ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

集団免疫に近づく海外諸国の株式市場

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世界には集団免疫獲得が見え始めた国がある

集団免疫獲得ラインは80%程度か!

世界の多くの国々ではデルタ変異株中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大していますが、感染が始まって1年半が経過、ワクチン普及が始まって半年以上が経過している現状では、そろそろ「集団免疫」を獲得する国や地域が出てくるのではないかと考えています。

図表1は、人口当たりの、ワクチン接種(完了と1回のみ)を済ませた人々の比率、および、実際にコロナに感染した人々の比率を見たものです。ワクチン接種を済ませた人々と実際にコロナに感染した人々が重複している部分はあると思いますが、これらを合計した数値が、「集団免疫」獲得状況の最大値と考えており、一定の参考値として意味があると考えています。

ご覧のように、ウルグアイ、チリ、スペインといった国々が80%を超えてきているほか、70%を超えている国々もかなり出てきました。これらの国々の足元の感染再拡大状況を見てみると、80%超えのウルグアイとチリは日々の新規感染者数が減少しているほか、スペインもリバウンドがピークアウトし始めています。もうすぐ80%に到達しそうな英国も、一時は大幅にリバウンドしていましたが、足元ではピークアウトしつつあります。以上から、80%程度が集団免疫獲得の目安ではないかと見ています。


[図表1] 集団免疫獲得状況

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時点:2021年8月11日現在


(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

集団免疫獲得が見えてきた仏伊株などが好調

イタリア、フランス、スペインなどの株式市場が好調に推移

図表2は、昨年10月末を起点に見た先進国株式市場の推移です。昨年11月の米大統領選挙直後から新型コロナウイルスのワクチン開発に関するニュースが出始めたことで、その直前の10月末以降のマーケットの動きを見ています。

イタリアとフランスが45%前後の上昇と、表記の国々でトップのパフォーマンスとなっており、スペインが40%程度上昇と続いています。上述した通り、スペインは集団免疫獲得に近づいていると見られるほか、フランスやイタリアも70%は超えており、もうすぐそうした状況になると思われます。

一方で、わが国株式市場の出遅れは顕著であり、集団免疫獲得に向けた状況も、最初のグラフにあるように未だ50%程度と欧米諸国に対して遅れを取っており、現時点では、集団免疫獲得に近いと思われる国々の株式市場が好調な一方、出遅れてしまった市場の調子が上がらない状況となっています。なお、英国のように、集団免疫獲得状況は良好と思われる国のパフォーマンスが悪い事例もあり、出遅れが修正されてない市場も散見されます。集団免疫獲得状況を睨みながら、出遅れ市場に注目するのも良いでしょう。


[図表2] 先進国株価指数の推移

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期間:2020年10月30日~2021年8月11日、日次
各国株価指数はMSCI各国別インデックス

(出所)Bloombergデータを基に野村アセットマネジメント作成

新興国株市場はコロナの状況とは連動していない

集団免疫を獲得したと思われるチリも、まだまだ遠いインドネシアも株式市場は冴えない

図表3は、2番目のグラフと同じように作成した新興国市場版です。株式指数を入手できなかったウルグアイを除き、各市場を見てみましたが、集団免疫を獲得したと思われるチリのパフォーマンスが春先までは絶好調だった一方、足元にかけて悪化しています。また、集団免疫獲得が全く見えていないインドネシアのパフォーマンスが抜きんでて悪く、ワクチン接種が始まったばかりのタイも冴えません。

一方、日本よりも集団免疫獲得が遅れているインド株が40%程度上昇と絶好調で、上述したスペイン並みの好パフォーマンスとなっています。ブラジルも、ワクチン接種1回目が50%程度を超えてきていることを評価してか、インド並みの好パフォーマンスとなっています。

こうしてみると、新興国株式市場は、先進国のようには集団免疫獲得を意識したパフォーマンスとはなっていないように見えます。ただ、顕著な出遅れが見られるインドネシアなどは、集団免疫獲得状況が改善すれば見直し買いが入ることも期待されるため、やはり、出遅れ市場には注目して見るというスタンスは有効かもしれません。

わが国同様に、先進国、新興国共に、足元ではコロナの感染再拡大が起こってはいるものの、株式市場はまずまずのパフォーマンスとなっています。その背景には、全般的に見れば「集団免疫獲得が近い」との期待があるからではないでしょうか?期待して観察していきたいと思います。


[図表3] 新興国株価指数の推移

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期間:2020年10月30日~2021年8月11日、日次
各国株価指数はMSCI各国別インデックス

(出所)Bloombergデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(証券コード:1321)
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2513)
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信(証券コード:2514)
NEXT FUNDS 新興国株式・MSCIエマージング・マーケット・インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2520)


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野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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