ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

総選挙で自民党勝利時は、日本株は米国株をしのいで大幅上昇してきた

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総選挙、自民党勝利で日本株は大幅上昇

総選挙(衆議院選挙)で自民党が勝利すると、日本株は大幅上昇してきた。

菅首相の突然の自民党総裁選不出馬報道で、夏枯れしていた日本株に一気にスポットライトが当たってきました。

図表1は、近年の総選挙で自民党が勝利(単独過半数獲得)した4例(※)において、日米株式と米ドル円相場のパフォーマンスを見たものです。総選挙の直前の週末(主に金曜日)を基準とし、前後約100営業日のパフォーマンスを単純平均で見ています。

約100営業日前から総選挙までに、4例(※)の単純平均で、日本株が+11.7%、米国株が+4.2%、米ドル円が+7.1%(円安米ドル高)、総選挙勝利後の約100営業日で、日本株が+20.7%、米国株が+7.3%、米ドル円が+5.2%(円安米ドル高)、合計した前後約200営業日で、日本株が+34.9%、米国株が+11.8%と、大差をつけて日本株が米国株を上回って上昇しました。

今年は特に顕著ですが、世界経済の回復に乗って日米企業共にしっかりと業績回復を遂げていながら、米国株に比べて日本株が見放される傾向があります。しかし、総選挙での自民党勝利というイベントをきっかけに、政権安定やその後の政策期待などから、出遅れた日本株の見直し買いが入ったのだと考えられます。また、近年の4例(※)の平均値では為替の円安米ドル高の後押しがあったことも重要だと考えています。


[図表1]  総選挙自民党勝利時(近年4例)における日米株価と米ドル円相場の単純平均パフォーマンス推移

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期間:総選挙日を挟んで前後約100営業日ずつ(「約」とした理由は、祝日を考慮しない営業日数のため、100営業日未満のケースあり)
※第44回(2005年9月実施)、第46回(2012年12月実施)、第47回(2014年12月実施)、第48回(2017年10月実施)の4回の衆議院選挙が対象日本株:日経平均株価、米国株:ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

総選挙後の日本株の大幅高の条件を探る

自民党が総選挙に勝利しても、常に日本株が大幅高したわけでない。

図表2は、総選挙で自民党が勝利した近年4例(※)において、日米株式のパフォーマンスを見ています。自民党が勝利した4例(※)の総選挙では改選後の自民党の議席数は概ね60%程度で同じです。それでもパフォーマンスは下図のように大きく異なります。

総選挙後にパフォーマンスが顕著に良かったのは、第46回(2012年12月)の+40.6%(前後約200営業日で+59.9%)、および、第44回(2005年9月)の+29.7%(同+49.0%)でした。第46回はアベノミクスがスタートした非常に大きな相場だったのと、第44回は小泉内閣の郵政解散で改革機運が強かったことなどの特徴があります。

一方、総選挙後にそれほどパフォーマンスが振るわなかった第47回(2014年12月)は+12.4%(同+26.4%)ですが、アベノミクス相場が4年続いた後であり、日経平均株価が17,000円台とアベノミクス・スタート時の9,000円台からかなり上昇した状態だったことが影響したようです。

また、最もパフォーマンスが振るわなかった第48回(2017年9月)は+0.1%とほぼ横ばい(同+6.4%)と、この4例(※)の中では、唯一、米国株のパフォーマンスを下回りました。この期間は、チャイナショックなどの世界的な景気減速や円高米ドル安などがあり、厳しい外部環境の影響を受けてしまったものと思われます。


[図表2]  総選挙自民党勝利時(近年4例(※))における日米株価のパフォーマンス推移

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期間:総選挙日を挟んで前後約100営業日ずつ(「約」とした理由は、祝日を考慮しない営業日数のため、100営業日未満のケースあり)
※第44回(2005年9月実施)、第46回(2012年12月実施)、第47回(2014年12月実施)、第48回(2017年10月実施)の4回の衆議院選挙が対象日本株:日経平均株価、米国株:ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

今回は、下値不安が後退し、小幅上昇の相場展開か

円安米ドル高は日本株を大きく後押した。今回は大きな円安米ドル高は想定せず、日本株は小幅高へ。

図表3は、総選挙で自民党が勝利した近年4例(※)においての米ドル円相場の推移です。前図の株式市場のパフォーマンス順位とこの図の米ドル円相場のリターン順位が同じであり、日本株のパフォーマンスに為替相場が大きな影響を与えたことが分かります。

総選挙後に株価パフォーマンスが顕著に良かった第46回では米ドル円相場も総選挙後の100営業日で+18.5%もの円安米ドル高でしたし、第44回では同+7.0%の円安米ドル高でした。

一方、それほど株価パフォーマンスが振るわなかった第47回は同+1.2%(但し、選挙前100営業日では+16.6%)とほぼ横ばいで、最も株価パフォーマンスが振るわなかった第48回は同▲5.9%と、唯一、円高米ドル安でした。

今回の総選挙(10~11月実施観測)では、新しい首相の下で新内閣が支持率を一旦取り戻すことが期待できるため、自民党の過半数割れが回避され、過去のアノマリーに則れば、株高が進むものと思われます。しかし、為替については第46回や第44回の時のような大幅な円安米ドル高は考えにくく、一方、世界景気についてもデルタ株の蔓延などからコロナショックからのリバウンドにも一巡感があるように見えるため、これらの面での後押しは期待しにくいと見ています。まとめると、自民党勝利期待で上昇する可能性があるものの、為替や景気の後押しをそれほど期待できないことから、今回の相場は小幅な上昇に留まると考えています。ETFで賢く対応してはいかがでしょうか?


[図表3]  総選挙自民党勝利時(近年4例(※))における米ドル円相場のパフォーマンス推移

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期間:総選挙日を挟んで前後約100営業日ずつ(「約」とした理由は、祝日を考慮しない営業日数のため)
※第44回(2005年9月実施)、第46回(2012年12月実施)、第47回(2014年12月実施)、第48回(2017年10月実施)の4回の衆議院選挙が対象

(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

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野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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