深掘りETF⑬

ETFのコストを深掘り!設定・解約費用はなぜ必要?①【深掘りETF⑬】

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ETFを含む投資信託(以下ファンド)の購入を検討する際、コストを気にされる方が多いのではないでしょうか。コストと聞いてまず思い浮かぶのは、信託報酬だと思いますが、ファンドには、信託報酬以外にも、例えば、設定費用および解約費用(信託財産留保額)(以下設定・解約費用)という費用が存在します。

設定・解約費用は「費用」とはいうものの、運用会社や販売会社が受け取るものではなく、ファンド(既存の受益者)に還元されるもので、ファンドのパフォーマンスを維持するためのものです。以下では設定・解約費用の正体を探っていきます。

<ポイント>
  • 設定・解約費用は、既存の受益者と設定・解約を行った受益者の公平性を確保するための費用
  • 信託報酬とは性質が異なり、設定・解約費用には、ファンドリターンが毀損することを防ぐ役割がある

設定費用および解約費用(信託財産留保額)の役割

設定・解約費用とは、ファンドの設定や解約をした際に、ファンドの運用の安定性を保つと同時に、既存の受益者と設定・解約を行った受益者の公平性を確保するための費用です。これだけでは少しわかりづらいので、以下例を挙げながら説明します。

まずファンドの設定および解約とは投資家からの需要を受けて、ファンドの口数が増加あるいは減少することです。以下の図はファンドの設定および解約について簡易的に示したものです。例えば口数が100口のファンドがあった場合、ファンドに対して10口分の追加の設定があったとすると、このファンドの総口数は110口になります。解約についてはこの逆で、ファンドに対して10口分の解約があったとすると、ファンドの総口数は100口から90口へと変化します。

ここでファンドが設定あるいは解約をする際には、ファンドは追加で有価証券を購入する、あるいは保有する有価証券を売却する必要があります。なぜなら、設定の際には現金がファンドに入ってきますが、それをそのままにするとファンド内における現金の比率が増加し、ファンドが目指すパフォーマンスが実現できないためです。解約の場合は解約に伴い現金を投資家に渡す必要があるため、ファンド内で保有している有価証券を売却することで現金を作り出さなければいけないためです。

設定あるいは解約金額に応じた有価証券を売買する際には、取引コストが発生します。この取引コストをカバーするための費用が、設定・解約費用です。

設定・解約費用は設定・解約を行った受益者に請求されます。仮に設定・解約費用がなければ、取引コストはファンド(既存の受益者)が負担することになり、これはファンドの基準価額の棄損につながります。これが冒頭で申し上げた「設定・解約費用=既存の受益者と設定・解約を行った受益者との公平性を確保するための費用」の意味です。

<設定・解約のイメージ図>

【設定の場合】

設定のイメージ図

【解約の場合】

解約のイメージ図

(出所)野村アセットマネジメント作成

設定・解約費用と信託報酬の違い

近年、信託報酬等の価格引き下げ競争が激しく、コスト意識が厳しくなっている中、設定・解約費用についても、低コストをアピールする狙いで0とするケースが増えていますが、上記の通り、設定・解約費用は信託報酬等の費用とは性質が異なります。設定・解約費用と信託報酬の違いについては、以下の表でまとめています。なお、ETF以外の公募投信などの場合は解約費用(信託財産留保額)のみを徴収するケースがみられます。これは取引コストをカバーするというよりも、解約受益者へのペナルティとして徴収することを目的とした市場慣行となっているためと思われます。

<設定・解約費用と信託報酬の違い>
;設定・解約費用と信託報酬の違い

※金銭拠出型ETFとは、現物拠出型ETFのように現物株バスケットを拠出するのではなく、現金で設定・解約を行うETF

(出所)野村アセットマネジメント作成

設定・解約費用とファンドパフォーマンスの関係性

設定・解約費用は上記の通り、ファンドの追加設定や解約の際に発生するファンド内の取引コスト等を、設定・解約を行った投資家から回収し、信託財産に留保させ、基準価額およびファンドリターンが毀損することを抑制するものです。

もしこれらの費用がなく、設定・解約が繰り返されれば、ファンド(既存受益者)が取引コストを負担することになるので、中長期的にはファンドのパフォーマンスが棄損する恐れがあります。既存受益者の立場で考えれば、自身でコントロールできない、ほかの投資家が行う設定・解約が要因でファンドのパフォーマンスが棄損するのは避けたいのではないでしょうか。

一方、ファンドを設定・解約する投資家からみれば設定・解約費用を負担するため、ファンドの購入及び売却価格が、設定・解約費用を設けていないファンドに比べ設定・解約費用を設けているファンドが不利になるともいえます。

弊社が運用するETF「NEXT FUNDS」の金銭拠出型ETFは、原則として設定・解約費用を設けていますが、実はETFとETF以外の投資信託では、設定・解約費用の負担の扱いが異なり、ETFの場合、一般の投資家の皆様は設定・解約費用を負担する必要がありません。この理由については、「ETFのコストを深掘り!設定・解約費用はなぜ必要?②」でご説明します。

(2023年4月更新)

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