ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~
来年の日本株はハイテクセクターに注目!
2023年10月4日作成
今年の日本株のけん引役は自動車セクター!
今年の日本株相場をけん引してきたのは自動車セクターでした。
昨年の今頃、当コラムにおいて、「来年の日本株は自動車セクターに注目!」という記事を投稿しました。その理由は、今年度(2023年度)の業績をけん引するのが自動車セクターと予想されていたためでした。それで、「結果は?」と言いますと、図表1の通り、9月22日現在で、TOPIX-17業種の中で自動車・輸送機が上昇率トップに立っています。市場全体であるTOPIX(東証株価指数)の上昇率が26%のところ、自動車・輸送機セクターは51%上昇と、約2倍の上昇となりました。
自動車・輸送機セクターは、2022年のパフォーマンスは冴えませんでした。▲13%と下落し、TOPIX-17業種中で電機・精密に次いで2番目に悪いパフォーマンスでした。2022年度の業績も増益でしたが、コロナ禍の影響で部品が足りず、自動車生産が十分に回復しきれない状況を市場は警戒していたようです。それが、生産の本格回復や円安米ドル高の波に乗って株価が一気に見直されたようです。
では、来年のリーダーはどの業種でしょうか?昨年と同じ方法で分析してみました。
[図表1] TOPIX-17業種の2022年と2023年の騰落率
業種分類:TOPIX-17セクター
※ 2023年は9月22日まで
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成
来年度の日本株の業績をけん引するのはハイテクセクターか
今来期の業績予想が更新され、電機・精密や化学などのハイテクセクターが来期業績を牽引する予想になっています
今年も9月に今来期の日本株の業績予想が更新されました。図表2は、野村證券のアナリストによる業績予想を野村證券の業種分類で見たものです。母集団はRussell/Nomura Large Capで、主に時価総額が大きい288社の集計値です。
2023年度から2024年度にかけて、経常利益の増益額が大きい順に並べていますが、1位に位置するのが今回注目の電機・精密で、総額で約8.5兆円の経常利益、約1兆円の経常増益額、約13%の経常増益率と、昨年の自動車同様にかなり大きなものになっています。また、2位に位置する化学も、総額で約4.8兆円の経常利益、約0.7兆円の経常増益額、約16%の経常増益率と、こちらも大きな伸びとなっています。
これらの業種の業績を牽引する要因は半導体をはじめとしたハイテクセクターと予想されています。電機・精密では、生成AI(人工知能)向けの半導体需要増加などによる半導体製造装置市場の回復や拡大、車載向け電子部品の回復など、幅広い分野での需要回復を見込んでいます。化学では、半導体市場の回復に伴う電子材料の需要回復などが期待されています。
以上から、電機・精密や化学といったハイテクセクターに注目してみました。
[図表2] 日本株の各業種ごとの経常利益予想
業種分類:野村證券による19業種分類
(出所)野村證券データを基に野村アセットマネジメント作成
バリュエーションも悪くなく、株価出遅れも安心感あり
バリュエーションは過去平均並み、株価は2022年も23年も出遅れている
図表3はTOPIX-17電機・精密と素材・化学のPER(株価収益率、株価÷1株当たり利益)の推移です。今年はTOPIX-17業種すべてが上昇していることもあり、どちらの業種もPERは低い水準からは上昇しています。但し、表示期間の約11年間の平均値並みであり、特段の割高感は見られません。
また、図表1に見られるように、最近の株価パフォーマンスは、2023年(9月22日まで)は両セクターともにTOPIXを下回っていることに加え、2022年も自動車・輸送機セクター同様大きなマイナスであったなど、パフォーマンスにも大きな出遅れ感が見られます。昨年選んだ自動車も、2022年のパフォーマンスが悪い一方で2023年度の業績見通しが良好という組み合わせであり、同じような分析に基づけば、来年の主役は電機・精密と素材・化学などのハイテクセクターになるのではないでしょうか?1年後の検証が楽しみです。
[図表3] TOPIX-17ハイテクセクターのPERの推移
期間:2013年1月4日~2023年9月22日、週次
平均値は表示期間の平均
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成
<関連銘柄>
NF・素材・化学(TPX17)ETF(証券コード:1620)
NF・電機・精密(TPX17)ETF(証券コード:1625)
(2023年10月4日作成)