ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

2026年度の業績予想に基づく業種選択は?

2025年8月21日作成

TOPIX(東証株価指数)は3,100ポイントまで上昇、1年先の利益成長を織り込む

前回記事 (2025年8月6日掲載)で、史上最高値圏にあるTOPIX(7月28日の終値=2,930ポイント)に対し、「妥当レンジ上限値(赤線、2,726ポイント)よりも7~8%程度割高であり、高値追いは難しいものの、今後の業績動向次第では高値に留まる可能性もある」としました。しかし、その後に更に急騰し、8月13日には3,100ポイントを一時突破しました。

急騰の背景には、出遅れていた海外勢による買いが押し上げているなどの報道があり、焦って買っている投資家がいるようです。

図表1は前回投稿時にご紹介したものと同じものですので、見方は前回記事を参照ください。基本的に業績想定に大きな変化はなく、足元の妥当レンジの上限は2,726ポイントであり、1年後の妥当レンジは10%程度高い約3,000ポイントと見ています。13日の株価は1年後の妥当レンジ上限も上回っており、株式市場はかなり先の利益成長まで織り込んでしまった水準に達していると思います。

[図表1]  TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移

TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移期間(株価):2012年12月3日~2025年8月13日、日次
期間(予想EPS):2012年12月~2025年7月、月次
・予想EPS(1株当たり利益):野村證券が集計。自社アナリスト予想を優先し、東洋経済新報社予想で補完、時価総額ベース、向こう12ヵ月予想ベース(月次更新)
・妥当レンジ:グラフ期間の平均PERは約14.2倍なので(コロナショックで業績が大幅に悪化した時期(2020年5月~2021年3月)を除く)、予想EPSを14倍した水準を妥当水準の中心とし、13~15倍のレンジを妥当レンジとした。
(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

2026年度に利益成長が大きい業種を吟味する

日本株式市場は、米関税問題などによる業績悪化は一時的であると捉え、業績回復が予想される2026年度の業績予想を見ながら動き始めているようなので、業種別に吟味してみましょう。

図表2は、Russell/Nomura Large Capインデックス・ベースでの経常利益(増減益率)の推移です。株式市場が意識していると考える2026年度の業績伸長が大きい業種をハイライトしてみました。

化学、鉄鋼・非鉄、自動車、電機・精密、ソフトウェア、メディア、通信、建設の業績伸長が大きそうです。これをTOPIX-17業種に置き換えると、素材・化学、鉄鋼・非鉄、自動車・輸送機、電機・精密、情報通信・サービスその他、建設・資材に相当すると考えますので、これらの株価指数の動向を確認してみましょう。

[図表2] Russell/Nomura Large Capインデックス・ベースの業種別業績予想(経常利益)

Russell/Nomura Large Capインデックス・ベースの業種別業績予想(経常利益)期間:2025年度~2027年度、年度、野村證券予想ベース(2025年8月7日時点の自社アナリスト予想)
・Russell/Nomura Large Capインデックス:日本株全上場銘柄の累積浮動株調整時価総額上位98%の銘柄からなるRussell/Nomura Total Marketインデックスの上位約85%の銘柄からなるインデックス
(出所)野村證券のデータを基に野村アセットマネジメント作成

業績伸長を織り込んでいる鉄鋼・非鉄、出遅れている素材・化学

図表3は上述したTOPIX-17各業種の株価指数の推移です。足元の動きこそ2026年度の利益成長への期待に基づいていると思われますが、足元で急上昇するまでの動きは2024-25年度の業績の影響を受けているようであり、パフォーマンスにはばらつきが見られます。

急騰するまでのパフォーマンスがTOPIXを上回っており、今後の成長も期待できる業種は鉄鋼・非鉄、情報通信・サービスその他、建設・資材で、これらへの投資は「順張り投資」となるでしょうか?一方、これまでのパフォーマンスはTOPIXをやや下回るも、26年度の業績回復への期待ができる業種は電機・精密、TOPIXを大きく下回るも、業績回復期待が大きい業種が自動車・輸送機、素材・化学で、こうした業種への投資は「逆張り投資」となるでしょう。

冒頭で説明したように、相場全体としては1年先の利益回復まで織り込んでしまった可能性がある中で、勢いに乗って順張り投資に挑むか、あるいは、逆張り投資に挑むかは、投資家の好みであり、自らの感性に合った投資をするのも良いかもしれません。

[図表3] TOPIX-17業種の中で2026年度の予想利益成長が大きい業種の株価推移

TOPIX-17業種の中で2026年度の予想利益成長が大きい業種の株価推移期間:2023年12月29日~2025年8月13日、日次
(出所)野村證券およびBloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 建設・資材(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1619)
NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1620)
NEXT FUNDS 自動車・輸送機(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1622)
NEXT FUNDS 鉄鋼・非鉄(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1623)
NEXT FUNDS 電機・精密(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1625)
NEXT FUNDS 情報通信・サービスその他(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1626)

<当資料で使用した指数と著作権等について>
■Russell/Nomura Large Cap インデックスの知的財産権およびその他一切の権利は野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社およびフランク・ラッセル・カンパニーに帰属します。なお、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社およびフランク・ラッセル・カンパニーは、Russell/Nomura Large Cap インデックスの正確性、完全性、信頼性、有用性、市場性、商品性および適合性を保証するものではありません。

(2025年8月21日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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