ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~
自動車セクターの見通しは明るいか?
2025年1月15日作成
米国で走行する自動車の平均車齢が過去最高
新年あけましておめでとうございます。新年初回ではありますが、今回は「今年の相場は?」といった目先の話ではなく、「少し長めの話」をしたいと思います。
米国で走行する自動車の平均車齢が過去最高を更新しているようです。図表1は「米国で走行する乗用車と小型トラック(SUV等)の平均車齢」の推移です。ご覧のように、以前は10年以下だった平均車齢は時間の経過と共に緩やかに伸び、足元の2024年では、乗用車が14年、小型トラックが11.9年、合計が12.6年となっています。
これまでの緩やかな上昇は、技術進歩で自動車の耐用年数が伸びてきた効果が中心と考えますが、過去数年間の乗用車の急上昇は別の要因がありそうです。従来のトレンドからも大幅に上方乖離しており、14年という車齢は何らかの理由で乗用車の買い替えが進みにくかった結果と見ており、今後に買い替え需要が高まるものと考えています。
[図表1] 米国で走行する乗用車と小型トラックの平均車齢の推移
期間:1995年~2024年、年次
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
米国の自動車販売のサイクルが複数の要因で乱れてしまった
米国で走行する自動車、特に乗用車の平均車齢が急上昇してしまっている要因ですが、複数の要因が考えられます。図表2は米国の自動車販売台数の推移ですが、遡れるデータを見る限り、2000年より以前は10年程度のサイクルでピークを付けていましたが、2000年前後の好景気時には販売台数が減らずにピークが長引き、その後、リーマンショックが発生してしまったために、2004年のピークから次のピークの2018年までは14年もかかってしまいました。
更に、直近ではコロナ禍での半導体や部品不足で新車供給が十分にできなかったことから販売が大きく落ち込んでしまいました。そして、足元では高金利下で自動車ローン金利も上昇したことなどから、買い替えが進みにくかったと思われます。
但し、米国では株高が進み、労働者の賃金も堅調に上昇していることなどから、家計状況は良好であることが想定され、車も古くなっていてメンテナンス費用もかさむことから、これから数年間は遅れていた買い替えが進むことが考えられます。
[図表2] 米国の自動車販売台数の推移(3年移動平均)
期間:1978年~2024年、年次
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
向こう数年間にかけてTOPIX-17自動車・輸送機の好パフォーマンスを期待
最後にTOPIX-17自動車・輸送機の株価を見てみましょう。図表3は同株価指数と前掲の米国の自動車販売台数の推移ですが、両者は2007~2020年頃までは概ね連動していましたが、ここ数年は両者に乖離が見られます。その主な理由は、大幅な円安が業績を押し上げた影響と見ており、その根拠として、株価は2024年春頃にピークを打ち、その後、円安に一服感が出ると急速に下落に転じました。
では、この先どうなるかですが、まず米国自動車市場は今後回復に向かい、このことが業績を押し上げるものと見ています。さらに、日本の自動車メーカーには追い風が吹いています。
1つ目は、米国自動車市場ではハイブリッド車の売れ行きが好調で、中でも、2024年のトヨタ自動車のハイブリッド車販売シェアが5割を超える寡占状態にあり、ビジネスを有利に進めることができそうなことです。
2つ目は、同社がROE(自己資本利益率)で20%を目指すとの報道で、同社への市場の期待が高まっていることです。そして3つ目として、ホンダと日産自動車の経営統合の発表なども、今後の収益性改善への期待が高まるものと思われます。
このように様々な好材料によって、向こう数年間は当該セクターの好パフォーマンスが期待できると考えます。
[図表3] TOPIX-17自動車・輸送機の株価指数と米国の自動車販売台数の推移
期間(TOPIX-17自動車・輸送機):1995年1月末~2024年12月末、月次
期間(米国の自動車販売台数):1995年~2024年、年次、3年移動平均
(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成
記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
<関連銘柄>
NEXT FUNDS 自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1622)
(2025年1月15日作成)