムでの取引等、インデックス連動型のETFと同様の特徴を有しています。

本稿では、この新しく登場したアクティブETFをどのように利用すればいいのかについて考えてみます。

アクティブETFの種類

特定の指標に連動する必要のないアクティブETFは、自由な商品設計が可能なため様々な種類の商品が提供されることが想定されます。そのため一括りにアクティブETFということでまとめることはできず、投資家が利用する際はその運用手法や狙いを見極める必要があります。

図1はアクティブETFの種類を大きく3つに大別したものです。必ずしもこの枠組みにすべてのアクティブETFが当てはまるわけではありませんが、大枠はこれで理解できるでしょう。

<図1:アクティブETFの種類>

種類目的メリットデメリット
アクティブリターン追求型マネジャー独自の運用手法などにより特定の市場を上回るリターン(付加価値)を狙う特定の市場を上回るリターン(アクティブリターン)を獲得できる可能性期待したアクティブリターンを獲得できない可能性

ルールベース型
(ノンベンチマーク)

指数化はされていないが、一定のルールに従ったある程度透明性の高い運用を行う

運用手法がわかりやすい
指数ライセンスフィーが不要

独自性を保つのが困難
より透明性の高い指数(スマートベータ)型運用ができる可能性

テーマ型

特定のテーマに特化し、そのテーマに沿ったポートフォリオを構築する
(構築方法はマネジャーの裁量やルールベース等)

指数化がしにくい定性的なテーマ運用などを提供できる可能性

テーマが一過性となる可能性
より透明性の高い指数型運用ができる可能性

出所:野村アセットマネジメント作成

1.アクティブリターン追求型

いわゆる狭義のアクティブ運用をETFにしたものです。アクティブ運用を担当するファンドマネジャーや定量モデルなどによる運用会社独自の運用手法で運用し、ベンチマークや参考指標などとの比較において、それを上回るリターンを投資家に提供することを目的としています。皆さんがアクティブと聞いてイメージするのはまずこういったものではないでしょうか。
その運用者や運用モデルによる運用がうまくいけば、特定の市場を上回るリターンを獲得することができますし、逆にうまくいかなければそれを下回る可能性もあります。まさに、運用者の腕の見せ所といったところでしょう。

2.ルールベース型(ノンベンチマーク)

一般的に、一定のルールに従って行う運用手法はすべて指数化することが可能です。しかし、指数を提供してもらうことが困難な場合や、その指数を利用するコストが高い場合などは独自のルールに従った運用をアクティブETFとして提供するケースもあるでしょう。
ルールに従って運用を行うものなので、その運用手法はわかりやすいものであることが多いと考えられます。
また、指数のライセンスフィーがかからないため、その分のコストを削減することも可能でしょう。(あまりにも単純な運用の場合は指数連動型ETFから指数ライセンスフィーを削減する目的で、あえてアクティブETFとするケースもあるかもしれません。)
一方で、ルールベースである以上、同様の指数連動型のETFを組成することも可能であり、そもそもそのようにして生まれたのが一般的にスマートベータ*と呼ばれるものです。この種類のアクティブETFはスマートベータ型の指数連動型ETFと非常に似通ったものになる可能性があります。
*詳しくは野村證券サイト(https://www.nomura.co.jp/terms/japan/su/A02317.html)をご覧ください。

3.テーマ型

特定のテーマに注目し、そのテーマに即した銘柄を組み入れるポートフォリオで運用するものです。テーマの中には定性的なテーマが含まれる場合もあり、その場合は指数化がしづらいことから、アクティブETFとして提供するものもあるでしょう。
どちらかというと運用の中心的な役割を果たすというよりも、そのテーマが市場で話題となった場合に利用されるケースを想定した商品といえるでしょう。市場のテーマは様々なので、アイデアによって多種多様な商品が提供される可能性がありますが、テーマは一過性のものも多く、長期の投資に向いているかどうかの見極めが必要でしょう。
また、当然指数型運用のETFで同様のテーマがより低コストで提供される可能性もあるでしょう。

