ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

インドは集団免疫を獲得したのか?

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インドの新型コロナ感染状況は終息方向へ

世界の多くの地域で新型コロナの感染再拡大が起こる中、インドは終息に向かっている。

現下の世界の新型コロナウイルス感染状況は、インドで変異したと考えられている「デルタ変異株」が猛威を振るっており、多くの国や地域で感染のリバウンドが起こっています。また、わが国ではリバウンドどころか、1日当たり新規感染者数が過去最多レベルで発生しており、感染拡大が収まらない状況です。

図表1は、1日当たりの新規感染者数を100万人当たりの数値に調整したグラフです(7日移動平均)。ご覧のように日米では大きくリバウンドしている様子が見られます。一方、デルタ変異株の発生源と考えられているインドでは新規感染者数が減少しており、人口規模で調整した水準も、日米を大きく下回っています。

足元のインドでは、ロックダウン(都市封鎖)などの行動制限が一部緩和されるなど、規制緩和が続いており、商業施設が開かれ、飲食店では酒類も提供されています。そんな状況でも新規感染者数が減少していることから、インドは集団免疫を獲得したのではないかと考えられ始めています。


[図表1] インド、米国、日本の新型コロナウイルス新規感染状況

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期間:2020年2月1日~2021年8月22日、日次
1日当たり新規感染者数、100万人当たり、7日移動平均

(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

一見すると、インドは集団免疫獲得にはほど遠いが?

ワクチン接種も未だ道半ばで、公式データに基づけば、インドは集団免疫獲得にはほど遠い状態。

図表2は、インドのワクチン接種状況と新型コロナウイルスの累計感染状況を示しており、インドが集団免疫獲得にどれほど近づいているかを見ています。集団免疫を獲得するには人口の7~8割の人々が新型コロナウイルスの抗体を持つ必要があるとされており、そのためには、ワクチン接種を進めるか、感染するかのいずれかが必要と考えられています。

インドのワクチン接種状況は、2回目が終わった人が人口の1割程度とまだまだ少なく、1回目の接種をした人も2割強であり、合計しても3割程度です。また、インドは今年の5月ごろに激しい感染の波に襲われたものの、公式データに基づけば感染者数は累計で人口の2%程度しかいないとされています。

しかしながら、インド・メディアなどの報道によると、インド医学研究評議会が7月に行なった約3万人を対象とした抗体調査において、ワクチン未接種者のうちの6割以上の人々が新型コロナウイルスの抗体を保有していたことが判明しました。公式データの2%とはかけ離れた水準であり、本人が気づかない間に大量の人々が感染していた可能性があるとされています。6割の人々が感染し、3割の人がワクチン接種を受けたとすると、9割程度の人々が抗体を保有している可能性があるわけです。インドは集団免疫を獲得したのかもしれません。


[図表2] インドの集団免疫獲得状況

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期間:2021年1月1日~2021年8月22日、日次

(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

インド株式市場は史上最高値更新中

2022年の業績成長を織り込んで、インド株式市場は史上最高値を更新中

集団免疫を獲得した可能性がでてきたインドの株式市場は絶好調です。

図表3は、インド株式市場の長期的推移を見たものです。赤色実線がインドルピー建ての株価の推移です。ご覧のように今世紀に入って以降、順調な上昇を続け、足元では史上最高値を更新しています。この20年余りの間に約10倍に上昇しています。また、配当を含むトータルリターンは約14倍(年率12.9%)になっており、非常に良いパフォーマンスとなっています。

赤色点線は、インド株式市場の企業業績(EPS)の推移です。企業業績も今世紀に入って約10倍に拡大しており、赤色実線の株価指数とほぼ連動しています。企業業績が長期的に拡大したことで、株価が上昇したことが分かります。インドは経済成長が著しいことで知られていますが、高い経済成長が企業業績の拡大をもたらし、それによって株価が上昇しているのです。

なお、図表3のグレー色実線が、インド株式市場を日本円建てで見たものです。インドルピー建てのパフォーマンスよりも見劣りしますが、インドルピーが対円で約40%下落した影響が出ています。とはいえ、配当を含むトータルリターンは約8倍(年率10.3%)と十分に良好なリターンと言えます。このようにインド株式市場は長期的に良好な成果を出しており、足元のパフォーマンスも集団免疫獲得を評価してか、非常に良好です。今後も高パフォーマンスが期待できるでしょう。


[図表3] インド株式市場の推移

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期間:2000年1月末~2021年7月末(EPSは2022年12月末まで)、月次
インド株式市場:Nifty 50指数(インドルピー建て、日本円建て)
EPS:1株当たり利益

(出所)Bloombergデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS インド株式指数・Nifty 50連動型上場投信(証券コード:1678)


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野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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