ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

日本株の上昇は続くのか?

2024年7月17日作成

TOPIXも史上最高値を更新中、上昇は続くのか?

日経平均株価は今年早々に1989年12月に付けた史上最高値を更新しましたが、TOPIX(東証株価指数)も7月に入り1989年12月の史上最高値を更新しました。図表1は、以前もご紹介した過去10年程度の「TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジ(赤線と青線)の推移」です。ご覧のように、現状株価はレンジ上限を大きく上回っています。

足元のTOPIX水準は妥当レンジ上限よりも10%程度割高と見ていますが(7月9日現在)、日本株がこのように割高水準まで上昇している背景には複数の要因があると考えており、その要因が消えるまではこうした状況が続くだろうと予想しています。では、その要因とは何か考えてみましょう。

[図表1]  TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移

TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移

期間(株価):2012年12月3日~2024年7月9日、日次
期間(予想EPS):2012年12月~2024年6月、月次
・予想EPS(1株当たり利益):野村證券が集計。自社アナリスト予想を優先し、東洋経済新報社予想で補完、時価総額ベース、向こう12ヵ月予想ベース(月次更新)
・妥当レンジ:グラフ期間の平均PERは14.1倍なので(コロナショックで業績が大幅に悪化した時期(2020年5月~2021年3月)を除く)、予想EPSを14倍した水準を妥当水準の中心とし、13~15倍のレンジを妥当レンジとした。

(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

割高に買われる最大の要因は業績予想の上方修正

株価を割高に押し上げ、逆に割安に押し下げる強い要因の一つが「業績修正」であり、上方修正が続けば割高に、下方修正が続けば割安になりやすいと考えています。

図表2は、野村證券が毎月発表しているTOPIXベースの予想EPSの年度ごとの推移です。グラフの見方は、上向きは上方修正、下向きは下方修正で、年度ごとの線の上下関係が増減益を意味します。

足元の状況は、2023年半ば頃から23年度と24年度の予想EPSが上方修正されており、新たに発表が始まった25年度も好調に推移しています。図表1で直近で株価が妥当水準(赤線)を上回り始めたのが23年半ばだったことと整合的です。一方、その前の22~23年前半にかけては22年度と23年度の予想EPSが下方修正されていますが、図表1で株価を見ると割安ゾーンにありました。

足元の業績上方修正の主な要因は円安であると考えており、円安が続いている間は株価は割高水準で推移するのではないかと見ています。

[図表2]  TOPIXの予想EPSの推移

TOPIXの予想EPSの推移

期間:2014年1月~2024年6月、月次
※野村證券集計ベース、自社のアナリスト予想を優先し、東洋経済新報社の予想で補完、時価総額ベース。

(出所)野村證券のデータを基に野村アセットマネジメント作成

日経平均株価もほぼ同じ状況にある

最後に日経平均株価で水準感を確認してみましょう。

図表3は図表1と全く同じ考え方に基づいて日経平均株価ベースで描いたものです。足元株価はTOPIX同様に割高水準で推移しています。7月9日の終値は41,580円ですが、私が妥当レンジの中心と考える水準は35,000円程度、そして、妥当レンジとしては、32,000~37,500円程度と考えており、足元の株価は割高と考えます。但し、妥当レンジは年初来で6%程度切り上がっており、今後も同様なペースで切り上がっていけば、時間とともに割高感は解消していきます。

現状は妥当レンジが株価を追いかけるように切り上がる展開が続いていますが、その背景にある業績の上方修正、そして、上方修正の主要因と思われる円安動向に注視しながら投資判断をしていく必要がありそうです。

[図表3]  日経平均株価と予想EPSに基づく妥当レンジの推移

日経平均株価と予想EPSに基づく妥当レンジの推移

期間(株価):2012年12月3日~2024年7月9日、日次
期間(予想EPS):2012年12月~2024年6月、月次
・予想EPSと妥当レンジは図表1と同じ

(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(証券コード:1306)
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(証券コード:1321)

(2024年7月17日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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