ETF投資のツボ

日経半導体株指数の特徴と投資におけるリスクと留意点

2024年5月17日作成

AI、IoT、自動運転などの技術革新が期待される中、世界的な半導体需要の高まりから、米国だけでなく日本でも半導体関連企業の株式に注目が集まっています。また、投資ツールとしても半導体関連企業の銘柄を集めた指数やそれに投資するETFなどが世界的に開発されています。日本も例外ではなく、日本企業の中で半導体関連のビジネスを行っている銘柄の成長に期待が高まっています。

本稿では、日本の半導体関連企業の指数として発表された「日経半導体株指数」の特徴について分析した上で、半導体株投資におけるリスクと留意点をお伝えします。

日経半導体株指数とは?

日本経済新聞社は2024年3月25日から、日経半導体株指数の算出・公表を始めました。この指数はNEEDS業種分類で主力事業が半導体関連業種に属する東証上場銘柄の中から、時価総額上位30社を選定したものです。ただし、主力以外の事業が半導体関連業種に属する銘柄であって、半導体関連事業の売上比率が10%以上あり、半導体関連製品等のマーケットシェアが高い銘柄も、時価総額の大きさを考慮したうえで選定対象に含まれます。

日本はグローバルな半導体のサプライチェーンにおいて非常に重要なプレーヤーであり、特に半導体素材や半導体製造装置などの関連分野に強みがあります。

日経半導体株指数の構成銘柄を見てみると、電気機器の中でも半導体関連に強みのある企業が上位に来ていること、また、その一銘柄あたりのウェイトがほかの指数と比べても高くなっていることがわかります。このことは、半導体関連企業という絞ったテーマにピンポイントでアプローチすることができる指数である反面、かなり銘柄が絞られているということでもあります。

図1:日本経済新聞社の各指数の上位構成10銘柄の比較(2024年4月末時点)

日経半導体株指数日経平均株価日経平均高配当株50指数
銘柄名業種ウェイト銘柄名業種ウェイト銘柄名業種ウェイト
東京エレクトロン電気機器18.33%ファーストリテイリング小売業10.61%川崎汽船海運5.12%
ルネサスエレクトロニクス電気機器12.84%東京エレクトロン電気機器8.97%商船三井海運3.80%
ディスコ精密機器12.38%ソフトバンクグループ通信4.04%三菱UFJフィナンシャル・グループ銀行3.60%
アドバンテスト電気機器9.55%アドバンテスト電気機器3.40%INPEX鉱業3.38%
レーザーテック電気機器8.14%信越化学工業化学2.64%日本たばこ産業食品3.38%
信越化学工業化学4.77%KDDI通信2.25%三菱商事商社3.37%
HOYA精密機器4.43%ファナック電気機器1.97%三井住友フィナンシャルグループ銀行3.37%
SCREENホールディングス電気機器4.20%ダイキン工業機械1.85%みずほフィナンシャルグループ銀行3.32%
ソニーグループ電気機器3.62%テルモ精密機器1.83%SOMPOホールディングス保険3.18%
ローム電気機器2.36%TDK電気機器1.81%日本製鉄鉄鋼3.16%

出所:日本経済新聞社のデータを基に野村アセットマネジメント作成

日経半導体株指数のパフォーマンス

グローバルな半導体需要の高まりと、それを期待した投資家の投資行動からグローバルで半導体企業の株価は堅調ですが、日本も例外ではありません。図2は各指数の累積パフォーマンスを示したものですが、日経半導体株指数は、日経平均株価だけでなく、昨今パフォーマンスが堅調な高配当株指数も大きく上回るパフォーマンスを示しています。また、一般的には半導体関連企業が多く含まれているTOPIX-17シリーズの電機・精密の指数に対しても大きくアウトパフォームしています。

図2:株価指数の累積パフォーマンス比較(2019年4月末~2024年4月末、日次)

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2019年4月末=100として指数化。株価指数は配当込み。
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

日経半導体株指数のリスク・リターン

過去のパフォーマンスが非常に良好な日経半導体株指数ですが、その反面リスクも相当程度高いことを認識しておく必要があります。図3は各指数の5年間のデータを用いたリスク・リターンの値ですが、日経半導体株指数のリスクが他の指数に比べかなり高くなっていることがわかります。半導体への需要というテーマ自体がかなり景気循環やニュース等によって左右されることや構成銘柄が少ないため分散効果が限定されるといったことが要因と考えられますが、リスクの高さは半導体株投資における留意点であることは認識しておく必要があります。

図3:株価指数のリスク・リターン(2019年4月末~2024年4月末)

日経半導体株指数日経平均株価日経平均高配当株50指数TOPIX-17 電機・精密
リターン(年率換算)35.37%13.75%20.97%16.66%
リスク(年率換算)29.73%17.17%16.73%19.94%

月次データを基に算出。株価指数は配当込み。
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

他指数との相関

半導体というテーマはかなりグロース(成長)株寄りであると考えられます。そのため、バリュー系の指数との相関係数は低くなっています。図4で分かる通りバリュー系の代表格である高配当株指数との相関係数は比較的低いため、併せ持つことでの分散効果が期待できます。また、もちろん見極めが大切ですが、グロース相場では半導体指数、バリュー相場では高配当指数と、それぞれを機動的に切り替えるような戦略も考えられます。

図4:株価指数同士の相関係数(2019年4月末~2024年4月末)

日経半導体株指数日経平均株価日経平均高配当株50指数TOPIX-17 電機・精密
日経半導体株指数1.000.830.370.92
日経平均株価1.000.620.88
日経平均高配当株50指数1.00

0.40

TOPIX-17 電機・精密1.00

月次データを基に算出。株価指数は配当込み。
出所:Bloombergのデータを基に野村アセットマネジメント作成

テーマ型指数は特性の見極めが重要

日経半導体株指数のようにテーマにある程度フォーカスした指数はテーマ型指数と呼ばれることがあります。業種としての位置づけも可能ですが、それよりもさらに特化したものと考える必要があるでしょう。このような指数に投資するにあたっては、その特性をしっかりと見極める必要があります。もちろんリターンに対する期待は重要ですが、それと比べて、リスクはどの程度なのか、また、その指数の特性は何と似ていて、何と異なっているのかなど、組み入れの効果をしっかりと検討する必要があります。

とはいえ、このような指数やそれに連動するETFのような商品の存在は、あるテーマが見つかった時に、それに関連した個別銘柄を探す手間を減らし、1銘柄のみに投資するリスクを低減してくれます。うまく活用することができれば、投資の選択肢をより増やしてくれるでしょう。

<関連銘柄>
NF・日経半導体ETF(証券コード:200A)
NF・日経225 ETF(証券コード:1321)
NF・日経高配当50 ETF(証券コード:1489)
NF・電機・精密(TPX17)ETF(証券コード:1625)

※記載されている個別の銘柄については、上位組入銘柄の参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(2024年5月17日作成)

野村アセットマネジメント
ETF事業戦略部部長

渡邊 雅史

Masafumi Watanabe

野村アセットマネジメントのETF事業を担当するETF事業戦略部を統括。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』、『ロボアドバイザーの資産運用革命』(ともに共著、きんざい)、訳書に『ETFハンドブック』(きんざい)がある。

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