ストラテジストのつぶやき~ETFで広がる投資戦略~

日本株の割安・出遅れ業種はどれだ?

2025年2月19日作成

PBRで見た割安・出遅れ業種候補は、電力・ガスなどの6業種

東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を上場企業に要請していることから、市場ではPBR(株価純資産倍率)が低位な割安銘柄が物色される傾向にあります。そこで、今回はPBR等で見て割安で出遅れているTOPIX-17の業種を探してみることにしました。

図表1は、TOPIX(東証株価指数)とTOPIX-17業種の実績PBR(横軸)と実績PBRの過去10年の平均値からの乖離率(縦軸)を見たものです。TOPIXよりも実績PBRが低く(割安)、過去10年の平均値からの乖離率がマイナス圏にある(出遅れ)業種は、電力・ガス、運輸・物流、自動車・輸送機、建設・資材、不動産、素材・化学の6業種です。これらを候補として次の分析に移ります。

[図表1]  TOPIX-17業種の割安性分析

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時点:2025年1月末
過去10年平均:2015年1月末~2024年12月末の月次平均値

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

割安・出遅れ業種候補の中で最も出遅れているのは素材・化学

次に過去3年間のパフォーマンス動向で、株価自体が実際に出遅れているかを確認します。

図表2は、TOPIXとTOPIX-17業種の2022、23、24年のパフォーマンスを見たものです。絞り込んだ6業種をハイライトしており、()内の数字は全体(TOPIXとTOPIX-17業種)の中でのパフォーマンス順位です。3年間全てで下位半分(10位以下)、かつ、TOPIXを下回った業種は素材・化学のみで、パフォーマンス面ではこの業種が最も出遅れていると言えそうです。また、3年間のうちの2年間では自動車・輸送機や不動産、運輸・物流も該当するので、この辺りが割安・出遅れ業種の最終候補となりそうです。

[図表2] TOPIX-17業種の年別パフォーマンス

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期間:2022、2023、2024年、年次

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

素材・化学の業績予想は割安・出遅れ業種候補の中で最も良好

割安・出遅れには「業績が冴えない」といった理由があることが多いので、最後に業績予想を確認してみましょう。図表3は、TOPIXと割安・出遅れ業種の最終候補として絞り込んだ4業種の予想EPS(1株当たり利益)成長率を見たものです。4業種の中で、2025年と26年の両年で、各業種の予想EPS成長率がTOPIXを上回っているのは、不動産と素材・化学の2業種となり、素材・化学の業績予想は特に良好です。

今回のようなスクリーニングは別の視点で昨年も2度実施しており、昨年12月に「2025年の日本株の有望業種は何か?」というお題で、銀行、金融(除く銀行)、不動産、建設・資材に注目し、また、昨年7月には「TOPIX-17各セクターの明暗を考える」というお題で、建設・資材、素材・化学、機械、小売、銀行に注目しました。今回の結論は、素材・化学と不動産を有望業種としたいと思いますが、素材・化学は昨年7月にも有望としていた他、昨年6月には「素材・化学セクターのパフォーマンス回復を期待する」というお題で採り上げたものの、中国景気要因などによる業績下方修正などもあって、未だに最も割安で出遅れている業種となっています。今のところは裏切られた格好ですが、今後は業績下方修正などなく、見直し買いが入ることを期待したいと思います。

[図表3]  割安・出遅れ業種候補の予想EPS成長率

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期間:2025年と2026年、2025年2月10日時点のBloomberg予想

(出所)Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 素材・化学(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1620)
NEXT FUNDS 不動産(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1633)

(2025年2月18日作成)

野村アセットマネジメント
シニア・ストラテジスト

阪井 徹史

Tetsuji Sakai

1988年以降約20年間、野村アセットマネジメントにて主に日本株のアクティブ運用業務に従事。その後、グローバル・ストラテジストとして、世界の様々な市場の分析や投資アイデア提供活動を継続中。

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