アクティブETFの活用法

さて、これらのアクティブETFをどのように活用することができるでしょうか。今回は日本株のアクティブETFを前提にいくつかのアイデアを例示したいと思います。

1.アクティブ・コア

現在TOPIXなどの市場全体に連動するETFをコア資産(投資ポートフォリオの中核としてある程度多めに保有する資産)として利用している投資家であれば、これをアクティブETFに切り替えることで、より高いリターンを狙うことができます。もちろん反対にTOPIXのリターンを下回る可能性もあります。
この時重要なのは、その運用手法が信頼できるかどうかというのももちろんですが、ポートフォリオに意図しない偏りを持たせないということです。
その意味では、テーマ型のアクティブETFは一般的にはコア資産には不向きでしょう。また、アクティブリターン追求型のアクティブETFもその運用戦略にはそれぞれ特徴があります。成長株(グロース株)に絞ったアクティブETFは、バリュー相場ではリターンが出しにくい可能性があります。コア資産として利用する場合は、成長株のアクティブETFとバリュー株(高配当株などがこれに該当します)のアクティブETFを合わせて保有することで、グロース相場、バリュー相場の両方に対応することができます。

2.スタイルティルト

アクティブETFもそれぞれ運用手法に特徴があり、その特徴を発揮できるときに機動的にアクティブETFを切り替えることも可能です。先ほどのグロースとバリューのアクティブ・コアの例でいえば、グロース相場(金利の低下などで、成長株が優位な局面)においては成長株のアクティブETFを多めに保有し、反対にバリュー相場(金利の上昇などで、高配当株などの割安株が優位な局面)では、高配当株のアクティブETFを増やすなど機動的にスタイルを切り替えつつアクティブ運用による追加的なリターンを狙うようなことも可能です。
特にアクティブETFは市場でリアルタイムで売買が可能なため、この切り替えも柔軟に行うことが可能です。

3.アクティブ・サテライト

TOPIX連動型のような市場全体に投資するパッシブ型のETFを中心としながらも、アクティブリターンを狙うETFを追加的に保有したり、状況に応じてテーマ型のETFに投資したりする手法です。
長期的にパッシブの一部をアクティブETFに振り向けつつ、パフォーマンスをモニタリングしながら、場合によってはパフォーマンスの不振なアクティブETFを再びパッシブETFに戻したり、別のアクティブETFへ資金を配分したりしていきます。
また、短期的な見通しに基づいて成長株型のアクティブETFを増やす、テーマ型のETFを追加するなどの工夫も可能です。

4.個別銘柄ポートフォリオや投資信託からの切り替え

個別銘柄のポートフォリオの管理が煩わしく、またその個別銘柄のポートフォリオで目指しているものが、アクティブETFと同様であるのであれば、アクティブETFへの切り替えも検討する価値があるかもしれません。信託報酬などのコストはかかるものの、一銘柄として管理できますし、運用自体はお任せすることが可能となります。アクティブETFは日々銘柄も開示されることから、運用手法や保有銘柄が自身のポートフォリオに近いものを見定めることもできるでしょう。
また、一般的にアクティブETFはアクティブの投資信託と比較して低い信託報酬となることが想定されますので、似たような運用手法の投資信託からアクティブETFへ切り替えることで、コストの削減とリアルタイム取引の柔軟性を加えることも可能です。

日本でついに登場したアクティブETFは、海外(特に米国)では非常に注目が集まっており、今後、日本においてもその拡充が期待されています。投資家の皆さんにとってはETFの選択肢が増え、新たな利用方法を検討することも可能となってきます。

アクティブETFの登場は皆さんの運用方法を見直すためのいいきっかけになるかもしれません。

<関連銘柄>
NF・日本成長株アクティブETF(証券コード:2083)
NF・日本高配当株アクティブETF(証券コード:2084)

(2023年9月19日作成)

野村アセットマネジメント
ETF事業戦略部部長

渡邊 雅史

Masafumi Watanabe

野村アセットマネジメントのETF事業を担当するETF事業戦略部を統括。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』、『ロボアドバイザーの資産運用革命』(ともに共著、きんざい)、訳書に『ETFハンドブック』(きんざい)がある。

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