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世界ETF事情⑧

コロナ下の世界ETF市場【世界ETF事情⑧】

この記事は、約3分で読めます

世界経済が新型コロナウィルスの影響で大きく揺れている中で、世界のETF市場はどのように推移しているのでしょうか。

今回は2020年上半期の世界ETF市場の動向をレポートします。

資金流出入は毎月プラスを継続

ETFの専門調査機関ETFGIによると、2020年1~6月の世界ETFの資金流出入と運用残高は図表1のように推移しました。

設定から交換を差し引いた資金増減額※は、コロナショックで世界の金融市場が大きく揺らいだ3月もプラスを維持し、各月とも純増を記録しました。6月までの資金純増合計額は2,944億ドルに達し、前年同期の2,095億ドルを4割上回っています。

この結果、世界のETF残高は2019年末の6.19兆ドルから3月に5.19兆ドルへ落ち込みましたが、その後の時価上昇と相まって6月には6.06兆ドルに増加、6兆ドルの大台を回復しました。

※機関投資家等大口の投資家の申し込みがあった際や流通市場でETFの需要が高まった際などに、指定参加者(証券会社)が株式または現金を運用会社へ拠出して、運用会社がETFの受益権を発行します。このことをETFの「設定」と言います。逆にETFを拠出して株式や現金を受け取ることを「交換(解約)」と言います。

上記のETFへの資金流入額増加の一因として、コロナ下の世界的な社会・経済の変化があると指摘する声があります。すなわち、①人々の在宅時間が長くなる一方で、スポーツなども楽しめないため、時間に余裕がある人が増えた、②そこに政府からの「給付金」等が支給され余裕資金ができた、③金利低下で預金しても利息は僅少、④一方、ネット取引について株式・ETFの売買手数料の引き下げ・無料化等が進み投資が容易になった、などの要因が重なり、若者中心にネットを通じて投資を始める人が増えたという指摘です。

日本でも、積立投資の増加等が伝えられていますが、こうした現象は世界的に見られるようです。

[図表1]世界ETFの資金増減と残高の推移(2020年)

etf_508_img01.png[出所]ETFGIより筆者作成

債券ETFへ大量の資金が流入

次に投資対象(株式・債券・コモディティ)別の資金流出入の状況を、世界ETF残高の7割を占め連続データの得られるアメリカについて見ますと図表2のとおりです。

時期によって大きく変動していますが、1~6月通算の資金純増額は、株式ETFが780億ドル、債券ETFが954億ドル、金・原油などのコモディティETFが355億ドルとなりました。ETF全体(バランス型を含めて2,100億ドル)の資金純増額に占める比率は、株式37%、債券46%、コモディティ17%と計算されます。

2019年末の米国ETFの残高構成比率は株式79%、債券19%、コモディティ2%となっていましたから、上記の資金純増実績は今年に入って債券とコモディティの人気が高まったことを示しています。

特に債券ETFについては4月以降連続して多額の資金が入っています。その要因としては投資家の安定資産へのニーズが高いこと、後述のFRBによる社債ETF買付も投資家の債券投資への安心感を高めたことのほか、米国保険会社が「債券ETFは個別債券への投資より流動性が高く分散機能もあること」を認識して債券ETFへの投資を増やしているという見方もあります。

[図表2]米国上場ETFの投資対象別資金増減の推移(2020年)

etf_508_img02.png[出所]ICI統計より筆者作成

米国FRBが社債ETFを買付

米国の中央銀行FRBは、コロナ禍による金融市場の動揺に対処するため「流通市場企業信用供与プログラム(Secondary Market Corporate Credit Facility)」を導入し、その一環として社債ETFと社債の買付に踏み切りました。これは、社債市場の流動性を確保することにより、企業が(銀行借り入れだけでなく)社債市場を通じる資金調達も円滑にできるようにすることを目的としています。

FRBの上記プログラムの発表は3月23日に行われ(実際に買付を開始したのは5月)、アナウンスメント効果により発表直後に社債ETF市場は好転しました。たとえば、代表的社債ETFである「iShares iBoxx $ Investment Grade Corporate Bond ETF (LQD)」の市場価格は、3月19日には純資産価値(NAV)に比べ5%のディスカウント(割安)に陥っていましたが、3月25日には5%のプレミアム付き(割高)に変化しました。

投信評価機関モーニングスター社のデータによりますと、FRBは5月12日から6月29日までに16銘柄のETFに合計79億ドルを投資しました。大半は中短期の投資適格債に投資するETFですが、高利回り債ETFも含まれており、この期間の資金純増額の7割をFRB買付額が占めたETFもあります。

そして今般のFRBの動きは、今まで「ETFとは株式のファンドのこと」と考えていた投資家の認識を変え、債券ETFに新たな資金を導入したとの指摘もあります。

なお、FRBは6月16日から個別社債の買付を開始し、パウエル議長は6月17日の上院金融サービス委員会において「今後はETFから個別債券の直接購入に重点を移していく」と表明しています。

(2020年8月作成)

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