ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

長期的に上昇しているインド株式市場を再点検する

2024年12月5日作成

インドの企業利益は2020年頃から拡大ペースが加速している

今世紀の世界経済をけん引してきた中国経済が停滞に苦しむ一方、インド経済は足元でも好調に推移しているようです。今年2月、インド経済が順調に成長しており、インド株式市場も好調に推移している様子を取り上げましたが、半年少々が経過した足元でインド株式市場がやや調整していることもあり、再点検してみました。

まずは企業業績の確認ですが、インドを代表する株式指数であるNifty50指数のEPS(一株当たり利益)は今世紀に入って順調に成長しており、2020年以降は更に成長が加速している様子が見られます(図表1)。2020年までの年率10.7%成長も高い成長ですが、2020年以降は26年までに年率17.2%成長に加速することが予想されています。インド経済のアキレス腱と言われたインフラの弱さなどが徐々に改善し、成長が加速しているものと考えられます。

[図表1]  Nifty50指数のEPSの推移

Nifty50指数のEPSの推移


期間:2003年~2026年、年次、2024~26年はBloomberg予想(2024年11月25日時点)

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

インド株式市場は急上昇しているが、適正レンジの中で上昇中

企業業績の成長ペースが加速する中でインド株式市場も急ピッチで上昇してきましたが、足元ではスピード調整しており、Nifty50指数は今年9月26日の史上最高値から11月21日の直近安値までに10%超下落しました。

そこで、久しぶりに調整しているインド株式のバリュエーション(割高/割安判定)を確認してみると、EPSの成長が加速している2020年以降のNifty50指数の平均PER(株価収益率:株価÷EPS)が19.5倍程度なので、その上下2.5倍を適正レンジ(17~22倍)と見ると、急上昇中の株価は適正レンジ内に収まっていることが分かります(図表2)。

また、足元11月26日時点ではPERは20.1倍とほぼ平均並みです。インド株式市場は大きく上昇しているものの、特段のバブルというわけでもなく、適正な範囲で上昇し、その中でスピード調整しているだけのようです。

[図表2] Nifty50指数とEPSの推移

Nifty50指数とEPSの推移

期間:2012年1月8日~2024年11月24日、週次
・EPSはBloombergの向こう12ヵ月予想ベース

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

Nifty50指数の業種構成は、金融が飛び抜けて大きいが、その他業種は程よく分散

図表3はNifty50指数の業種構成比です。経済が急成長中の新興国の株式市場は特定業種の構成比が高くなる傾向があります。経済が発展するにあたり、まずは社会の基盤となるインフラ構築が必要であり、それを金融(銀行)が支えるという構図になるため、インフラ産業と金融が飛び抜けて高くなる傾向があります。

そうした視点でインド株式市場を見てみると、金融が飛び抜けて高い状態は続いているようですが、それ以外の業種については分散が進んでいるようです。テクノロジーや生活必需品、自動車・自動車部品、ヘルスケアなどは先進国株式市場における主要業種でもあり、インドは新興国でありながら、幅広い産業の発展に支えられているバランスの良い経済であり、株式市場であると考えられます。

インフラなどの特定産業に支えられた構造のままでは、インフラ構築が一巡した段階で成長が鈍化してしまうリスクがありますが、インドはそうしたリスクが小さいのではないかと考えており、引き続き有望な投資先であると考えています。

[図表3]  Nifty50指数の業種構成比

Nifty50指数の業種構成比

時点:2024年10月末現在

(出所)NSE Indices(https://www.niftyindices.com)のデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS インド株式指数・Nifty50連動型上場投信(証券コード:1678)

(2024年12月5日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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