深掘りETF⑨

ETFの価格発見機能とは?【深掘りETF⑨】

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ETFの金融商品としての優れた機能の1つとして、『価格発見機能』があります。
価格発見機能とは、株式や債券などの金融商品が持つフェア・バリュー(理論価格)を発見する役割のことです。
ここでは東証上場の外国株連動型ETFの価格が形成されるメカニズムと、それらのETFが原資産となる外国株式の価格発見機能の一部を担っている点についてお伝えします。

外国株連動型ETFの価格形成メカニズムとは

現在、東証に上場するETFの中には、日本株、Jリートなど東証で原資産が売買されているものだけでなく、外国株、外国債券など主に海外時間に原資産が売買されているものがあります。
ではこれらの外国株、外国債券に連動するETFの価格は東証でどのように形成されるのでしょうか?

具体例をもとに説明します。

以下の【図1】は、2020年3月9日から3月10日にかけてのナスダック100指数(米国)とNASDAQ-100ETF(1545)を前日比の価格騰落率を基準に並べたものです。
*米国のナスダック証券取引所の取引時間は午前9時30分~午後4時(日本時間午後10時30分~午前5時※サマータイム)です。

【図1】前日比の価格騰落率(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF

前日比の価格騰落率(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF)

2020年3月9日の米国株式市場は、新型コロナウィルス拡大による景気後退懸念から株式市場が大幅下落となり、ナスダック100指数も前日比-6.8%の7,948と年初来安値を更新しました。 一方、翌3月10日の日本時間でのNASDAQ-100ETF(東証上場)の寄り付きは前日比プラスで取引を開始し、その後も徐々に値を切り上げていき、大引けは前日比+5.0%の大幅高となりました。

NASDAQ-100ETF(1545)に見る価格発見機能

ではなぜ、米国株式市場が止まっている日本時間にこのような値動きとなったのでしょうか?

 理由①:先物市場はほぼ1日中動いている

ナスダック100指数には株価指数先物が存在し、主に取引が行われるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)では、ほぼ1日中取引されています。以下の【図2】で、2020年3月9日から3月10日にかけてのナスダック100指数先物がどのように動いていたのか見てみます。

【図2】価格推移の比較(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF vs ナスダック100指数先物)

価格推移の比較(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF vs ナスダック100指数先物)

2020年3月9日の米国株の取引終了後、日本時間の3月10日午前7時以降、大きく反発しています。実際この時間に米国ではトランプ大統領が景気対策として、減税措置を検討すると発言しました。このニュースを受け、世界中の株価指数先物は先行きへの期待感から上昇に転じ、9時の東証寄り付き以降もマーケットの上昇基調は続きました。

実際、NASDAQ-100ETF(1545)を東証でマーケットメイク(値付け)する参加者も、ナスダック100指数先物を参考にしながら売り買いの気配を出していますので、先物の上昇に併せてETFの価格も上昇していくこととなりました。

 理由②:為替市場も1日中動いている

もう一つの理由は、ドル円の為替レートの動きです。
NASDAQ-100ETF(1545)は、米ドル建てのナスダック100指数を円換算したものを目標に運用しているため、米ドルの為替リスクを内包しています。

以下の【図3】で、2020年3月9日から3月10日にかけての米ドルがどのように動いていたのかを見てみます。

【図3】価格推移の比較(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF vs ドル円レート)

価格推移の比較(ナスダック100指数、NASDAQ-100ETF vs ドル円レート)

2020年3月10日の日本時間では、投資家のリスク選好姿勢が高まったことを受け、ナスダック100指数先物の上昇に加え、ドルが対円で大きく上昇しました。米国株式市場終了時点で1ドル102円台で推移していたドル円レートは、日本の株式市場大引け時点では104円台半ばまで上昇しました。

この動きにより、米ドルベースで運用を行っているNASDAQ-100ETF(1545)の円換算の価値が上昇したことで、ETFの価格が上昇していったのです。

このように、東証に上場する外国株に連動するETFの多くは、主に連動する株価指数先物と原資産の為替の変動をベースとして市場で価格形成がされています。そのため、2020年3月10日のように、株価指数先物と原資産の為替が共に大きく上昇するタイミングでは、連動する株価指数先物の値幅以上に大きな上昇となります。

また、東証に上場する外国株式に連動するETFは、日本の投資家に新たな取引機会を提供しているだけでなく、原資産となる外国株式等の最新の理論価格(参考値)を市場参加者に伝える「価格発見機能」を担っていると言うこともできるのです。

先物取引のハードルが高い個人の投資家にとって、日本時間に円建てで取引ができるこのようなETFは機動的な有効な資産運用のツールになりますので、ぜひご活用頂ければと思います。

(2020年3月作成)

野村アセットマネジメント

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